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9話 はじめての冒険者ギルド(不法侵入)





〜早朝、"冒険者ギルド"一階、窓口酒場にて〜

 


「そりゃ俺の依頼だ! このノロマ!!」




「なんだと?! 俺が先に手をつけたんだ! てめえはそこの塩漬け依頼でもしゃぶってろ!!」




「はーい、押さないでくださーい! 早朝依頼は5番窓口から12番窓口で受け付けてまーす。おさないでー! おさないで、って押すなっつてんだろ?! このダボハゼどもがああああ!?」




「ぎゃああああ、ウーさんがキれた!!」



「バカ冒険者ども!! お前ら責任とれよ!」




 冒険都市アガトラの朝は早い。



 帝国南部領の物流の中心、そして帝国きってのモンスター素材の生産地でもある帝国経済にとっての要の地。




 朝日が昇った瞬間に、ギルド酒場に張り出される依頼書の取り合いはちょっとした名物だ。



「えー、もう割の良い依頼残ってねえじゃん」



「スガル村でまた山賊が出たんだってよ。この依頼受けるか?」



「んーむ、やり方が狡猾すぎるな。王国の間者かもしれん。きなくせえ、パスだ、パス」




「じゃー、今日も元気に下水道掃除にするか……」



「あーあ、1級連中みてえに地下待機しときゃ手当がつく生活がいいよなあ」




「バーカ、お前、上位モンスターの討伐なんかできねえだろうが。飛竜種に巨人種や伝承種とかのバケモンをタイマンで殺してようやくなれる人間の形した化け物だぞ、1級なんて。俺らにゃ、平原での間引きがお似合いだ」




