次元の狭間 狩りは楽しい!
「炎よ、私の拳に纏いつけ~」
シーン
「火の聖霊よ、我が手の上に顕現せよ~」
シーン
「・・・」
『・・・』
「烈火の炎よ、炎八竜よっ我の攻撃を助ける事を願うっ!」
シーン
「あぁ~ん、あっかんや~ん・・・」
『ま、まぁ頑張れや・・・』
「い、色々とやってみてるうちに、な、な、何とかなるじゃろうて・・・」
「・・・」
『ちょ、ちょっと俺は異次元の調査に行って来るわ・・・』
ラグレアはそう言って狩場を後にして、ゲートから異次元に出て行った。
「真凛よ、まずは自分の手に火を灯してみな、それは簡単じゃろ?」
真凛は元々持っている生活魔法の熾火を唱えた。
掌の上に小さな灯が灯った。
「そこからじゃな。火球を覚えた時はそれを投げるイメージじゃろうて?」
「うん、火球は比較的簡単に覚えられたよ」
「んじゃ次の段階じゃな・・・ どうしたもんじゃろ?」
「この火が、私の攻撃に加担するのがまったくイメージできないの・・・」
「んじゃ~その火が真凛の全身に纏わりつくようにイメージ出来るかの?」
「火を纏うの?熱そぅ・・・
そう言や、戦場の砦に居た弓使いの人が、全身火に包まれて火の矢を撃ってたのは見たよ」
「《ネコ》じゃ~それをイメージしてやってみようか」
真凛は目を瞑り、戸弩力雅史が使っていた火を纏う姿を想い出しイメージを膨らませる。
暫くすると、真凛の掌の上の火は、徐々に全身に広がっていく。
「熱っ! く無いやん・・・」
「そりゃ自分の火で自分が焼かれたら話にならんじゃろw」
真凛は徐々に身体全体に広がり全身に纏う火を大きくしていった。
囂々と燃え盛る真凛の身体
[火纏]を覚えた。
「今度はその火を、腕先や足元に集約させてみたら良いんじゃないかの?」
真凛は言われた通りにやってみる。
拳に火勢が集まって来る。
足先に火が集約されて纏まって来る。
「来いっ!」
真凛の思惑通りに拳に火が纏い、足元にも火が纏う。
全身を纏っていた火よりも、密度の濃い火が手足に集まって来ている。
「後はそれを攻撃に転換すれば良いんじゃないかの?」
真凛は軽く頷き、シャドーを始めた。
ボクシングの様に、火が纏った拳を振るう。
「・・・」
火が纏った蹴り足を高く上げたり回し蹴りをしたりする。
「・・・」
シャド―のスピードがドンドンと上がっていく。
「ほぉ~こりゃ凄いよのぉ~」
「うんっなんか攻撃のスピードもとんでもなく早くなってるの・・・」
「良い事じゃないか?何をそんなに憂いておる?」
「コ、コントロールが難しいし、制御しきれてない・・・」
(ヒュン)
「あっ!」
「んっ?」
「・・・」
「火殴っ!」「火脚っ!」
真凛は[魔法を纏う格闘者]の称号を得た。
真凛は[魔法闘技]を覚えた。
「あぁ~ゴブリンを殴ってみたいぃ~」
「もうポイントが無いのかのぉ?しかし、サイコな発言じゃぞw」
「うん、もうポイントが無くなったから、時間待ちだねw」
「まぁワシがまだ持っとるから出しても良いんじゃが、次の段階に行こうか?」
「次っ?」
「せっかく火の攻撃を覚えたんじゃから、次は水の攻撃を覚えれば良いんじゃないか?」
「水って攻撃になるんでしょうか?なんか弱そうだけどw」
「おいおいw 水は圧縮すればダイヤモンドでも切れるんじゃぞ?」
「そういや石を水で切ってるのテレビで見た事あるわ~」
「おヌシの持つ水投槍とか、結構貫通力があるんじゃないかの?」
「・・・」
真凛は水を全身に纏う事を覚えた。
そして、水をまとわす攻撃も覚えていった。
「んじゃ~もう20分もせんうちに再起するけど、50ポイントあるから2体出すぞ」
「お願いしま~す」
ネコはレベル19になっているが、覚えた攻撃は5レべ上くらいならいけそうな気がしていた。
真凛はレベル21だから、レベル25くらいならいけそうだなと思っている。
「レベル25を2体出すぞ、無理そうなら逃げ回れよっ」
ネコは爪攻撃でHPを削り、駄目なら牙攻撃でトドメを刺す計画だ。
「掻爪っ!」
先ほどは一撃で倒せたが、今度は上手く躱され、少し削れただけだった。
(これは何度か連続で攻撃しないとあかんみたいじゃの)
「厭牙っ!」
ゴブリンは両手で厭牙のアゴを押し戻し、致命傷を避けた。
だが、片手に強い裂傷を受ける。
(ほぉ~これもこいつは避け切るか・・・)
いくら避けたとは言え、空中から無傷で攻撃できるネコには到底敵わなかった。
ゴブリンは暫く攻撃を受けてるうちにユックリと沈んでいった。
「さすがはネコさんねっw」
真凛は新しく覚えた火纏と水纏を色々と試し打ちし、案外あっさりとゴブリンを倒していた。
「なんじゃ?生意気なw ワシよりも早く倒しよってw」
「えへへへっ♪」
「ま~ワシらもやっとそれなりになってきたっちゅうこっちゃなw」
(ん~ここは止まってるのか動いてるのかすらわからんの~)
ラグレアは異空間住居からまた次元の狭間に出て来て、微かな望みを繋ぐために様子を見ながら、何でも良いから情報を得たいとここに来ている。
真凛とネコとの生活も異空間住居と異次元倉庫が有る為、かなり快適に暮らせると言うのは分っているのだが、やはり、リーと奈留に逢いたい気持ちは消えない。
2人の子供の成長も目の前で見ていたかった。
(ここに居ると俺自身の時間も止まってるようだが、このまま歳も取らんのかな?)
ラグレアは暫く瞑想に耽る。




