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第十一話 お掃除いびり

人をいびる時はね 誰にも邪魔されず 自由で 何というか救われてなきゃあダメなんだ と呟きたくなるキュアリィのノマールいびり。

今回はノマールのよそよそしい様子に目をつけました。

果たしでどんないびりを創造するのか?

どうぞお楽しみください。

 学園が終わる夕方。

 キュアリィはヴィリアンヌの部屋を訪れました。


「失礼いたしますヴィリアンヌ様」

「遅かったわねキュアリィ。今日はどんな風にあの平民をいびったのか、報告なさい」

「はいっ」


 ヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気よく答えます。


「今日は教室の掃除を一人でやろうとしていたので、注意して一緒に終わらせてきました」

「……え?」


 ヴィリアンヌは目を点にして固まりました。


(ど、どういう事? 教室の掃除なんか一人でやらせた方がいびりになるのに……!)


 しかしその時、ヴィリアンヌに閃きが降りてきました。


(! わかりましたわ! その場でここが汚れてる、ここがまだ終わっていない、と細かく指摘するのですね! 私にも段々この娘のいびりが見えてきましたわ!)


 納得したヴィリアンヌは、満足そうに頷きました。


「よくやりました。これからもその調子でどんどんいびりなさい」

「かしこまりました」


 キュアリィは一礼をして、部屋を出て行きました。




 時は遡ってその日の授業後。


「ノマールさん、お帰りになりませんの?」

「は、はい。あの少し用事がありまして……」


 どこかよそよそしい態度のノマールに、キュアリィは違和感を覚えました。


「ご用事とは何ですの?」

「いえ、その、大した事ではないのです……」


 目を伏せるノマール。

 キュアリィは迷いました。


(明らかにお困りの様子……。でももしかしたら、何か人に聞かれては恥ずかしいような事なのかもしれませんわ……。私、どうしたら……)


 その時、キュアリィの脳裏にヴィリアンヌの言葉が響きました。


『この由緒正しい学園に、平民が入るというのは大変な事なのです!』

『どんな些細な事でも、丁寧に、じっくり、ねっとり、教えてあげるのですわ!』


(そうですわ! たとえそれを聞く事でノマールさんから疎まれても、今力になって差し上げられるのは私だけ! そうですよね、ヴィリアンヌ様!)


「ノマールさん。問題をご自分で解決しようとなさるのは立派な事ですわ」

「は、はい……」

「でも心配や応援はさせていただきたいんですの。ですからご事情だけでも教えてくださらない……?」

「キュアリィ様……!」


 その言葉にノマールの表情が和らぎました。


「あの、今朝先生から、『いつもの掃除の方が急用で明日は入られないので、今日帰りに皆で掃除をするように』と言付かっていたのです」

「まぁ、そうでしたのね」

「ですが掃除などで貴族の皆様のお手を煩わせるなど申し訳ないと思い、一人でお掃除をしようと……」

「……まぁ……」


 キュアリィは愕然としました。

 ノマールの中でこれ程までに、貴族との隔たりを感じているとは思っていなかったのです。


「ノマールさん」

「……はい」

「私は伯爵家の娘で、あなたは平民の娘」

「はい……」

「でもこの教室では同じ『生徒』ですわ」

「! ……で、ですが、それでも身分は……」

「お願いノマールさん、それを認めたら、私とノマールさんの関係は、貴族と使用人のようになってしまいます。私はあなたとお友達でありたいのですわ」

「! きゅ、キュアリィ様……!」


 ノマールの見開いた目が涙ににじみ、そして真珠の粒のようにこぼれ落ちました。


「さぁ、一緒にお掃除いたしましょう。二人でやればすぐですわ」

「はい!」


 ほうきで床をはきながら、キュアリィは雑巾を絞るノマールの背中を見つめました。


(まだまだいびりが足りなかったようですわ。もっと心置きなくノマールさんが楽しく過ごせるように、いびりに磨きをかけましょう!)

読了ありがとうございます。


キュアリィの中でヴィリアンヌに対する信頼度が上がりました。

もちろんヴィリアンヌの意図とは違うところで……。


よりいびりに力を入れる事を誓ったキュアリィ。

次話もどうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どうやったらこんな善人が誕生するんだ…! 思わず笑顔になる
[気になる点] ヴィリアンヌ様、目が点。 そろそろなんかおかしいってことに気付かないのでしょうかね?(笑) [一言] こうして、身分を越えた二人の絆は固く強くなっていくのでした。
[一言] 今回は姑ばりの掃除いびり、なんて陰湿なんだ! キュアリィさん、それ以上いけない。
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