「そしたら塔級の連中はなんだよ」



「決まってるだろ、バケモン以上のバケモンだ」



「へーへー、凡人はらしくいきますかね。たまには割りの良い依頼うけてみてーなー。じゃあ今日も平原で元気にモンスター狩りといきますか」




 比較的実力があり、安全マージンを取りながらモンスターを狩れる2級の冒険者達が呑気に腸詰めやら、焼いたじゃがいもやらをつつきながら、仕事の話に興じる。




 その日は冒険者ギルドにとって、なんの変哲もない1日のはずだった。



「クソ、2級の連中、呑気に朝飯なんか食ってやがる……」



「馬鹿、聞こえるぞ、平原での薬草採取依頼取れたから今日はラッキーじゃねえか」




室内に、風が突如、吹いた。




「なんだ、風?」



「あああ、俺の依頼書が!?」




「なにこれ?! ちょっと、誰かの"スキル"が暴走してんじゃないの?!」




「お、落ち着いてください! ギルド内でのスキル使用は認められていません!」




さかまく風が、依頼書をさらい、冒険者がそれを奪い合う。



ギルド受付嬢たちのスカートがまくれ、それを見て鼻を伸ばしている男の冒険者が、連れ合いの女冒険者にしばかれる。




いつもの光景。しかし、次の瞬間に風共に現れたソレは明らかに、イブツだった。






「クソエルフ!! って、は? どこ、だ。ここ」





「「「「は?」」」




風と共に現れた男、冒険者ギルド全員が固まった。




 ……

 …




 遠山は風が消え、視界が戻った途端、その場所の光景に目を奪われた。




「ーーここ、どこだ?」



 建物の中だ。木の壁に、木の床。動物の毛皮のラグがそこら中に敷き詰められ、丸テーブルや、長テーブルがひしめき合う。



 部屋の中央には大きなたいまつのようなものが赤々と灯されており、その周りで肉やら野菜やら魚やらが串にさされて焼かれている。





「……酒場?」



 バベル島の歓楽街にある酒場に構造がそっくりだ。そして何より周りにいる連中。




 みな一様に何かしらの武器を装備している。剣、斧、槌、弓。



「……は?」



「な、なんだ、コイツ、どっから出てきた?」




「スキル? でも、奴隷服着てるぞ」




「え? 黒髪?」



「人間で、黒髪で、栗色の目……」




 がしゃん。ぺたり。




 音。遠山を囲んで眺めていた武装した連中、その中の1人が自分の武器を落とした音だ。




 みんながその、武器を落とし、腰を抜かして床に座り込んでいる女を見つめた。




 遠山は、その女に見覚えがあった。




 あの馬車、遠山が始末した犬男達、それと一緒にいた獣耳の小さい美少女、そのうちの1人ーー



「……そいつ、だ」




「あ? エル、どうしたんだ、おまえ」




「そいつよ!! そいつ!! 黒髪! 栗色!! 竜の巫女サマを殺した奴隷!! 私たちの徒党をめちゃくちゃにした奴隷!! そいつよおおおおおおおおお!!」




「あ、あんたあん時の馬車に乗ってたネコ耳ーー」




「……ありゃ、怪しいものじゃないんだけどな。えーと、はうあーゆー?」




「おい! おい、おい、エル! 今の言葉ウソじゃねえんだな!! コイツがあの竜の巫女が探してる奴隷なんだな!」



「そう、そうよ! 忘れるもんか! コイツの、コイツとあのリザドニアンのせいでお姉ちゃんは…… みんなは……」




「おい、あそこ今、奴隷がどうとかって」



「なんだなんだ、揉め事か? 喧嘩だ喧嘩だ!」




「おい、あれ、エルじゃねえか? ほら、この前壊滅したライカンズの生き残り……」




「おー、あの竜の巫女からの大チャンスを不意にした間抜けどもか、ぎゃはは、なんだ、なんだ、また笑わせてくれんのか?」




「くそ、ゾロゾロと…… あーと、そこのネコ耳さん。その節はどーも。だけどアンタその被害者ヅラはどーよ」




「うるさい!! 奴隷!! みんな、聞いて!! コイツ、こいつコイツ!! 帝国中が探してる奴隷! 竜の巫女が探してる奴隷よ! 帝国金貨10000枚の奴隷!」




「おっと、まるで400億の男みたいな言葉だな。悪い気はしねー」




「黙りな、奴隷、てめえどうやってこのギルドに現れた? スキル持ちか?」




「待て待て待て、さっきのクソエルフといい、てめえといい俺の知らん単語で会話すんな、コミュ障どもが、あとハゲ、俺にそんな嬉しげに武器向けんな。ビビって殺したくなるだろうが」




「あ?! 冒険奴隷風情が何いってんだ?」




「お、おい、ハゲ待てよ、あの奴隷、竜を殺した奴なんだろ? あんま刺激したらやべえんじゃねえか」




「馬鹿が!! 見てみろよ!! あのみすぼらしい服装に汚ねえボサボサの髪! 腕には手錠がついたままじゃねえか! やれるだろ! ここで! あと俺はハゲじゃねえ! スキンヘッドだ!」




