異世界探索 暁光暁闇の世界
『遠くから見たら小さい森に見えたが、思ったよりも背の高い樹木が生えとるのぉ』
「何か気配はするけど、これは絶妙な隠れ場所ですね・・・」
『あぁ種族はわからんが、小型の生物が多数こちらを窺っとるな』
ラグレアは索敵と気配探知を最大限に使い、森の中の様子を伺う。
(ヒュン)
「あっ?ラグレアさん、気配探知ってスキルが出てきました」
『そうかwそのうち索敵も覚えるだろうてw』
(ヒュン)
「あ(笑) 今度は透視ってスキルを覚えましたw」
「よぅ言わんわw」
真凛は森に足を踏み入れてから、執拗にあちらこちらを凝視していたのですぐにスキルを覚えたのだろう。ネコはただみんなに尽いて来ているだけで、森の様子を伺う素振りは全くなかった。
そして真凛は、覚えたての透視スキルと気配探知で森の中を見回した。
「そこの木の上に猫型の魔獣が多数隠れてますね」
「そっちには大きなリス?っぽい小型魔獣がこちらを窺ってますね」
『あぁ俺もスキルで見ているが、かなりの数の奴らが潜んでるな・・・』
「お~いっ!ワシらは敵対しに来たもんじゃない、ここの長よ、話がしたい」
『そ、そうじゃっ!俺らは次元の狭間からここの世界に流れて来ただけだっ!話をさせてくれっ!」
ラグレアは自分が仕切るつもりだったのに、ネコに先を越されたので少し焦っている。
「・・・」
「・・・ ・・・ ・・・」
「ラグレアさん、私のスキルじゃ強さがいまいちわからないから、強い個体を探して貰えませんか」
『んっ?そりゃ探せるが、どうしたいんじゃ?』
「そりゃ一番強い奴がここを仕切っとる奴じゃないかって事じゃな?」
「うん、で、その人に話しをすれば良いんじゃないかって思ってね」
『これだけ警戒されてたらなかなか向こうから会話を持ってくるのは難しいやろうしな』
「その前に会話が出来る種族かどうかも分からんけどなw」
そう言ってラグレアは強いステを持つ奴を探し始めた。
『ここら辺は皆同じような低レベルやな・・・』
ラグレアはキョロキョロしながら辺りを見回すが、それらしい強者は見当たらない。
「適当に捕まえてみる?w」
「あははっそれで戦闘が始まっても知らんぞw」
『でもまぁそんな事でもやらんと、このままじゃ埒あかんな・・・』
「ネコさん、フワッと飛んで死角から、とっ捕まえてくれない?w」
『あぁそれがいいわw』
「はあ?おまえらは・・・」
そう言いながらネコはふわりと静かに浮き上がり、木の後ろから腕(前足)を伸ばし、反対側に隠れている小さき者を捕らえた。
「ウギャ~ウギャ~*#$)’&(%□□≒~~~」
何を言ってるのかまったくわからない。
ラグレアはスキルの[言語看破]を声に出して唱えた。
ネコはフワフワと下に降りてくる。
真凛はすかさず、その小動物の襟首を掴み、持ち上げて動けなくした。
「た~べちゃおうかなぁ~w」
「い、いやぁ~~~ や、やめてぇぇぇぇ~~~~まだ死にたくないよぉ~」
言葉が通じる様になった。
真凛とネコは少しだけ驚いた顔をしたがすぐに元に戻った。
そして、そこに居る全ての者にスキルの効果が広まる。
『あははははっ 真凛よ、苛めたるなよw』
ネコが捕まえたのは、地球で生息している猫の様で、尻尾が2本もある異様な姿をしていた。
見た目は猫なのに柴犬くらいの大きさもあり、胴は長く手足も長く目は離れていて、猫の様で猫とは違う異質な生き物。
『すまぬが少し話をしたいのだがな』
その時、森の奥の方からゾロゾロと小動物たちが徒党を組んでこちらに近づいて来る。
ラグレアも真凛も一応戦闘態勢を取るが、ネコは少し浮いて様子を見ている。
「お、おまえらは何もんじゃ?俺らを食料にしに来た侵略者かっ!」
「ちゃ、ちゃうよぉ~ さっきのは冗談だってば~」
「ほっほっほ~真凛よ、ちょいと悪乗りしすぎたよのぉ~w」
「ワシがここらの長老のゴゥオクと言う。
皆からはヌシとか親父とか呼ばれとる・・・
まぁ話を聞こうか?」
『おぅすまないのぉ~
俺はラグレアと言う他の星から流れて来た者だっ!
おまえらを喰うつもりも無ければ蹂躙しに来た訳でも無い。
次元の狭間を彷徨っているうちにここに着いただけじゃ。
だからここの情報を色々と聞かせて欲しいって事だけなんやがな』
「・・・ ・・・」
「そ、そんなウソに簡単に、だ、騙されると思うなよっ!」
「・・・ わ、私は?どうなるのぉ~?・・・」
「あっw ごめんごめんw 話が聞きたかっただけだから、本当にごめんね♪」
真凛が可愛く謝り開放するが、微笑み返す者は皆無だった。
皆一様に恐怖を隠した顔で現況を見守っている。
「それではおぬしらはこの大地を侵略しに来た奴らでは無いと?」
『あぁそれは嘘では無いぞっ!
俺らはただ単に自分らの星に帰還するための情報を集めとるだけじゃ』
「・・・」
「・・・」
「ん~… まぁそれを今すぐに信用する訳にはいかんが…」
「でも親父さん、この人らとんでもなく強いステータスを持ってますよ…」
歳行った小動物の長老は、しばし思案しているようだ。
「・・・」
「・・・」
長い沈黙が続く。
「・・・」
「・・・」
「そう言えば、リーさんとこのウェイズさんって、ここの人らに似てるね」
沈黙を破るように真凛が言葉を落とす。
『そうやのぉ、佐助の眷属のウェイズにそっくりやな』
ラグレアはあまり関りは薄かったが、リーの眷属の佐助の眷属、黒猫のウェイズを思いだす。
「んっ?ウェ家の話かっ? おぬしらの知り合いにウェ家の者が居るのか?」
『「ウ、ウェ家っ?」』
「我らの種族の家名だよ。
我らはゴゥ家とサァ家とマァ家の一族の集まりだ。
そしてその尻尾の太い縞模様の奴らはナヌ属の集団だ」
ナヌ属は、地球で言えばジリスのような姿や大きさと模様であった。
その他にも、兎の様な顔をしたネズミの様な生き物が少し向かうからこちらを見ている。
背中から蝙蝠みたいな羽を生やしてるゴブリンに見える奴も離れた所からこちらを窺っている。
他にも、気配探知で調べていると数種族があちこちに隠れているようだ。
「???じゃぁウェイズさんは ウェ・イズって名前な訳ぇ~?w」
『あははっ、そりゃ知らんかったわいw』
(見た感じじゃ悪い奴らには見えんのぉ・・・)
長老は意を決し、ラグレア達を受け入れる事にした。




