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厄災の始まりは 神戸 から  作者: Ryu-zu
第三章 中央区 三ノ宮周辺 クラン創生
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和解

急にキャラが変わった、リーダーである大剣戦士が猫なで声で健斗に願う。


『ちょ、ちょっとだけ抱いてもえぇ~かにゃ?』


「ははは、どうぞどうぞ」


大剣戦士がソロソロと手を出すと、リーリはちょっとビビった感じで魔法屋の大きな胸に顔を埋める。


でもしばらく撫でられていると慣れて来たのか、大剣戦士の腕に恐る恐る乗って行く。


『んにゃ~ 』

『キャわい過ぎぃ~』


どうやら小動物フェチのようだ。

リーリも悪い人間では無いと分かっているのか、すぐに可愛い仕草で懐く。


『ねぇねぇこの子ってどうしたにょ~?』

『どこで見つけたにょかにゃ~』


完全におかしくなった大剣戦士に、パーティー仲間もちょっと引いている。


にゃ~にゃ~言いながら、リーリに頬刷りしたり撫でまくって抱きしめてやりたい放題やっても、当のリーリは特に嫌がる訳でも無く、大剣戦士の行動に応える。


しかし、血反吐(ちへど)()く大怪我をしているはずなのにそんな素振りは一切見せない。

アドレナリンが大量に放出されているんだろうか。


小動物酔いしているリーダーを横目に、まだ健斗達に敵意を向ける3人の格闘家たちが居る。



「じゃぁ治癒魔法の習得といきましょうか」


「そこの弓の子と剣士の子、んで殴り屋の子も美咲と一緒に、その足を怪我してるどんくさい格闘家の子を(かて)にして」


  『ど、どんくさい言うなー』


「どんくさい子も自分の傷に手を当てて、心の中で治れ治れと念じてみて」


  『アホちゃうんか~?』

  『そんなんでスキルを覚えたら苦労せんわ!!!』

殴り屋の子が怪訝そうな顔で健斗を馬鹿にする。


 『いや?ちゃんとうちらは覚えたよ?』



 『リカバリー』

そう言って、魔法屋の子が剣士の怪我を簡単に治す。

 

  『えぇぇぇぇぇぇ?』『い、いつの間にそんなん覚えたんや?』


「とにかくやってみて」

 「うっしゃ~やるか~」


美咲は弓の子二人に目配せをして、怪我をしている子の足に手を添えた。

それに続いて弓の子たちと剣士の子も手を添えたので、どんくさいと言われてなおさら納得はいっていないが、格闘家の子も仕方なく自分の足の怪我部分に手を置く。


 「・・・・・・」

 『・・・・・・』『・・・・・・』

  『・・・・・・』『・・・・・・』


 (ヒュン)


 「おぉ~~~~」

 「ヒール覚えたぞぉ~」

 『うちも覚えた~』『うちもヒールおぼえた~』


  『な、なんなんや?ほんまにヒール覚えよった!』

  『そ、そんなアホな・・・』

  

  『あ、ありがとうございます・・・』

格闘家の子が素直に美咲に礼を言った。

美咲はニヤケタ顔でニヒッっと笑う


仲間が続々と新しいスキルを覚えていくのをリーダーは横目で見ていたが、手の中の小動物にまた意識がいってしまい、スキルの事も仲間の事も健斗達の事も頭の中から消し去ってしまった。



