次元の狭間 前進
『あぁ、あったあった!真凛、こんなのどうだ?』
「凄いけど、2人と1匹ですよwあまりにも広すぎますw」
ラグレアが真凛に見せたのは、中世っぽい大きな石創りのお城だった。
その大きさは、外壁も入れればこの空間には収まり切れないだろう。
『まぁ2000ポイントも必要だから買えなかったけどなw』
「買うんですかwまぁポイント払って手に入れるんだから買うで間違いないかっw」
『ん~これならどうだ?』
それは芦屋の六麓荘に建ってる様な大豪邸だった。
鉄筋鉄骨2階建て18LLLDDDKKKK、トイレは12カ所、お風呂も4カ所、洗面所は大小入れて8個も完備されているうえに、納戸が5つ、ウォークインクローゼットが6つにシューズクローゼットが3つ、リネン室が2つ、庭には25mと10mのプールが二つあり、バーベキュースペースや奥には露天風呂もある。
値段は800ポイント。
「夢の御殿ですねw ところで、"モンスターの狩場"って項目を見つけたんだけど」
『ほぉ~それは何ポイントくらいするんだ?』
「狩場自体は50ポイントで、モンスターを出すのにまたポイントが掛かります。
レベル1のゴブリンで1ポイント、レベルが1上がるごとに1ポイント追加ですね」
『・・・ 住居も欲しいが、その狩場は魅力的だな』
「ここでしばらく暮らすなら、何か出来ないと退屈で死ねますねw」
『ゴブリン以外は居ないのか?』
「いえ、かなりの種類のモンスターが書かれてますよ」
『武器が無いから魔法頼りになってしまうが、それは仕方ないか』
「この膨大なリストの中に武器とか探せばあるかも知れませんねw」
『まぁまずは寝れる処を作らないとな・・・
真凛はどれくらいのポイントがあるんだ?』
「ん~これかな?180ポイントです」
『今のレベルは18か?』
「はい、そうです」
『ん~やっぱり1レベルで10ポイントって事かな』
「ラグレアさんはレベルいくつで何ポイント持ってるんですか?」
ラグレアはパネルをステータス画面に戻し、もう一度確認する。
『さっき12ポイントで芝生を植えたから、今はレベル33で318ポイントあるぞ』
「それは凄いっ!流石ですね~」
ラグレアはステータス画面を眺めていると、鑑定のスキルを持っている事を思い出す。
一々真凛に聞かなくても、鑑定を使えば分かったのにと苦笑いする。
そしてまたリストに目を通す。
『おっ?これくらいが適当な感じだな、値段も290ポイントと手頃だしなっ』
真凛はラグレアのパネルを覗き込み、その家を眺めて言った。
「あぁこれは良い物件ですねw」
6LDKにトイレ3か所、洗面所2カ所、大きな岩風呂と1820のユニットバスがある少し豪奢な家。
『2階に2部屋と洗面トイレ、1階に4部屋と広めのリビング、ダイニングキッチン』
「少し広すぎるけど、それくらいでも良いですね」
『それならこっちはどうだ?』
2階に4部屋、玄関入ってすぐに大きなリビング、横に6畳ほどのダイニングに3畳ほどのキッチン。
石英の大理石風呂に広いトイレに広い洗面所。
外観も、異世界転生物に出て来るようなとんがり屋根のウロコ壁。
異人館のうろこの家のようだ。
屋根裏部屋まで完備されたファンタジーな物件だった。
「あはは♪これは愛の巣って感じじゃないですかぁ?w」
『んじゃぁこれにしようかw』
2人は半日もの間、瞑想に耽るような時間を過ごしたために、今やる事が有るのが少し楽しい。
そして今はまだ先の事はあまり考えないようにしている。
否が応でもその事態には直面しないといけない時期は来る。
それは遠い未来では無く、すぐ先の事であろう。
グゥゥゥ~
「あっ、ご、ごめんなさい・・・」
『あははっ 俺も腹が減ってきたがどうしたもんだろうなぁ・・・』
そう言いながら、ラグレアはふっと空間倉庫の事を思い出す。
『そういや、異次元倉庫に何か入ってたはずだが』
空間倉庫の中身を調べると、武器も有るし食料も入っている。
『これはっ!』
なんと、空間倉庫の中には大量のコンビニおにぎりや惣菜、唐揚げや焼き鳥、その他、レジ近くに並んでいるようなジャンクフードっぽいものが結構な種類と数が入っている。
武器も、槍と大剣が数本、短剣や斧、鉈などが入っていた。
『あぁやはりちゃんと確認するべきだったな・・・』
ラグレアは空間倉庫の中身にまったく関心が無かった。
ただ便利に物が入れられるスキルだとの認識しかなかった。
武器や食料以外にも、文房具やボンド、ハサミやティッシュに同じ種類ばかりの雑誌、そして洗剤。
そこら辺にあった物を手当たり次第に放り込んだのだろう。
使用用途も考えずに入れただけであるのが良くわかる。
『ほれ、おにぎりだ』
ラグレアから手渡されたおにぎりを、真凛は袋から出してノリを巻いてかぶりついた。
『まずは家を作るぞ』
「はひっ、んぐっ」
最後にラグレアが真凛に見せた、うろこの家の様なとんがり屋根の家にした。
ラグレアの立つその前にリストで見た家が魔法の様に建っていく。
敷地から始まり土台が出来上がり、玄関が作られる。
外壁が立ち上がり、屋根が出来上がる。
「す、すごいですねぇ~」
『どう言う原理でこんなものが出来上がっていくんだろうな・・・」
「ファンタジーですよw
私たちが知っている事なんて、森羅万象のほんの1%も無い位なんだと最近想いだしました」
そんな話をしていると、ネコがラグレアの足元に寄りスリスリと頭を擦り付けて来る。
『おまえも何か食うか?』
空間倉庫の中のドッグフードとキャットフードを取り出し袋を開けてみる。
ネコは袋に顔を突っ込み、ボリボリとペットフードを齧る。
『美味いか?w』
「・・・ 味は良いけど、喉が渇くわいっ」
『ウオォ~?』
いきなりネコがしゃべった。
「ね~こがしゃべる?そ~んな馬鹿な~」




