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厄災の始まりは 神戸 から  作者: Ryu-zu
第三章 中央区 三ノ宮周辺 クラン創生
35/216

厄災2日目始まる


何時間寝ただろうか。

部屋の中では時間がわからない。

ゲートから顔を出すともう太陽が結構高くなっていた。


気分的には、ラジオ体操第一をやりたい気持ちになったが、ちょっと恥ずかしいお年頃だ。


ルームに戻ると美咲はスヤスヤとまだ寝ていたので、自分ももう一度布団に潜る。

そして今日一日の身の振り方を考える。


ゲームでは無いのでクエストなど発生はしない。

だから自分でイベントを探していかないといけない。


まずは連絡が付かない仕事先に、何かしらの状況と今後の方針を聞きたい。


大阪本社は無理そうなので、垂水区にある神戸営業部に顔を出すのが一番重要案件。




美咲が起きるまでに冷蔵庫を物色して来るとするかな。


ショッピングモールの横のマンションの最上階から順に見ていく。

何軒か目に、両開き上下4段の超大型冷蔵庫を見つけた。


ゲートを開き冷蔵庫を入れようとしたけど、ゲートが小さくて冷蔵庫が吸い込まれない。

だが、冷凍庫に入ってる、多くの高級冷凍食品と牛と豚のブロック肉が捨てるのには惜しすぎる。


停電してからほぼ24時間も経ってないだろう。

ブロック肉はまだ解凍されてなく芯の部分はまだまだ凍って硬い。


ゲートを冷蔵庫の横に開き、ルーム内の出口ゲートを部屋の右隅のコンセントの上に持ってくる。


「うんうん、我ながら完璧だ」


ルームの中に冷蔵庫のコンセントの線だけを入れて中でコンセントプレートに差し込む。

ブォーンっと言う音と共に冷蔵庫が起動した。


成功だ!


