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第十六話 夏休みのいびり報告 中編

「いびらない」なんて事はありえない、そう言いたくなるキュアリィのノマールいびり。

別荘での夜の楽しい時間に行われるいびり。

果たしてどんないびりが行われるのか。

お楽しみください。

「引き続き報告をなさい。他にはどのような事をしたのかしら?」

「はいっ」


 我に返ったヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気に答えます。


「その後はノマールさんに夕食を作ってもらいました」

「ほう……」


 ヴィリアンヌは満足そうに頷きました。


(やはり別荘に誘ったのは、立場の違いを徹底的にわからせるつもりだったのね……。素晴らしい!)


「その後ベッドに入り、最初に寝た人が明日の朝食を作るという決まりを付けましたの」

「ほう……。それで結果は?」

「ノマールさんが一番に寝ましたわ」


 キュアリィの答えに、ヴィリアンヌは笑みが込み上げる口元を扇で抑えました。


(子どもの我慢比べのようでいて、口裏を合わせれば陥れるのは簡単……。そうして寝起きから料理をさせ、使用人のような立場を叩き込む……! 見事という他ないわ……!)


 口元を隠しつつ目はしっかり笑っているヴィリアンヌを見て、キュアリィも微笑ましい夜を思い出して笑顔になりました。




 夕食を終え、風呂も済ませた四人は十字型に寄せたベットにそれぞれ寝そべりました。


「それにしてもお夕食、大変美味しかったですわ! やはりあの味は心に残ります!」

「あ、ありがとう、ございます……」

「初めて食べるお味でしたけど、私感激いたしました!」

「そんな……。嬉しい、です……。ありがとう、ございます……」

「大変失礼な申し出ですけれど、もし学園を卒業した後料理の道を志すのであれば、我が家の副料理長スーシェフの席をご用意いたしますわ!」

「こ、光栄、です……! ありがとう、ござい、ます……」


 キュアリィ、ウォミー、ソフィティア、三者三様の絶賛に、恐縮しつつも喜ぶノマール。

 しかしその目はとろんとして、若干焦点が定まっていませんでした。


「……ノマールさん、もうお休みになられたらいかがです?」

「……いえ、まだ……」

「お掃除も一番頑張っていましたし、お料理もされていましたからお疲れでしょう」

「……大丈夫、れす……」

「私達に遠慮せず、寝てよいのですよ?」

「……ぅゅ……、れも……」


 眠気に必死に抵抗しようとしているノマールを見て、キュアリィは一計を案じました。


「そうですわ! 明日の朝のご飯なのですけれど」

「……それは、わらひが……」

「一番最初に眠った方に、作ってもらおうと思いますの」

「!」


 すかさずウォミーが布団を被ります。


「まぁ! では私が一番に寝て一番に起きて、朝ご飯を作りますわ!」


 ソフィティアもそれに続きます。


「ウォミーさんったら、抜け駆けはさせませんわ! 朝ご飯を作るのは私です!」


 意外な流れに、寝ぼけ頭のノマールはついていけません。

 ただ朝ご飯を作りたい気持ちだけで反論します。


「……らめ、れす……。あさごはん、つくるの、わらひ……」

「まぁ! いつもお勉強で夜更かしに慣れているノマールさんには難しいと思いますわ!」

「そうですわ! 日頃から早く寝ている私達に敵うと思いまして!?」

「ノマールさんは一番最後に寝て、朝ご飯が出来上がった頃にゆっくり起きてくればよろしいのですわ!」

「……むぅ……。ねる……」


 三人の煽りに頬を膨らませたノマールの頭が、ぽすりと枕に沈みます。

 そのまま数秒で可愛らしい寝息が聞こえ始めました。


「……まったく、平民は貴族よりも先に眠ってはいけないと思っていらっしゃるのかしら。困ったものですわ」


 キュアリィが微笑みながら言った言葉に、ウォミーが穏やかに反論しました。


「あら、キュアリィ様。それは違いますわ。ノマールさんはきっとこの別荘が楽しくて、眠るのが勿体ないと思われたのだと思います」

「え?」


 その言葉にソフィティアも頷きます。


「私もそうだと思いますわ。ただまだお休みは始まったばかり。寝不足で具合が悪くなっても勿体ないですから、早く寝させてあげたのは正しいと思います」

「……お二人のご協力、感謝いたしますわ」


 ノマールを起こさないよう控えめに笑った三人は、


「では私達も眠りましょう」

「そうですわね。せっかくのノマールさんの朝食、食べられなかったら悲しいですわ」

「えぇ、本当に。では良い夢を」


 挨拶を交わして布団を被りました。

 目をつぶりながら、キュアリィは考えます。


(私ったら、いつの間にかいびりの事を優先に考えるようになっていたのですわね……。一歩間違えたらノマールさんを傷つけていたかもしれませんわ。気をつけないと……)


「……ふへへ〜、おいしいれすか〜……」

「……ふふっ」


 ノマールの幸せそうな寝言に、張り詰めそうになったキュアリィの心は緩みました。


(楽しく、そう、明日からも楽しくいびっていけばいいのですわ! ……ありがとう、ノマールさん……)

読了ありがとうございます。


楽しい夜は、なかなか寝たくなりませんよね。

ダ◯ョウ倶楽部は偉大。


夏休み回想編は次で最後です。

どうぞお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎日とても微笑ましいのです♪ 読んでるだけで笑顔こぼれる気持ちです! [一言] ヴィリアンヌさまのラストの立ち位置 予測してるんですけど書き込み我慢してます すんごいハピハピなの~~♪
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