悪魔が悪魔と言われる訳
母親が二人の様子を見ながら父親に話しかける
「おとうさん?おとーさん」
だが返事はない
もうすでに命の火は消えている
「おとーさーん、起きてー」
涙をこぼしながら父親に縋りつく母。
「おとうさん、ごめんなさいぃ」
加奈子は自分が押し倒したから父親が亡くなったんだと理解する。
「ごちゃごちゃうるせぇ~んじゃ」
こんな時にも理不尽なトオルの言葉に、さすがの母親も言葉を返す。
「どうしてこんな酷い事が出来るのー?」
ボゴッ
トオルは小言を言う母親に心底腹が立ち、中腰ながらも母親の側頭部を思いっきり裏拳で殴る。
「ゴフッ アッ・・・」
母親は力なく崩れ落ちていく。
(ヒュン)
母親の命の灯も、理不尽な息子にあっけなく消されてしまった。
「いやぁぁぁぁぁ おかぁさぁぁぁぁん」
「ビービー泣いとらんとちゃっちゃと食いもん持ってこい」
「ひ、ひとごろしー」
「鬼ー悪魔ー」
「じゃかぁ~しぃ!」
「ひっ」
バットを振り上げたトオルに加奈子の心は恐怖しか覚えなかった。
ドシンドシンとわざとらしく音を立てながら階段を上って行くトオル。
部屋に入って自分の手を開いたり閉じたりする。
(殺すつもりはなかったんやけどな・・・)
とは言え、トオルの心の中に罪悪感や後悔はまったくなかった。
色々ありすぎて、もう心は完全に壊れていた。
それよりも、母親を殴った時の漲る力の方が興味をそそっていた。
ベッドに寝転がり空中にパンチを繰り出す。
自分自身で、運動不足で筋力も無いひ弱な身体なのは自覚していた。
でも今はどうだろう。身体中に力がみなぎっているのが凄くわかる。
背も高くなった、筋肉がモリモリなのもわかる、虫歯だらけだった歯もきれいに生え変わってる。
「ステータスオープン」
何気なくつぶやいた言葉だったが、目の前にホログラムのようにステータスプレートが現れた。
ガバっと勢いよく起き上がり
「おっ?やったぜー」
トオルは心底喜んだ。 思い描いていたファンタジーの世界の入り口に立った事を。
桜庭 通(29)
Lv 2
種族 【新人類】 選択
職業 【--】 選択
称号 【親殺し】【同族殺し】【殺人鬼】
基本能力一覧
GMR/USU
HP 18/18
MP 12/12
STR 18
DEF 20
AGI 19
DEX 18
INT 12
SP/10
sp/2 選択
基本技能一覧
死奪魂玉 隠蔽 技能店舗
27-0/8+0
(このレベルでは強いのか弱いのかわからんけど、まだまだしょぼいのは良くわかる)
そんな事を思いながら、同族殺しや殺人鬼の称号にはあまり興味もない様子だ。
とにかく早くモンスターを倒したい。
そればかりが頭の中を駆け巡るが、腹が減って仕方がない。
ドーンドーン
床を蹴る。
ドーンドーン
早く持って来いともう一度床を蹴る。
(死奪魂玉ってどんなスキルなんやろう)
トントントントン
加奈子が階段を上がってくる。
「火がないからこんなのしか出来なかったけど」
そう言って加奈子は暗い顔でお皿に入ったサンドイッチとコーラを差し出した。
「親父らはどうした?」
「もう死んでるよ!」
「おいおい、そんな怖い顔で睨むなよ。親父殺したん俺ちゃうし」
「うっ」
加奈子はいたたまれず振り返り廊下に出た。
「おいっ!ちょっとこっちこい!」
びくっとしながらも逆らう事が出来ない加奈子は部屋に戻る。
「ステータスオープンって言ってみろ」
「???」
「え~からゆ~てみー!!!」
怒鳴られてビクビクしながらも、トオルの言う通りに小声で言ってみた。
「ステータスオープン」
「はっ?えっええ?」
目の前の空間に文字が浮かび上がり、自分の名前が記されてる事に驚き後ずさる。
「どれどれ?」
トオルが後ろに回り、加奈子の肩に手を置きステータスプレートを覗き込む。
加奈子は身体に触れられたことにビクつき身を縮める。
櫻庭加奈子(31)
Lv1
種族 【新人類】 選択
職業 【--】 選択
称号 【--】
基本能力一覧
GMR/LAT
HP 15/15
MP 10/10
STR 10
DEF 10
AGI 10
DEX 10
INT 10
SP/0
基本技能一覧
8-0/3+0
「ふ~ん、称号もスキルも無しか」
(経験値は、親父が半々でおかんの分が丸々俺に入ってきたって感じか)
(称号はおとんとおかんを殺した分と2人殺したからか)
加奈子は普段から家の中でもきちんとした洋服を着ている。
スエットやパジャマなどの部屋着は寝るときに着るだけだ。
今日も白の清楚な感じのワンピースを着ている。
だが、レベルがついて身長も伸びたので、太ももがあらわになっている。
化粧もあまりしないので、31になるこの年でもすべすべの肌をしていた。
それに輪をかけて進化で若返ったため絹のようで張りのある美人で綺麗な顔をしている。
トオルから見ても、元々小柄ながら綺麗な女だったが、今は20歳前後にしか見えない若い容姿にモデルのようなスラっとしたスタイル。
ほんの数時間前までは家族なので女性として見たこともないし、煩い姉としか思えなかった。
だが、容姿がまったく変わった今は妙に女性を感じる。
急にムラムラとしてきた。
「クローズかクリアって言えばそれは消える」
