第二話 持ち物いびり
学園が終わる夕方。
キュアリィはヴィリアンヌの部屋を訪れました。
「失礼いたしますヴィリアンヌ様」
「キュアリィ。今日はどんな風にあの平民をいびったのか、報告なさい」
「はいっ」
ヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気よく答えます。
「今日は勉強にふさわしくない高級な筆記具を使っているのを見ましたので、安い物を渡してそれを使うよう言いました」
「ほう、成程……」
ヴィリアンヌは満足げに頷きました。
(身分相応の物を使えと言ったわけね。この娘、なかなかやるじゃない……)
「よくやりました。これからもその調子でどんどんいびりなさい」
「かしこまりました」
キュアリィは一礼をして、部屋を出て行きました。
時間は遡ってその日の朝。
教室に入ったキュアリィは、机で勉強するノマールの元に向かいました。
「ノマールさん、ご機嫌よう」
「あ、キュアリィ様、ご、ご機嫌よう」
「こんな朝から予習をしていらっしゃるのね」
「はい、私、勉強だけが取り柄ですので……」
恥ずかしそうに答えるノマールの手元に、キュアリィの目が向きました。
「あら、随分高級なペンを使っていらっしゃるのね」
「は、はい。入学の祝いに祖父が買ってくれたのです。普段は木炭で勉強しているのですが、皆様の前でそれは失礼に当たると思いまして……」
「まぁ! いけませんわ! もしそれで無くしたり壊れたりしたら大変ですのよ?」
「し、しかし私、ペンはこれしか持っていないので……」
「……少しお待ちになって」
キュアリィは早歩きで教室を出ると、購買でペンを数本購入して、また教室に早歩きで戻りました。
「これをお使いになってくださいな」
「え、あ、そんな……。よろしいのですか……?」
「勿論ですわ。そのお祖父様の思いのこもったペンは大事におしまいあそばせ」
その言葉に、ノマールの目が潤みます。
「ありがとうございます……! キュアリィ様……!」
何度も頭を下げるノマールに、キュアリィは満足感と共にこう思いました。
(いびるって素晴らしい行為ですわ!)
読了ありがとうございます。
はい、方向性はわかっていただけたかと思います。
こんな感じの勘違いコントを続けて参りますので、次話もよろしくお願いいたします。
2021/10/12追記
前書きのイラストは、秋の桜子様からファンアートとしていただきました!
ぱっと見意地悪に見えて、よく見ると無邪気な感じが素晴らしいです!
秋の桜子様、ありがとうございます!