「た、確かにハゲの言う通り、なんか、全然弱そうだ。お、俺ら、これチャンスなんじゃ…… 一生下水道攫いの底辺冒険者卒業出来るんじゃね?」




「まて、まてまて、おまえらだけでやんなよ、オラもオラもかませろ。ほら、武器、武器抜いたぞ、オラもこれでこの奴隷捕まえた時は協力したことになるどな!?」





「リベ、俺らはどーする?」




「ジャル、すぐギルドから離れよう。俺のスキルが反応しちまった。ここはヤバすぎる。知り合い見つけて声かけてズラかるぞ」




「了解、くわばらくわばら。あの武器抜いてる3級とか4級、一部は2級もか。あんだけいてもダメなのか?」




「ダメだな、話になんねえ。巻き添え喰らう前に出るぞ」





 遠山が耳をすます。この酒場らしき場所で屯していたマトモそうな奴が早々とこの場を離れていく。




 よかった、アイツらは厄介そうだ。



 それに比べてーー




「……おまえらは簡単そうだな。飯、きちんと食ってんのか」




「あ?」



「なんだ、コイツ!」



「お、おい、早く誰か捕まえるんだど! に、逃げられたらも、もったいないんだ」



 やせっぽっち。ハゲ、デブ、腹が出てるやつ。



 体つきを見たらわかる。おそらくロクなモノ食べてない。脂だけとか炭水化物だけとか、あとは酒だけ。



 およそ戦う人間の身体つきではなかった。武器もあまり手入れされていない。


 剣先が欠けていたり、持ち手の結びがほつれている。




 殺せる。



 5人。他のそれなりに出来そうな奴が参戦してくる前なら1人を瞬殺出来る。



 それにコイツらからは殺意を感じない。




「さて、どうしてくれようーー」



 遠山が頭の中、戦闘思考をまとめたその時だった。




「殺して!!」





「殺してよ! この奴隷、殺して!」



 ネコ耳がヒステリックに叫び始めた。初めて見た時のオドオドしていた様子はもうどこにもない。




「お、おい、エル、落ち着けよ、コイツは生け捕りにしねえと意味がねえだろ?」




「しらない! そんなの知らないよ! コイツのせいでお姉ちゃんは化け物に食い殺されたんだ! コイツが逃げなければ! コイツが他の奴隷を煽らなければ! ぜんぶうまくいってたのに! なんで、お前みたいな奴隷が生きてて、お姉ちゃんが死んだのよ!」




「いやそりゃおまえらが俺を奴隷なんかにするからだろ。ふうん、そうか、たくさん死んだのか。ま、あんな化け物が多いところでてめえら程度の練度で騒げばもう収拾つかねえよな」




 ナチュラルに鬼畜な遠山がヒステリックなネコ耳に言葉を返す。悪気はあまりなかった。




 一瞬、ネコ耳女がポカンと口を開けて




「あ、ああああ?! 殺す、殺す殺す殺す殺す殺す!! みんな! 何ぼうっとしてるの?! 早く殺してよ!」




「あ、いや、殺すのはなあ?」



「そ、そうだ、ギルドから出てる指示も捕まえろ、だしよ」



「そ、そうだど、エルちゃん、捕まえないとお金貰えないんだど」



 あまりのヒス女の変わりように他の冒険者達が引き始めていた。



 あれ、これもしかしたらやり合わなくても済むかも。遠山が少し甘いことを考えてーー





「いいから! 殺して! そいつ殺した奴にはなんでもしてあげるから! カラダでもなんでも欲しいものあげるから! ヤらせてあげるから、殺してよおおおおお!!」




「……エル、それほんとかよ」



「お、おい、聞いたか? あの姉妹の生き残りが、なんでもって」



「や、や、ヤれるのか? マジで?」



「え、えるたんと、おでが、ぶ、ぶひひひひひ」





 もわり。



 キモい殺意が一気に膨れた。



 欲望。遠山が重視するそれを刺激された冒険者たちが一気にその目に情欲の火を灯す。



「お、おい、ほんとにいいのかよ、エル」



「いい! なんでもするから! いつも、口説いてきてたでしょ! もう、どうでもいいの! アイツさえ死ねば!」



 ヒステリックになっていてもそのネコ耳は確かに異性を刺激する外見をしていた。



 ツヤツヤの肌、華奢な脚はタイツのような装備に包まれ、太ももが少しだけチラリと覗くそのデザインは確かに男ウケがいいだろう。薄い装備からはカラダのメリハリもはっきりわかる。




