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厄災の始まりは 神戸 から  作者: Ryu-zu
第二章 灘区 新在家周辺 サイコパス
30/216

サイコパス安堵

「少し低めに飛んで行けよ」


高速道路には防音壁があるため、道路外からはあまりよく見えない。

特に低い位置はほぼ見えないと言ってもいいだろう。



暫く飛ぶと、長い直線部分に差し掛かり、見通しが良くなる。

長い直線部分の真ん中あたり、多分魚崎辺りまで来た所で衣摩に止まるように言う。


「テリトリー」


華那子と衣摩は中に入り、皆の顔を見て安堵のため息をもらす。




「危なかったなー」

 「なんとか逃げ切れたんちゃう?」



「アホな男の出現で命拾いしたわ アハハ」

 「ほんまやで」


「あれ、誰かの知り合いか?」


「”女性を守るのは男性の務めじゃ”」


 「「あはははははははは」」


 「華那子の知り合いかと思ったぞ」

「いやいや、絵里の知り合いかと思ったわ」


 「「いや、あんなアホ知らんわ」」


笑っているのは華那子と絵里だけである。


風馬も麗華も事の成り行きが全く分からないからだ。


衣摩に関しては、自分のふがいなさに少しだけ落ち込んでいる。


「あれからな・・・」


華那子と絵里は、風馬と麗華をテリトリーに入れてからの事を詳細に話した。





そして、華那子は衣摩に対して説教を始める。


「おい衣摩っ!」

「次にあんなヘタレな事しやがったら、敵に殺される前にうちが首飛ばすからな」

  

  「ごめん・・・」

「ごめんとちゃうんじゃ~」


「おまえ、うちか絵里がどうにかしてくれるとか思っとったんとちゃうやろな?」

「あんな状況でへたり込むなんて、相手に殺して下さいって言っとるみたいなもんやろー」


「一体、何が怖いんじゃー?」

「おぉーゆぅてみ~や」


  「怖かったから・・・」

「だ~か~ら~ 一体何がこわいんじゃ~!!!」

「え~かげんにせぇよ~」


「怖い理由をよぉ~考えてみ~」


  「いきなり大声で怒鳴られたから・・・」

「怒鳴られて、何がこわいんじゃ~」


  「えっ?」

「大声出されて、一体何がこわいんじゃ?」


  「ビクッとするやん」

「ビクッとして、その後動けんようになるくらい何がこわいんじゃ?」


  「えっ?」

「おのれが何をこわがっとんかもわからんのに、身体が動かんって意味わからんわ!」


「絵里― もうこいつを擁護すんな!」

「衣摩の保護期間はたった今終わったからな」


 「さすがに今回のんは擁護のしようが無いかな・・・」

  「絵里ちゃん・・・」


 「あのまま戦いが始まっとったら、こいつを守りながらの戦いになっとったやろう」

 「さすがにあの人数じゃー、それこそチーンやったやろうな」


「大体おまえは何のためにレベルあげとんじゃ~?」

「強くなるためちゃうんか~?」

「戦いに勝つためちゃうんか~?」

「戦いから逃げるためにレベル上げとんか~?」


「相手が人間だろうが魔物だろうが、勝つために、生きるために、覚悟を決めんか~!!!」


「ありもせん恐怖に縛られて死に急ぐんやったら、今ここで息の根止めたろか?」


衣摩は何に怖がっていたのか真剣に足りない頭で考えていた。

恐怖で言えば華那子の方が遥かに上だろうし、なんで知りもしない男達に恐怖したのか?

殺されるかも知れないって恐怖はほぼ感じていなかった。

華那子も絵里も居るからだったのだろうが、二人が簡単に殺される様な状態を想像出来ない。


じゃぁ何が怖かったんだ?


ゴキブリを家の中で見つけると、キャーキャー騒いで怖がるが、ゴキブリが人間に襲い掛かって来る事など、この地球上では有り得ない。

火星なら分からないけど。


唯々人間の精神にダメージを与えるだけだ。

その見た目と素早い行動が気持ちが悪いだけの話だ。


今日のあの場面は本当に何に怖がっていたんだろうか?

あそこで一番怖いのは明らかに華那子である。

その華那子は味方なのだから怖がる必要性は全く無い。


  「あれっ?」


「何をすっとぼけた顔しとんじゃ~」


今の怒鳴っている華那子には恐怖を感じるが、あの男に感じたのは恐怖などでは無かった。

ただ、絵里達に甘えていただけなんだろう・・・


 (ヒュン)

  「あっ!」


  「華那ちゃん、もう大丈夫だぁ!」

「はぁ?脳みそ溶けたんか~?」


 「ちゃうわ、こいつ恐怖耐性を覚えよった~」

 「まぁこの世で一番怖いんが華那子やからな~」


「・・・」

「まぁ、うちの説法が効果あったって事やな」


 (((多分違うやろ)))







