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第十九話 お部屋いびり

ほう 悪意抜きいびりですか たいしたものですね、と言われたら嬉しいキュアリィのノマールいびり。

今回はノマールの部屋に乗り込むようです。

果たしてどんないびりが舞い上がるのか?


どうぞお楽しみください。

 学園が終わる夕方。

 キュアリィはヴィリアンヌの部屋を訪れました。


「失礼いたしますヴィリアンヌ様」

「キュアリィ。今日はどんな風にあの平民をいびったのか、報告なさい」

「はいっ」


 ヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気よく答えます。


「今日はこれからノマールさんのお部屋に、友人といびりに参ります」

「……ほう」


 ヴィリアンヌは満足そうに頷きました。


(平民の学園で唯一の安息の地を蹂躙するという訳ね……。そろそろ詰めの段階ということかしら? ふふっ、楽しみね……)


「手加減は無用ですわ。徹底的にいびりなさい」

「かしこまりました」


 キュアリィは一礼をして、部屋を出て行きました。




 時は進んでその日の夜。


「お待ちしておりました、キュアリィ様」

「お邪魔いたしますわ」

「キュアリィ様、お茶の用意は完璧ですわ」

「ありがとうウォミーさん。ソフィティアさんのお茶菓子はいかが?」

「お気に入りをお持ちしましたわ」

「では始めましょう。夜のお茶会を!」


 キュアリィの宣言に、三人が嬉しそうに手を叩きます。

 しかしノマールは知りません。

 これがいびりの一環である事を……。


「ではここから、この場での『様』付けは禁止ですわ!」

「えっ!?」

「わかりましたわキュアリィさん」

「よろしいですわねノマールさん」

「いえ、あの、そんな……」


 根回しをされていたウォミーとソフィティアの言葉に、ノマールは戸惑うばかり。


「ノマールさん、身分も作法も大事なものです」

「そ、そうですよね」

「でもここには私達しかいませんわ」

「え……」

「誰が咎める訳でもありませんし、この場だけの事ですわ。さぁ気軽に呼んでくださいな」


 にこやかに言うキュアリィ。

 しかしノマールの表情は和らぎません。


「……あの、私は、平民で、キュアリィ様やウォミー様、ソフィティア様、そしてクラスの方々に助けてもらえなかったら、ここにはいられませんでした……」

「そんな事は……。ノマールさんのお勉強の頑張りは、誰もが認めるところですわ」

「いえ、いつも優しく、暖かく迎えてくださる皆様のお陰で、知り合いが誰もいない学園を、楽しいと思えているんです……」

「ノマールさん……」

「特にキュアリィ様とウォミー様とソフィティア様は、心から尊敬しているのです……! それをさん付けで呼ぶなんて……!」


 絞り出すような言葉に、三人は胸が詰まりました。


(……身分差での遠慮ではなく、私達の事を思うがゆえの拒否……。嬉しすぎますわ! ……なら今日は無理にしなくても……)


 目を配ると、ウォミーもソフィティアも(よろしいのでは?)という表情をしていました。

 頷いたキュアリィは、前言を取り消そうとして、


『徹底的にやりなさい』

「!」


 ヴィリアンヌの言葉を思い出しました。

 キュアリィの心が引き締まります。


(私は何を考えていたのでしょう! こんなひれ伏させるような事で満足して……! 私がしたいのはこんな事ではないはず……!)


 その思いで必死に言葉を考えたキュアリィは、顔を伏せ小刻みに震えるノマールに優しく声をかけます。


「……ノマールさん、あなたの気持ちはとても嬉しいですわ。しかしやはり『様』付けは外していただきたいんですの」

「そんな……! お許しください……、そんな事、申し訳なさに耐えられません……!」

「違うんですのよノマールさん。私達がノマールさんに色々しているのは、そんな風に尊敬されたり崇められたりするためではないの」

「……え……?」

「私達は、あなたとお友達になりたいの」

「お、友、達……?」


 顔を上げたノマールに、キュアリィは精一杯の笑顔を向けます。


「お友達同士だけの特別な呼び方が欲しいんですの。私のわがまま、聞いていただけます?」

「〜〜〜っ!」


 感極まって顔を覆うノマール。

 その背を三人が優しくさすります。


(今日はここまでね……。あぁ、やはり人の心に踏み入るいびりは難しいのですね……)


「……リィ、さん……」

「……え?」


 涙に濡れた言葉に、キュアリィは目を目を見開きました。


「……キュアリィさん、ありがとう、ございます……」

「……ノマールさん……!」

「……ウォミーさん……」

「! はい! ウォミーですわ!」

「……ソフィティアさん……」

「あぁ、あぁ! ノマールさん……!」

「……他に人がいない時だけ、お友達として呼ばせていただいてもよろしいですか……?」


 涙でぐしゃぐしゃのノマールの顔は、それでも確かに笑っていました。


「「「もちろんですわ!!!」」」


 四人はひしと抱き合い、そして少し冷めたお茶でお茶会を始めました。

 三人との話に花を咲かせながら、キュアリィはヴィリアンヌへの感謝を新たにしていました。


(ヴィリアンヌ様のお言葉がなければ、ノマールさんの心を開く事はきっとできませんでしたわ……。ありがとうございますヴィリアンヌ様!)

読了ありがとうございます。


ヴィリアンヌのおかげだよー。よかったねー。


翌日の報告では、


「いびりで泣かせてしまいましたが、その後そのままお茶をしましたわ」

(え!? 泣いてる平民をそのままでお茶を!?)


とかなってます。

できらぁ!


気が付けば次話で二十話。早いものです。

次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] このお話、涙が出てきてしまいました。 勘違い系のおもしろコメディなのに、ふと彼女たちの心のうちを想像したら このお茶会にたどり着くまでになんて大きなものを乗り越えたのだろうと 目頭が熱く……
[良い点] なんだろう、コメディで笑うべきなのに、四人が抱き合うシーンで感動で涙が出てきた。 マジです [一言] ヴィリアンヌさん、ありがとう!
[良い点] キュアリィ様とヴイリアンヌ様の間で相互に 「恐ろしい子……!」と思い合っているんですね。 美しいですね〜。
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