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厄災の始まりは 神戸 から  作者: Ryu-zu
第三章 中央区 三ノ宮周辺 クラン創生
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密会

『あったぁ~』

母は探索範囲を広げて、兵庫県警察本部や兵庫県庁を通り越して、重要文化財の旧ハッサム住宅や旧小寺家厩舎がある相楽園にまで飛んできていた。


相楽園から100mも歩けば、もう異人館で有名な北野町に行ける。

少し東に行けば、東京オリンピック柔道で金メダルを取った阿部兄妹の兄の方 阿部一二三 が通っていた神港学園もある。


遠目で見て探索した所、相楽園の中の池に浮かぶ国重要文化財の船屋形(ふなやかた)の所に宝箱らしきものがあるのを感知していた。


宝箱を見つけ浮かれた気分で箱を開けようとしたが鍵が掛かっている。

母は思案した結果、健斗の元にその宝箱を持っていく事にした。


フワフワとタワーマンションを迂回した所で健斗が窓が開いた部屋の中に居るのが見えた。

母は少し悪い方に勘ぐったが、健斗は一人でゴソゴソと、ゲートを出たり入ったりしてるだけなので部屋の中に入ってみた。


『な~にしてんの?』

「おわっ!び、びっくらこいた~」

『おっさんかっ』

『今時の若者はそんな言葉使わんぞ~』


「ノ、ノックくらいせ~よ」

『どこをやっ(笑)』


そう会話しつつも、母が抱えてる大きな箱に健斗の目がいった。


「おっ?宝箱見つけたんやな~」

『んでも、鍵が掛かっとんねん・・・』

『あ・け・てっ♪』


「あはははははは」

「おかん、鑑定スキル持っとるやん」

「なんでそれで鑑定しなかったん?」


『あっ・・・』


『・・・』

『・・・』


『オープン・・・』


カチャッ


『ちょっと恥ずかしいやんかぁ』


「知らんがな(笑)」




宝箱の中身はいつもの様に宝珠が2個と、指輪が2個入っていた。


待望の装備は双剣の指輪と、母が求めていた物では無かった。


「二刀流やったら?」

『いや、それはもう妹さんがおるし』

『やっぱりその大きな幻想的な大剣がいい~』


母の装備と交換して咲空に手渡すのも良いかも知れないが、自分の剣が無くなるのはちょっと嫌だった。


宝珠の方は、时停(してい)収納:時が止まった时停(してい)世界の亜空間にあらゆる物を収納出来る

もう一つは、天使の羽:Cupid(クピド)の羽を顕現し飛行行動を行使出来る、付随して治癒魔法を使える


これも当たり箱だ。

と言うか、オレンジ等級の宝箱はこれくらいの当たりなのかも知れない。

赤等級だとどんな物が入っているのだろうか。


「どうする?使い道決まるまで預かっとこうか?」

『いや、まずこの収納スキルを取り込んだら、そこに保管できるから』


「それもそうやな、パクったろうと思ったのに(笑)」

『危ない危ない(笑)』

そう言って母は収納スキルを取り込んで宝珠と指輪を中に入れた。


そばにあったソファーを入れてまた出して、その便利さに喜んだ。



母に健斗は、飛行スキルは持ってるし、治癒魔法は簡単に覚えられることを話した。

そして続けてこう言った。


「その指輪、咲空(さくら)にあげてくれへん?」


『えっ? ・・・』


「あかん?」


『・・・』

『まじでゆぅとう?』


『うちは子供もおるし、知り合って半日も経たないあの姉妹にそこまでする必要あるの?』

『あんたがその大剣と交換って話ならすんなり受け入れるけど、なんで見ず知らずの子に?』


「でも、ここまで一緒に戦ってきたわけやし」


『よ~わからんわ、あんたの考え方が』

『うちはこれからも息子と娘と生きていくのに、今日ちょっと一緒に戦ったからって、そこまで思い入れ出来へんけどな?』

『咲宙やったらまだしも、咲空ちゃんとはほとんど絡みも無いしな』


『あの子が強くなるのはえぇけど、それがうちのこれからの生活になんのメリットもたらすん?』

『あんたって時々おかしな考え方するよなぁ?』


「やっぱ、あかんの?」

「これからも一緒に戦っていくんやし」


『だから、あんたのその大剣と交換ならOKやで?』

『自分はなんの代償も払わんでそんな事言うのっておかしいやろ?』

『あんたがどうしてもあの子を強くしたいんやったら自分を犠牲にしたら?』


「いや、そこまでは・・・」


『ヘタレやなぁ』

『そんなんやったら最初(はな)から言うなよ』


「そんなに大剣が欲しいからって、そこまで無茶な取引持って来んでもなぁ」


『ちょい待てっ!』

『あんた、頭おかしいんかぁ?』

『そりゃそれ欲しいけど、元々あんたが持ち出した取引やろうが~』


「いや、俺は上げてくれへんかって"提案"しただけやで?」


『だったらNO~やって言っとるやん』


「わかった・・・」

「でもその指輪あげたらあの子、喜ぶやろなぁ」