ぶっきらぼうに言うと、加奈子はクローズと唱えてステータスプレートは消えた。
消えたのを見計らってトオルは後ろから加奈子を抱きしめ両手で胸を揉む。
「いやぁ~ トオルちゃんやめてー」
無言で加奈子の胸を揉みしだくトオルから逃げようと身体をねじる。
だが、レベル2のトオルにレベル1の加奈子は敵わない。
「おねがいートオルちゃんやめてってー」
トオルは加奈子を持ち上げそのまま歩き、ベッドに投げ入れる。
「トオルちゃん、落ち着いてー冗談でもやったらダメなことがあるよ」
ベッドに横たわる加奈子のワンピースの裾が捲れあがっている。
真っ白なショーツがチラリと目に入り、トオルの狩猟本能が全開する。
起き上がろうとする加奈子の肩を押さえつけ股間に腕を押し込む。
「いやぁーほんとにやめてー」
ジタバタと暴れる加奈子を押さえつけ、そのままワンピースの裾を掴み上に捲り上げる。
へそまで捲れたところで下半身が露になる。
「いや~いや~おねが~い」
泣きながら懇願するが、トオルの耳には届いていない。
加奈子の両手を左手1本で掴み、自分のスエットとパンツを脱ぐ。
「トオルちゃん、私たち姉弟だよ、絶対こんなことだめだよー」
加奈子のショーツの中に手を入れる。激しく抵抗するが膝までショーツが降ろされる。
「トオルちゃん、なんでも言うこときくから、おねがい、もうやめてー」
涙でかわいい顔が台無しになっているが、それどころじゃない。
どれだけ大声で叫んでも、助けが来ることは無いだろう。
外では幾人もの人々が助けを求める声をあげているから。
トオルは加奈子の上に覆いかぶさり、器用に足でショーツをずり下ろし加奈子の足の間に自分のひざをねじ込む。
「いやっいやっいやぁ~~~」
~ ~ ~ ~ ~
「あっはははははは」
「おまえ、その年でバージンやったとはな~」
布団の上に赤い日の丸が刻み込まれている。
トオルのイチモツも真っ赤に染まっている。
全裸で身体を丸め向こうを向いてる加奈子のお尻をバチっと叩いてトオルが笑う。
ムシャムシャと加奈子が作ったサンドイッチをほおばり、ごくごくとぬるいコーラも飲み干す。
ぐずぐずと泣いている加奈子に向かって
「いつまで泣いとんじゃ!」
トオルは加奈子の後ろ全裸をしばし見つめながら立ち上がりベッドに歩み寄る。
加奈子の腰を持ち上げ四つん這いにさせて後背位で2回戦を始めようとする。
「おねがいーもうやめようよー」
そんな言葉はおかまいなしにトオルは自分の欲望を吐き出す。
服を整え、靴下も履き、リュックを背負い、片手にはバットを持ってトオルが出ていく。
背中でトオルが階段を降りていく音、玄関を開けて出ていく音を聞いていた。
どれぐらいの時間が経っただろうか。
加奈子は緩々と起き上がり、股間をベッドの横に置いてあるティッシュを数枚取り出して拭く。
(あの子はもう完全に悪魔になっちゃった・・・)
真っ赤になったティッシュを見つめ、近くにあったコンビニのビニール袋に押し入れる。
下着を付け服を正して部屋から出ていく。
股間が痛くて歩きづらい。
サンドイッチを乗せてた皿を片手に持ち、コーラのコップとティッシュが入ったビニール袋をもう片方で持つ。
階段を降りるのが少しつらい。
玄関にカギを掛け、台所に皿とコップを置きビニール袋をゴミ箱に捨て、風呂場に向かう。
電気は止まってるが、電気温水器なのでまだ少しは温かいお湯が残っていた。
シャワーを浴びながら今後の事を考える。
「ステータスオープン」
このステータスプレートがどんな意味なのか考えてみた。
昔家族でやってたファイナルファンタジーというゲームの中であったステータスと同じだと考えればよいんじゃないか?
お父さんを殺してしまったことでレベルが上がったなら、変な生き物を殺しても上がるんじゃないか?
それを弟はわかっていて狩りに出かけたんじゃないだろうか?
それならまた弟は帰ってくるつもりなのか?
もう弟の言いなりになるのは嫌だ。
両親を殺してもなんとも思わないような悪魔はもう弟では無い。
でももうあの子の身内は私だけなんだし。
ブンブン
頭を振って否定する。自分の甘さに嫌気が差す。
悪魔とは決別しないとダメだ。
でも・・・・
加奈子は葛藤する。
どれだけ考えても答えは出てこない。
ほどなくしてシャワーの水が冷たくなってきたので風呂場を出た。
下着を着け、その上からストッキングを履き、普段はほぼ使わないガードルを履く。
上は、着物を着るときに使ったサラシを巻く。
出来るだけ脱がされにくくしないとダメだ。
パンツはすそが短くなってるのでスカートを履きたいが、やはりジーパンにしよう。
ドンドンドンッ
父と母の遺体を寝室まで運び、お線香に火をつけたときに玄関のドアを叩く音がした。
「はいっ?」
「わしじゃ!あけんかい!!」
弟が帰ってきた・・・
しばらく間が開いたが、カギを開け迎え入れた。
「ほれっ」
弟の手から渡されたのはガスボンベ式の簡易コンロと替えのボンベだった。
リュックからは缶詰やパン、野菜や果物などがたくさん出てきた。
少し嬉しくなったが、ダメだダメだ、悪魔とは縁を切るんだ。
でもやっぱり優しいところは残っていた。
ううん、これは優しさなんかじゃない。自分の食を満たすためなんだ。
でも・・・




