第十五話 夏休みのいびり報告 前編
喜ばれるいびり…? そんなのありか…?と言われそうなキュアリィのノマールいびり。
今回は夏休み中のいびりを報告します。
果たしてどんな休みを過ごしたのか……。
どうぞお楽しみください。
新学期。
学園が終わる夕方。
キュアリィはヴィリアンヌの部屋を訪れました。
「失礼いたしますヴィリアンヌ様」
「キュアリィ。夏休みの間ご苦労でした。どんな風にあの平民をいびったのか、報告なさい」
「はいっ」
ヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気よく答えます。
「まずは別荘の離れの掃除を友人と四人で行いました」
「……ほう」
ヴィリアンヌは満足そうに頷きました。
(教室掃除と同じ流れ? いえ、普段自分が使っている場所ではないという意識は、理不尽な怒りを生む……。しかも三人がかり……。誰の指示に従うべきか迷ったはず……)
「その後ほこりで汚れたので、湖に飛び込んでもらいましたわ」
「……え?」
にこやかな言葉に、ヴィリアンヌは固まりました。
(自分ごと湖で服を洗えと!? でも確かにほこりまみれのままでいさせる事も、同じ風呂に入らせる事も許せない、と……。確たる貴族の意識があるのね……)
一人納得してうんうん頷くヴィリアンヌを見ながら、キュアリィはその時の事を思い出していました。
「すごいほこりでしたね……」
「かなり使っていませんでしたから。急な思い付きでしたから使用人も手入れはしていませんでしたし」
「でもごっそりほこりが取れたのは楽しかったですわ!」
「そしてこれで、私達だけの別荘ができましたのね!」
四人は離れを掃除した達成感と共に笑い合いました。
「あの、では皆様どうぞお着替えなさってください。私、洗濯しますので……」
「洗濯? 何故ノマールさんが?」
「いえ、その、お招きいただいたのに、何もしないというのは……」
「そんな事……、そうですわ!」
ノマールの申し訳なさそうな姿を見て、キュアリィは名案を閃きました。
「どうせ洗濯するなら、皆でいたしましょう!」
「え? キュアリィ様、それは一体……?」
「皆さん、こちらですわ!」
離れを出ると、目の前には美しい湖が広がっていました。
ボート用の桟橋を進むと、一面澄んだ水面が見渡せました。
「素敵な湖……」
「さぁ皆さん、飛び込みますわよ!」
「えっ……?」
「キュアリィ様……?」
「飛び込むとは一体……?」
「えいっ」
戸惑う三人をそのままに、キュアリィは湖に飛び込みました。
大きな水しぶきが上がり、笑顔のキュアリィが顔を出しました。
「この通り、足は着きますわ。さぁ皆さんも!」
「で、でも……」
「夏休みの思い出作りですわ! さぁ!」
「思い出……! はい!」
ノマールが飛び込み、ウォミーとソフィティアがそれに続きました。
びしょ濡れの令嬢達は、煌びやかに笑います。
(自分達で掃除した離れ、子どもみたいな水遊び、こういう事を積み重ねて、ノマールさんの遠慮を打ち崩していくのです! いびり再開ですわ!)
読了ありがとうございます。
青春の一ページ。
はしゃぐ四人が可愛いのです。
報告はまだ続きます。
キュアリィ達の充実した夏休みをお楽しみください。