「なんで。なんで、お姉ちゃんやみんなが死んで、お前なんかが! お前なんかが!」



 冒険者達が、下品な目で喚き続けるネコ耳女のカラダを舐め回すように見つめ、そのあと遠山を見た。



 あれを殺せばーー とでもいいだけなわかりやすい目つきで。





「…….ダメダメだな、おまえら」




 遠山はしかし、あからさまに落胆する。



 その欲望はダメだ。他人にその場限りの勢いで煽られ芽生えるそれはただの欲求に過ぎない。




「おまえらはほんとダメだな。女に欲求抱くのは仕方ねえけど、てめえらのそれは美しくねえ。ただ、本能を煽られてるだけ、動物と変わんねえな」




 サイドクエスト発生


【人間の証明】


【クエスト目標、ライカンズの生き残り"エル"の結末を決める】




 でんでん。低い太鼓の音ともに、喚くネコ耳女に矢印が立つ。





 ああ、なるほど。まあ今回は割とどうでもいい。




「…….数が多いな」



 ネコ耳女のご褒美発言を受けて遠山を囲む連中は倍くらいに膨れていた。



 女の冒険者の何人かは付き合っていられないとばかりにその場を立ち去り、他のマトモそうな連中は既に姿を消している。




 窓口みたいなところにたくさんいた制服の人達も姿が、見えない。




「使っちまうか」




 流石にこの人数を武装なしで皆殺しはキツい。遠山はもう2度と出し惜しみはしない。



 静かに、キリを広げ始める。確実に、殺すために。




「おい、一斉にかかるぞ、竜がどうのこうのとか関係ねえ、この人数だ、殺せるぞ」




「お、おい、エル、殺すって、最初に殺した奴だけしかご褒美ねえのか? なあ?」




「いいよ、みんな相手してあげる、ソイツの死体をぐちゃぐちゃにしてくれたらみんなになんでもしてあげる! だから! 早く!」




「よおおおおし! 聞いたか!おまえら! やっちまおうぜえええ!!」




 ウオオオオオオオオオ!!



 浅い欲求に煽られた馬鹿達が騒ぎ始める。




 ここだ。




 遠山が、一気にキリヤイバを前方に展開する。自分に影響なく、敵だけを殺せるように。




「死んじゃえ、奴隷」




 ネコ耳女が、勝利を確信した顔で男たちに囲まれながら笑った。




 馬鹿が、死ぬのはお前だ。遠山が真っ先にそのネコ耳女が死ぬようにキリの濃度を調整してーー




















「おや、おやおやおやおやおやおや。オレの言。帝国中に響き、物乞いですら我が令通りにしていると聞くが、どうやらここにいるのは人ではないらしいな」








「ーーあ」




「へ?」



「ば、あ、え?」




 空気がおじけた。



 かしゃん、かしゃん。



 金属が重なる音。



 人が、自然と1人、1人、膝を折り、首を垂れていく。




 ネコ耳女に向けて欲を、遠山へ向けて殺意を飛ばしていた冒険者、3級、4級中心の下位の冒険者達が1人1人、地面に這いつくばり始める。




 誰しもが震えて、誰しもが地面に頭を、血が出るほどに擦りつけていた。




「はて、メス猫の声が聞こえた気がしたが。なにぞ、愉快なことを鳴いていたような」




 女だった。



 腰まで伸びたその豪華な金髪。陽炎に灯されているかのごとく豊穣の金が波打つ。何故か、前髪が片側だけ長く片目を隠している。




「オレは確かに奴隷を探せ、と言った。探せ、だ。殺せ、ではない。さ、が、せ、とな」



「あ。あ、あ……」



 背は高く、脚は長い。プロポーションを隠す気のないヘソだしの窮屈そうな胸当てだけがついた革の鎧。




 脚と腰には金色の意匠が施されたスカートのような鎧が備わる。




 アホみたいに細いくびれた腰に手を当て、女が立ち止まる。



 震えて動けないネコ耳女の近くで立ち止まった。





「さて、匂うな。発情したメス猫の匂いだ。ほれ、囀ってみよ。先程の、殺せ、という鳴き声の主を探しておるのだ。さあ、囀れ、メス猫」



 蒼い目、前髪で隠されていない方、青い片目がネコ耳女を見下ろす。




 ネコ耳女は顔を真っ青にして、それでもその目と己の目を合わせて




「にゃん……」



 ぶくぶくぶく、カニのように泡を吹いて倒れた。気絶しているようだ。





「ふん、つまらん、が、命は長らえたか。一言でも喋ればその首を、焼き落としてくれたのにのう」




 この場に立っているのは、もう遠山とその金髪の女だけだ。



「…….っ!?」




 重い空気。金髪女が遠山を見つめる。それだけで身体の芯が痺れて重くなる。




 そのかんかくは、ダンジョンで、そしてあの塔とやらで感じた感覚。自らよりも上の段階にいる生物と相対した時、1番最近で、言えば、あの鎧のーー










「まったく、探したぞ。ああ、探した。探したのだぞ。このオレがまるで幼子のように貴様を求めて探したのだ」




「……あ?」



 フッ、と。その女が微笑んだ。



 太陽が人に好意を持てば、そんな笑い方をするのではないか。そんな笑顔だ。





「疼いたのだぞ。眠るたびに疼くのだ。貴様に刻まれた傷が、貴様に植え付けられた恐怖が、貴様に貫かれた眼窩が。かかかか、ああ、ほんとうに、ほんとうに、心地よく、寂しい夜が続いていたのだ」




