第十四話 夏休みいびり
いびり それは ふれあいの心、と朗々と歌い上げたくなるキュアリィのノマールいびり。
試験も終わって夏休み。
気付かないうちにヴィリアンヌの疑念を晴らしていたキュアリィは、ノマールの夏休みの予定に目を付けました。
果たしてどんないびりが展開するのか……。
どうぞお楽しみください。
学園が終わる夕方。
キュアリィはヴィリアンヌの部屋を訪れました。
「失礼いたしますヴィリアンヌ様」
「キュアリィ。明日から夏休みに入りますが、どんな風にあの平民をいびるつもりなのか、報告なさい」
「はいっ」
ヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気よく答えます。
「夏休みの間、私の家の別荘にお招きする事にいたしましたわ。そこで友人二人とたくさんいびろうと思います」
「……ほう」
ヴィリアンヌは満足そうに頷きました。
(あの娘の心の支えである実家から引き離し、孤立無援の中でいびり続けるつもりね……。やはりこの娘に任せて正解だった……)
「よくやりました。夏休みの間もその調子でどんどんいびりなさい」
「かしこまりました」
キュアリィは一礼をして、部屋を出て行きました。
時間は遡って授業後の教室。
「明日からいよいよ夏休みですわね。ノマールさん、ご予定は?」
「予定という予定はございません。先日お陰様で家族の元気な姿も見られましたし、寮で過ごそうと思います」
「まぁ、ご実家にはお帰りになりませんの?」
キュアリィの疑問に、ノマールは恥ずかしそうに目を伏せました。
「……あの、実は家族が期末の結果を、地元で話してしまったようで、先日帰った時に大騒ぎになってしまいまして……」
「一年生での歴代一位ですもの。仕方ありませんわ」
「家族から謝られ、ほとぼりが冷めるまでは帰って来ない方が良いのではという話になりました」
「そういう事でしたら!」
キュアリィは目を輝かせて、ずいと一歩距離を詰めました。
「私の家の別荘にいらっしゃいませんか?」
「別荘、ですか?」
「えぇ、高原の湖のほとりにありまして、涼しく過ごしやすいところですの。ウォミーさんやソフィティアさんも誘っていますから、遠慮はいりませんわ!」
「そんな、私なん……」
口から出かかった言葉を手で抑え、恥じるように俯くと、ぱっと笑顔で顔を上げました。
「よろしければお邪魔いたします!」
「ありがとうございます! あぁ、楽しみですわ!」
「私もです!」
ノマールの笑顔には、まだ多少の不安は見えましたが、身分差を気にする色は薄れているようにキュアリィは感じました。
(別荘で過ごす間もたくさんいびらなくては! あぁ、でも折角の夏休み、いびりはお休みしてただただお友達と遊びたい気持ちになってしまいます……。いけませんわ!)
読了ありがとうございます。
夏休みは長いではないか… 行け
関係ない 行け 遊べ
次話からは夏休みの報告会になります。
回想で充実した夏休みのいびりをお届けいたしますので、よろしくお願いいたします。




