第十二話 勉強いびり
いびり? なんだそれうめぇのか?とよくわからなくなってくるキュアリィのノマールいびり。
今回はノマールの試験前の様子に目を付けました。
果たしてどんないびりが繰り広げられるのか……。
どうぞお楽しみください。
学園が終わる夕方。
キュアリィはヴィリアンヌの部屋を訪れました。
「失礼いたしますヴィリアンヌ様」
「キュアリィ。今日はどんな風にあの平民をいびったのか、報告なさい」
「はいっ」
ヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気よく答えます。
「今日は間もなく試験になりますので、勉強を一人でおやりになるよう話しましたわ」
「……ほう」
ヴィリアンヌは満足そうに頷きました。
(成績優秀な平民を孤立させる策ね。良い成績を取れば取るほど孤立を深める……。成績を落とせば退学……。この調子なら年内に決着がつくかしら……?)
「よくやりました。これからもその調子でどんどんいびりなさい」
「かしこまりました」
キュアリィは一礼をして、部屋を出て行きました。
時は遡ってその日の昼休み。
期末試験が迫る中、昼食を終えた四人は額を突き合わせて勉強に励んでいました。
「ノマールさん、ここの公式はどうなりますの?」
「キュアリィ様。公式がわかりにくい時は、一旦数字を代入してみるとわかりやすくなりますよ」
「ええっと……、あ、確かにわかりましたわ!」
「ノマールさん、あの、こちらの意味は……」
「ウォミー様、これは『荘厳なる』と言う意味で使いますわ」
「ありがとうございます!」
「ノマールさん、何でこの時代の王様の名前は、何とか三世とかで統一されていませんの?」
「ソフィティア様、こちらの図をご覧ください。三つの王族が交代で王位を継いでいるため、複雑な形になるのですわ」
「成程、わかりましたわ!」
三人から交互に来る質問に、ノマールは丁寧に対応します。
しばらくして、三人は昼休み中に片付けたいと思っていた課題を終えました。
「できましたわ!」
「ノマールさんのお陰ですわ!」
「ありがとうございます、ノマールさん!」
「お役に立てて嬉しいです」
三人のお礼の言葉に、ノマールは嬉しそうに微笑みます。
「あ、でもノマールさんのお勉強のお邪魔になっていないかしら?」
「え? あ、いえ、そんな事は……」
ソフィティアの言葉に動揺したノマールを見て、キュアリィの目が鋭くなります。
「……また遠慮なさってますわね」
「あぅ、その……、はい……」
キュアリィの指摘に、ノマールは観念したように頷きました。
「今回の試験は範囲も広いですものね」
「それにノマールさんは成績上位を義務付けられていますもの。どれだけやっても不安でしょう」
「はい……」
ウォミーとソフィティアの気遣う言葉に、申し訳なさそうに、それでも素直に話してくれた事が嬉しくて、キュアリィは笑顔でノマールに話しかけます。
「いけませんわ。私達の手伝いでノマールさんの成績が落ちるなど、あってはなりませんもの」
「……はい……」
「ですから試験が終わるまでは、お勉強に集中なさってください。試験が終われば、またいくらでもお話できますもの」
「……! ありがとうございます!」
目を潤ませながら微笑むノマールは、ふと表情を真剣なものに変えました。
「あの、でも試験範囲の復習が全て終わったら、また一緒に勉強させていただいてよろしいですか? 皆様と話しながら勉強すると、よりしっかり覚えられますから」
「まぁ! それでしたら大歓迎ですわ!」
「ノマールさんの足を引っ張らないように、それまでに私達も頑張りましょう!」
「全員で先生方が驚くような素晴らしい成績を目指しましょう!」
「はい!」
全員の意欲の高まりに、キュアリィは高揚する胸をきゅっと押さえました。
(時として離れる事もいびり……。でもいびりで繋がった絆は、一時離れても変わらず繋がっているものなのですわ! 頑張りましょう! ノマールさん!)
読了ありがとうございます。
段々と無用な遠慮が減ってきたノマール。
前回の掃除いびりが効いてますね。
この四人の仲良しっぷりは書いていて楽しいです。
しかしさすがにこの期末で好成績を出したら、ポンコ……、ヴィリアンヌも不審に思うはず。
次話は少し毛色を変えてお送りします。
ですがほのぼのは変わりませんので、安心してお楽しみください。