そして、もう1人、まだ治癒魔法を覚えていない殴り屋の子がオロオロしだした。


  『わ、わたしもスキル覚えたい・・・』

 「9人中7人も治癒魔法使えるんやから、別に要らんのちゃう?」

 「弓の子か魔法の子に掛けてもろたらえぇやん?」


美咲が意地悪く笑いながら突き放すような言葉を掛ける。


  『で、で、でも、みんなに迷惑掛けた無いしー』


 「んじゃ~まずはうちらに謝ったらどないや?」

「おいっ美咲ぃ~」


 「あんだけ散々敵意を向けてたのに、今更調子のえぇ事を言うよなぁ~」

 「『横した気分はどうよ?』とか聞いとったよなぁ~」

 「うちらのおかげで命も助かったし、経験値も入ったのによぉ」

 「横師呼ばわりしたくせに、ほんま調子のえぇ事ゆうとうと、自分で思わんのか?」

 「おまけに、こうやれば治癒魔法を覚えるよって教えたっとうのに、拒否したんやろ?」


今度は冷静に相手を責める事が出来ている。

美咲も成長しているのだろう。


もしも健斗がまたおかしな事を言い出したら、今度は殴るつもりだ。


心静かに冷静に。





沈黙が続く中、約1名だけがキャッキャとはしゃいでいる。

いや、にゃ~にゃ~とはしゃいでいる。


『いや~こんな可愛い子の飼い主が悪い人の訳が無いにゃ~』

『さっきはごめんにゃ~』


こちらの話を聞いていたのか聞いていなかったのかは分からないが、唐突に謝罪が来た。


リーダーが謝った事で、今まで謝るタイミングを逸していた3人が口を揃えて謝ってきた。

  『本当にすみませんでした』『申し訳ありませんでした』


    『ごめんなさい』

嫌々ながらも殴り屋の子も謝罪の言葉をつぶやいた。


 「ふむ。許してあげよう」

「おまえは何様のつもりやー」


健斗に軽く頭を叩かれた美咲は、格闘家の子を自分の方に呼んだ。


 「まぁ殴り屋の子は自分の怪我を治してみ」

 「やり方はさっきも見てたからわかるやろ」

 「魔法屋さん、ちょっと教えたって」


少し突き放してはいるが、無下にはしないで指示だけしてあげる。


格闘家の子には、弓の子と同じように風纏を覚えさせて、近接格闘に必要な技を教えている。

1人だけ素直にお礼を言ってくれたから、そのお返しの様なもんだと心の中で思う。



リーダーはお花畑をさまよう蝶のように、誰が見ても浮かれてフワフワとしている。


「リーダーさん、ちょっと怪我だけ治しておこうか~」

『んにゅあ~?』


「リーリ、こっちにおいで」


呼ばれたリーリがピョンと飛んで健斗の肩に乗った。

手の中の小動物が居なくなったその瞬間、大剣戦士の顔が歪み膝から崩れ落ちていった。


  『リーダー』


みんなが一斉に大剣戦士のそばに集まってくる。


もがき苦しむその姿を見て、怪我が悪化している事を察する。

そして全員で治癒魔法を掛けると、大剣戦士は驚いたような顔で即座に起き上がった。


『おっ?あれっ?痛みが無くなったぞ?』


 『リーダーおかえりー』


やっと精神が元に戻った大剣戦士に魔法屋の子が声を掛けて、帰還を喜んでいる。


さすがに、にゃ~にゃ~言ったままだとこの先が思いやられるから。




殴り屋の子も無事に治癒魔法を覚えて、これで9人中8人が治癒出来る訳だから、これからの戦略も広がる事だろう。


「んじゃぁさ~ 次は眷属契約ってスキル覚えてみないか?」

「この変異種のカーバンクルも、この子の眷属になってるんよ」


美咲の頭を撫でながら、リーリとの関係を説明してみる。


『ぜひぜひ!そしてカーバンクルを見つけよう!!!」


リーダーがノリノリで手を上げた。


「ちょっと待ってね」と言って健斗は上空に飛び上がる。

鳥瞰図と索敵を駆使して生物の反応を探ってみた。


あちらこちらにマークは出るが、少数の塊なので人間がほとんどだろう。

やや小さめのマークは多分ゴブリンかな。


マンションとか見ると被って固まっているように見えるが、各階にまばらに居るのだろうと思う。


リーリを見つけたときのように、小さな生命反応を探してみたが見つからない・・・

残念だ。




朝の狩りで行った森公園の方を見ると、ゴブリンとオオカミの死体のある辺に生命反応が1つある。


目視で遠目を使い見てみるが、生き物が動いてる様子は無い。

多分、まだ息のあるオオカミが1体居るのだろう。


治癒の魔法もある事だし、眷属契約発生の糧にしても良いだろうと考えた。

生き返らせて自分の眷属にしても良いかなとも思う。

少し小さめだが、それでもトラやライオンよりは少し大きいくらいには感じる。




「そこの森公園に死にかけのオオカミが居るんだけど、そいつでスキルを発生させてみようか?」


地面に降り立った健斗が皆に向かってそう言うと

 『オ、オオカミ~ いいねぇ♪』


誰ともなくつぶやいた言葉が耳を通り抜けていった。




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