他の部屋に散策に出かけ、半解凍程度の肉塊を探す。


大型の冷蔵庫を見つけたので、先ほどの超大型の横に置き、腐った物を選別して捨てる。

そしてコンセントを差して起動させる。


もう大型の冷蔵庫位なら、羽毛布団(ふとん)バッグを持つくらいにしか感じない。


人外だよなぁ・・・



早くレベルを上げてポイントで部屋の増設が急がれるところだ。


スキルレベルが2や3になったらどうなるのかも楽しみだ。




しばし冷蔵庫の前に座り、ゲートの大きさを変える事が出来ないか練習中である。


あまり上手くいかないので、レベルを上げてみる事にした。


ルームのレベルの上げ方もまだ分からないし、ステータスボードに変化があるのは、一番はレベルが上がった時なのでそっちの方向に進んでみよう。




マンションから外に出ると、太陽がまぶしいくらいにサンサンと輝いて見える。

だが、芦屋の方に目を向けると、やはりあの大きな壁が視界を塞ぐ。


せめて向こうが見えたら何かしらの情報も手に入るのだろうに。




狩りをする前に、着替えやらが入ったキャリーバッグを回収しないと、と思い立ち、六甲道に軌道を修正する。


自分は別に良いけど、流石に女性の美咲はちゃんとした着替えが必要だろう。



中学校に辿り着くと、西校舎の北側には誰も居なかった。

2人のバッグもそのまま置いてあったので、そっと持ち出す。


取っ手の所に白い紙が挟んであり、読んでみると・・・

なにやら涙が出そうになった・・・


リョウケンとわらびからの激励の手紙だった。

わらびはまだ俺を許してはいないみたいだが、とにかく頑張れと書いてある。


リョウケンはまた一緒に戦おうと・・・


2人とも本当に良い奴だ・・・

自分のふがいなさに嫌気が差す。


だが、いつまでも落ち込んでは居られない。


冷蔵庫の置いてあるマンションまで飛んで戻り、ルームの中に入ったが、美咲はまだ寝ていた。

起こさないように、そっと枕元にキャリーバッグを置いた。


他人がルームに入らないよう、ゲートは閉じておいた。



ベランダから上空に飛び上がり、鳥瞰図を開き索敵を掛け合わせる。

少し山手側に中くらいの的がまとめて集まってる場所があった。


多分、ゴブリンが集まってるんだろうとそこまで飛んでいく。


そこは、池を携えた大きい公園だった。

公園の中ほどに、ゴブリンとイノシシみたいな魔獣が戦っていた。


公園の手前で降りて様子を見てみる。

フェンス越しに全体が見渡せて、魔物達の死角になる場所を探す。

公園の名前は通称、森公園。


イノシシは良く見ると既知の猪とは違い、毛質は長めで色は灰色で牙が大きく体躯も大きい。


ゆっくりと近づいていき、周りに人が居ない事を確認して、不意打ちで腰の剣を抜き魔風剣を振りぬいた。

20メートルくらいの魔法の風の刃がそこに居るすべての生き物を真横に一刀両断する。


威力が広範囲すぎて今まで使えなかったが、人が居ないこんな場所ならとても有用である。


「ん~これくらいじゃレベルは上がらんか・・・」


健斗はイノシシの死体を見て、これは食料になるんじゃないかと思ったが、解体が出来ない。

何体かやってれば覚えるんだろうけど、切羽詰まって食料に困って無いので躊躇する。


一応鑑定で見てみると、シルバーボアと出た。

さらに鑑定で調べると、やはり肉は食用だった。

ゲームのように肉のブロックになってドロップしてくれると助かるんだが・・・


ちょっと解体をチャレンジしてみたが、まだ無理そうなので辞めた。

もったいない気がするが、仕方ないかな。


何度かやってればスキルとして解体を覚えるんだろうけど、その最初の1歩がわからない。


もしかしたら誰か必要とするかも知れないので、イノシシ4体を東南の入り口に運ぶ。

重さは気にならないが、滴り落ちる血液が身体に付着しないように気を付ける。

ただ単に気持ち悪いのと洗い替えが今のところ限られてるからだ。


イノシシの死体を運び終わったくらいに、公園の方からボリボリと言う大きな音が聞こえてきた。

振り向いて見てみると、そこには数匹の大型の犬のような魔獣がゴブリンを食っていた。

鑑定してみると、クーリルウルフと出た。


何となく狼なら眷属にしたいと思ったが、今は辞めておこう。

でもせっかく覚えたスキルなので、やはり自分の眷属は早く欲しいと思う。


また機会があったらねーと言いながら、風刃でそいつらも殲滅する。



昨日はゴブリンしか見なかったが、2日目ともなると他種族も散見するようになった。

人間は減ったのに、魔物が増えていくのはあまり良い傾向ではないな。



次の獲物を探すためにまた飛び上がった。

鳥瞰図と索敵のコンボでわかるのは生命体とその大きさだけなので、人間なのか魔物なのか魔獣なのか全くわからない。

ただ、すぐ近くで一際大きな生命体を見つけたので、そこに行ってみる事にした。


森公園からすぐ東にJR甲南山手駅がある。

その北、山側のタクシー乗り場とバス停のロータリー辺りにその反応はあった。

距離にして40mも無いだろう。

ただ、JRの高架を飛び越えなければならない。


軽く飛んでその場に着くと、山手幹線と隣接するバス停のロータリーで、大きな人型の魔物に6人の勇者が戦いを挑んでいた。


魔物の種族はトロール。

背丈は2m50㎝くらいあるだろうか。

顔は大きな口に大きな尖った耳、腫れぼったい目に無毛の頭部。

相撲取りのような体躯に、手には大きな金棒(かなぼう)を持っている。鬼かよっ!


マワシはしてないが、腰蓑を巻いている。

多分パンツは履いてないだろう。

胸だけ見ても、男なのか女なのか良くわからない。


しかし・・・

レベルは14・・・


ステもINTやDEX、AGIは軒並みゴミのような数値だが、HP,STRとDEFは突出して高い。

早い話が、脳筋な魔物。


ディフェンスが高いだけあって、勇者たちの攻撃があまり効いてない。

6人共にレベルも12前後と高いのに。


攻撃系のスキルは剛力と剛筋しかないが、金棒を振り回すには良いスキルだ。

この防御で物理耐性まで付いていて、トロールの持つ先天性スキルの超回復があるんだから、殴り屋はしんどいだろう。


一段低い場所、駅のすぐ北側にタクシー乗り場のロータリーがあるが、そこから3人が弓と魔法で遠隔攻撃をしている。

多分この9人が一つのパーティーなのかな?。



勝手に戦闘に参加するのはちょっと躊躇する。

ゲームだと横殴りと言う行為になるからだ。


駅前に降り立ちしばらく様子を見る事にした。


リュックを持って出てないので、飲み物が無い。

駅北の自動販売機を無理やり開けてみた。

 バギッ

 (ふっ 思った通り簡単に鍵がつぶれてしまった)

自販機から缶コーヒーを盗み出し(とりだし)て蓋を開ける。


 プシュッ


一連の音をいち早く聞き取って、氷の魔法を撃ってた女性がこちらを見て言葉を発す。

 『あんた、そんな所に居たら危ないやろ』


「あぁ大丈夫大丈夫、手に負えないと思ったら声掛けてね」

「応援するから」


 『応援?がんばれーとか言うんか?』

女性は的外れな天然ボケ的思考で顔をゆがめる。


「あははははは!」


健斗は目の前で死闘が行われていると言うのに大笑いをしている。


弓職の2人が振り向いて健斗を睨む。そして魔法職の子に一言告げた。

  『恥ずかしいやっちゃなぁ』


トロールと戦闘している内の何人かもチラリとこちらを見たが、そのまままたトロールを殴りに蹴りに行った。


戦闘組は、格闘系が3人、剣士系が2人、もう1人は魔武闘士。


大きな両手剣を持った女性が正面からトロールのタゲを取る。

殴り屋は横から後ろからダメージを入れていく。

剣士は後ろからチクチクと切り刻む。


しかし、あの大剣はどこで手に入れたのだろう?

少し形がおかしいから、自作なのかもな。


レベル的にも、1発喰らえば致命的なダメージを受けるだろう。

治癒魔法持ちはここには居ないから、攻撃を受けると即死亡と言う怖い戦い方だ。


まぁ自分たちも治癒が無いので同じ事なんだろうけど。




しばらく見物していた健斗は、ふと美咲をここに呼べないか考えてみた。


ゲートは異次元を通るので、ここにゲートを開いても冷蔵庫はそのまま電源が入ったままにならないだろうか? それは実験してみる価値はある。


駅構内に入って人気(ひとけ)が無いのを確認してルームを呼び出す。




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