 「んで、これからどうする?」


「取り敢えず大阪くらいまで逃げよか」

『阿倍野に昔の舎弟の事務所ビルがあるから、そこに一旦世話になろか」

 「んじゃー阿倍野目指すか」


  「ハルカス見たい~」

  「天王寺動物園行きたいー」


「こいつの能天気は、ある意味ユニークスキルやな~」



絵里は風馬を誘って外に出た。


 「なぁ~風馬よー」


『なんや?改まって』

 「あんたさー、ほんまにこんなパーティ―に入って良かったんか?」

『あはははははは』



風馬は高笑いしたまま何も語らなかった。




 「どう捉えたらえぇんや~?」

『こんな世界になったんやし、こんなえぇ組は無いやろー』

 「組ってか(笑)」

『親分は、切れやすいがしっかりしとるし』


 「そういや、あんたって元の世界で反社やったんか?」

『5番町生まれやからなー 普通にヤクザやっとったよ』

 「ほぉー うちは御蔵通やから、まぁまぁ近くやったんやな」

『ま~番町におったんは震災までやからなー』


『そやけど、俺みたいな武闘派ヤクザはなかなかキツイ世の中になっちまってたわ』

 「抗争ばっかりしとるからやん」

『それが俺らの存在意義やからな~』


「だ~れが切れやすいって~?」

『お嬢、いつからおったんや?』

「んっ?最初からおったやろ?」

 「気配消しとったな~」

「監視のスキルもあるしな ははは」


そうしていたら、麗華と衣摩も外に出てきたので、皆でブラブラと阪神高速道路を使って大阪を目指して散歩する事にした。



道路上には、所々に事故車が止まっている。

中を見ると、ほとんどの車の中には、人間とその3倍のゴブリンが入っている。

生きてるゴブリンも居るので、風馬のレベル上げも兼ねて全部風馬の餌にした。


運転手だけなら、ゴブリンは3体

人間2人ならゴブリンは6体と言う風に、3の倍数だけゴブリンが居た。

10人乗りのバスなら30体も沸いたのだろうか・・・


しかし、すべてが車の中、と言うか人のそばに沸くわけでは無いのだろう。

車に轢かれたり、はねられたようなゴブリン死体も結構ある。


 「だいたいの予測やけど、人間1人に対してゴブリンが3体召喚されたって事でほぼ間違いないな?」

「そんな感じはするけど、確定事項じゃないって事も考えとかなあかんな」


しばらく歩くと、ゴブリンがちょこちょこ現れる。

高速道路の出入り口から入ってくるのか、車の外に召喚されたのがウロウロしているのか?


 「なぁ麗華ー」

  『なんじゃ?絵里(ねえ)?』

 「ここに誘導でゴブリン集められるか?」


魚崎の出入り口辺りまで来ていたので、ちょっとした提案をしてみる。


  『ちょい時間掛かるけど、やってみる?』


「おもろそうやなー」

華那子も一度はそのスキルの効果を見てみたいとは思っていたので、丁度良かった。


麗華は両腕を天に向かって挙げてスキルを発動させる。





しばし待ってる間に、衣摩の柳田に対する殺意についての話になった。


「この前は話が途中で終わったからなー」 

 「うちも不思議でしゃ~ないから、聞きたいわ」


  「そんな大した話や無いんやけど・・・」




衣摩はぼちぼちと話し出した。


  「昔、まだ病院に勤めてた時に、院長さんの甥っ子って肩書きのお医者さんもどきがおったんよ。

現役時代には医師免許が取れずに、病院でバイトみたいなことをしながら勉強してたん。

でも、仕事も出来へんしやる気も無いし、女癖だけは悪いどうしようもないクズやってん。


そいつのせいで看護師長さんがおもちゃにされた挙句、院を追い出されてしまったん。

若い子からは慕われてた本当に人の好い女性だったのに・・・


新しい師長さんも、明らかにその男のおもちゃにされてるのをみんながわかってた。

でも誰もそいつに逆らわないし逆らえない。


そうこうしてたら、今度は若い現場の看護師にターゲットの目を向けだしたんよ。

そいつのいつも使う常套句(じょうとうく)

「俺に逆らったらどうなるかわかっとうよな」

「俺の言う通りにしとったら、何があっても守ったる」


あの柳田って男が華那ちゃんに同じような事を言ってたのがどうしても許せなかってん。


その男のせいで、仲の良かった子が2人も自殺したから・・・」




「んで、その男はどないしたんや?」


  「亡くなった子が院長宛に遺書を送っとってな。

それをみた院長は激怒してそいつと縁を切って病院からも追い出した。

けど、金持ちのボンボンやから生活には困らんし、何年か掛けて医師免許も取ったみたいや。

亡くなった子の家は、そいつの親から慰謝料貰って大事(おおごと)にせず解決したみたい。


今は多分、兵庫区の大学病院におるはず。

うちが看護師辞めるきっかけは、そいつと数年ぶりにその病院でバッタリ会ったからやねん。

旦那とまだ恋人やった頃やから6年くらい前かな。


旦那もそいつも整形外科で、ゆう事聞かんと旦那を左遷させるとか言って身体を狙って脅迫してきやがってん。

拒否したら、旦那の事、ある事ない事、言いふらしやがってなー。

結局旦那はそこ辞めて、灘区にある個人の病院に移ってん」


  「今、目の前におったら間違いのぅ殺しちゃるわ!」


「そっかー わかった」

「あんまり言いたくなかったんやろうけど、すまんな」


  「いや、ゆぅたらなんかスッキリしたわ」

  「逆に礼が言いたいくらいやわ」


 「まぁそいつに会った時に、すぐに殺せるくらいに強~なっとけよ」



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