「…….警告だ。それ以上俺に近づくな。わからねえと思うが、お前は既に俺の射程範囲にーー」





「ああ、かか、それか。それはもう覚えたぞ。ふむ。ああ、貴様の言う通り、()()()()()()()()()()()




「なに?」




 遠山が聞き返した瞬間、女の青い目が光り




 しゅぼ。空気が、焼けた。一瞬だが。



 辺りの空気にぱっと、炎が走り、そして気づけば




「うそ、だろ。今日2度目なんですが」




 キリヤイバが、空気中に広げていたキリヤイバが瞬時に焼き尽くされた。もう手応えがない。キリヤイバは発動しない。





「かか、貴様とはたくさん話がしたいのだ。語りたいことがたくさんあるのだ。さあ、帰ろうか」




「待て、待て待て待て、意味がわからん、な、なんだこの状況?! お前、どうやって、キリヤイバを、いや、なんで、知ってる?!」




「決まっておるだろう? オレはそれに殺されたのだから。ああ、得難い経験だったぞ。褒めて遣わす。貴様はまことに、見事な狩人であった」




 満面の笑みで、女がまた近づいてくる。



 遠山が焦り始める。



 一目見てわかった。身体つき、歩き方。




 コイツ、ヤバすぎる。




 白兵戦では勝ち目が万に1つもない。切り札のキリヤイバは何故かタネが、割れており、わけわからん方法で無効化された。



「おまえ、マジで誰…… ん?」



 焦りながらも、回転し続ける戦闘思考。それがありえない、しかしそれが一番確率の高い可能性にたどり着く。





「どうした? そう怯えるな、くるしゅうない、ちこうよれ。かか、まあ、貴様が来ずともオレがゆくがな」




「その話し方、歩き方、上背…… 威圧感、キリヤイバ、次に、活かした? いや、ありえねえ、だって、あんだけ、念入りに、あ、ありえねえ」





「ああ、あのダメ押しは効いたよ。かかか、母上に話したらおおいに貴様を気に入っていた。父上は何故か貴様に同情していたがな。かか、思い出しただけでも、愉快だよ、本当に」




 ぱさり。



 女が、前髪をもちあげ、隠れていた片目を露にする。



「あ…… うそ、マジ、マジ、かあ……」




 全て理解した。その女の片目を、見ると。




 ナイフの感覚が手のひらに浮かぶ。



 傷だ。女の片目は傷で塞がれていた。まるで刃物で突き刺されたように。




「……お前、まさか」



 遠山の言葉に、女がまた嬉しそうに口元に手を当て笑った。






「ああ、本当に会いたかったよ。オレを殺した狩人、オレを超えた人間。我が愛おしい番よ」




「ツガイ……?」




「む、人間種には相応しくない言葉か? ふむ、ならば、うむ」




 女が立ち止まり、ほおに手を当て首を捻った。



 それから何か閃いたとばかりに頷き




 少し頬を赤らめて。




「旦那殿、迎えに来たぞ」




 太陽が、遠山鳴人に微笑んだ。


 


<苦しいです、評価してください> デモンズ感



Twitterアカウント下に貼っています。更新告知してるので良ければフォローしてやってください。

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― 新着の感想 ―
うわーーーーーーーーー!!ありがとう!!久しぶりに素晴らしいカプを見られてる気がします!もう神とか天使とか吸血鬼とかとくっつかないで竜の番ルート一筋でいってくれないかなーーーー!これから楽しみです!!
[一言] ヤバい…意味分からん(笑) 異世界感、非現実感がツヨツヨで物語に引き込まれるわ
[良い点] このタイミングでこの再開、という形はちょっといい意味で予想を裏切られた
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