『よしっ、そこまで言うならその大剣よこしな』

『それを貰ったら、うちがすんごい喜ぶで?』


母はもう鑑定で、固有占有武器でも本人の意思があれば解除できる事は知っていた。


「おかんが喜んでもなぁ」


『あの子よりうちのんが付き合い少し長いし、あんたのおかげで進化もしたんやで?』

『そんなに若い子がえぇんやな』

『・・・』

『この話は帰ったらあの子に話すけどえぇんやな?』


「ちょ、それは必要ないんとちゃうん?」

「あいつは関係ないし」


『必要とかそんな問題やないやん』

『あんたの相棒にこんな事言われたって"報告"や』

『なんせうちは今、思いっきり気分悪い事言われたんやからなぁ』


「ご、ごめんごめん」


『あほかっ!ごめんで済んだら警察も裁判所もいらんわ』


『どうすんねんや?』


「・・・」

「・・・」

「庄内健斗の名に措いて命ずる! 汝との契約を解除する!」


健斗はもう仕方なく大剣の所有権を放棄した。


「ほれ・・・」


『ほぉ~』

『あの子がそんなに怖いんやな』


「ちゃ、ちゃうわ、仲間として大事に思っとうだけや」


母は交換で指輪を2つ健斗に渡し、大剣の腕輪を()めてそれを顕現(けんげん)させた。


『ほぉ~かっちょえぇ~』


右手で握り、天に掲げてその剣を眺めて微笑む。

中二病ど真ん中。




母は大剣を手に入れて心底満足したようだ。

『ありがとね~健ちゃん♪』


「あ、あぁ・・・」


『今、ここでうちを抱いていく?』

『かなり久々やからちょっときついで(笑)』


「あ、あほぉ」

「と、とにかく戻ろか、もうそろそろ終わっとう頃やし」


『もぉ~絶対に誰にも言わんのに~』

『ざぁ~んね~ん』


そう言いながら母は健斗の頬にキスをした。

健斗はとくに嫌がるそぶりも見せず、何気ない顔でやり過ごす。


その態度が何か気に入らなくて、母は健斗の正面に回り込み唇に熱いキスをぶつけた。

健斗は抵抗するでもなく目も開けたまま微動だにしなかった。


それも益々気に入らず、母は健斗の口の中に舌をねじ込んだ。


さすがにそこまでされると、剣を取られて()ねていた健斗もお返しとばかりに・・・


2人は、しばし抱き合った。




『プッファ~』

『ごちそうさま~』


母が満面の笑みで健斗の首に手を回したまま上目使いでそう言った。

『やっとく?』


健斗はチラリと腕時計に目をやると、時間がもう12時半前だったので仕方なく


「やりたいけど、生田川に帰らんとさすがに心配するやろう」

『んじゃーあとでなっ』


『ん~カッチカチやのに・・・』

健斗の股間をニギニギとしながら母はそっと離れていった。


『しかし、こいつはかっちょえぇなぁ~』

また大剣を顕現させて眺めて悦に入る。


「いこか」

『いこいこ』


母は大剣を仕舞い、健斗と一緒にフワフワと外に出た。


「もうここからは急いで飛んで帰ろうか」

「眷属たちも全員飛べるしな」

『こうゆぅときに連絡とる手段が欲しいな~』


「そういや、ここのクランは遠耳と大声ってスキルでやり取りしとったわ」

『でもここから生田川んとこまでは無理やろー』


「多分そのうちスキルで何か出て来ると思うわ」

『肉体関係持ったら出て来るとか?ウフッ』

「エロババアと呼ぶでぇ~」

『嫌いや無いくせに~、股間は正直やでっ』


「・・・」


外に出てしばらくフワフワと会話していると、少し向こうの方に稲妻が落ちるのが見えた。


ワーワーと言ってる声が近くなってくる。


『また落ちた』

「誰かのスキルかもなー」


健斗は一度オーガのステータス画面を見ているが、その時はさほど気にもしていなかったので覚えていなかった。奴が雷系のスキルを持っていた事に。



健斗も母も敢えて急いで早く着くようには行動していなかった。

それは、もうオーガ戦も終わってるだろうと思っていたからだ。

のほほんと世間話をしながら戻ってきた。




戦闘場の上空に着くと、オーガと姉がタイマンを張っていた。


「あれっ?他の子は?」

「三ノ宮の人達は?」

『あ、あそこっ!』


そこにはへたり込んでいる千里と麗里、そして泣きながら黒焦げの遺体を揺すっているリトル。

その横でクゥーンクゥーンと鳴いているシュヴァルツ。

その周りで、座り込む人、へたり込む人、(ひざまず)く人・・・

戦ってるのは咲空(さくら)の姉の咲宙(はなび)一人だけだった。


「さ、咲空は?」

『あの黒く焦げた人が咲空ちゃん?』


「さ、さくらぁ~~~?」


健斗はその場所に急いで降下して、リトルの前に着地する。


(千里)ご、ごめん、咲空ちゃんを守れんかった」

「咲空、嘘だよな?」

「咲空?さくら~」


健斗はリトルから咲空を奪い、抱き上げる。

「さくらぁぁぁぁぁぁぁぁ」




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