六アイ戦争 増援
「こ、こいつは・・・」
「あぁ驚いたな、こんな奴が存在するとはな・・・」
トオルとマグナが相対するのは、杉之原晴彦とオーククイーンのウルリカ・テラジアーナ。
そして、幹部ハイオークの薄黄緑色のカラードオークとブルーオークのトブラ達は、戸弩力組とリーと五十惟が組んだ連合軍に挑んでいる。
「ほぉ~おまえはなかなかやるなぁwさすがはトップだけはあるやんw」
晴彦の操る森林魔法にトオルもマグナも反撃の糸口さえ見いだせない。
そこにオーククイーンの激しい攻撃やブルーオークの間接攻撃が飛んでくる。
余裕を見せる晴彦に一矢報いたいが、反撃に打って出られない。
(俺の魔法ならこいつの魔法に相性が良いはずなのに・・・)
木は火に弱い。
それは森羅万象の理である。
だが火を使えなければ、木が優勢を保つのもまた森羅万象の理であろう。
横では五十惟とリーが連携して攻守に強さを見せつける。
「こいつらもとんでもなく強いぞw」
五十惟とリーの攻撃は、さすがのカラードオークでも簡単には攻略が出来ない。
攻略が出来ないだけで、ダメージを受けている訳では無い。
(五十惟の方がステは高いけど、この子は戦闘に慣れていないか…)
五十惟は玆の魔法を交えつつ、黒巫女装束と黒金と言う名の錫杖を振り回して戦うが、その攻撃はほとんど躱されてしまう。
ただ、当たればその威力は大きい。
リーは自分も戦いつつ、戸弩力組のサポートに力を入れている。
忍術の分身や超速を駆使し、敵に軽くダメージを入れながら、陽炎と言う忍術治癒スキルで負傷者を癒していく。
それを横目で見ながら五十惟は学習していく。
「私は浮いた方が良いねっ!風纏っ!黔気っ!」
トオルから貰った風纏のスキルをまとい、玆の魔法の治癒魔法を掛けながら攻撃を仕掛けていく。
空中に浮かんだことで視野が広がる。
少し離れた所で奮闘している美凪の戦闘も見られる。
(美凪は凄い・・・ そっか~あんな風に立ち回れば避けられにくいなあ)
五十惟は美凪の戦闘もチラチラと見ながら学習していく。
戸弩力組もリーと五十惟のおかげで戦いやすくなっている。
だが、敵を殲滅出来るほどの戦力差は無かった。
リーが先陣を切れば、一人でもそれなりの数は倒せるだろうが、その間に味方がドンドン減っていくだろう事は少し考えれば分かる事だった。
左奥に流れて行ったハイオークの群れを追いかけたいが、目の前のカラードオーク達に足止めされている形になってしまっている。
「もうあれこれ考えてる暇はないっ!炎の戦闘領域」
炎のドームがオーク軍を包み込み多大なダメージを与える。
「徳さん、続くね 炎の封鎖領域」
加奈子の炎のドームが横に並び、そこにいるオークを蹂躙していく。
暴れん坊の麗菜と、明日桜たちが炎のドームに飛び込もうとしていたが、それは一瞬のうちに起こった。
「あなた達は凄いね~ 冷渦冷嵐」
次世代のエリートオークの中で、唯一この戦いに参加している黄色味の強い肌をしているゴールドオークのキャンペが強い冷気の嵐を巻き起こし、徳太郎の火炎ドームを吹き飛ばす。
「なっ?・・・」
「えっ?・・・」
「ふふふ、驚いた?氷粒爆風」
加奈子の絶大な炎のドームが、氷の爆風で跡形もなく消し去られた。
「すごぉ~ 完全に消されちゃった~」
麗菜は物思う。
「ウーちゃん、目を覚ましてぇ~」
美凪の横で固まっている、闇落ちしかけのウェイズに呼びかける。
ウェイズは葛藤している。
怒りに任せて闇落ちするほどに感情を高ぶらせたが、今、横で戦っている美凪の声が心に響く。
意識が朦朧としているが、このままでは破滅に向かうのはわかっている。
その葛藤が身体の硬直を呼び起こし、今動けなくなっていた。
「おいおいwよそ見してる余裕なんてあるのかい?」
「一気に反撃するでぇ~」
そう言いつつも、美凪の剣戦に反撃する事は出来なかった。
(まずいなぁ・・・このままじゃジリ貧だ・・・)
頼みの綱のトオルとマグナは、ボスらしい男に足止めされている。
自身の契約精霊は、精霊王のヘスティア共々ボスらしき女と大狼に足止めされている。
リーも五十惟も自分自身も目の前の敵で精いっぱいだった。
藤浜武人の声が聞こえなくなってきている。
佐助の存在が感じられない・・・
イチと藤子の姿が見えない・・・
ハーレム王を目指しているジャックも眷属と共に後ろに下がって倒れている・・・
桃豹と黒豹と大耳狐は近くでボロボロになりながらも戦っている・・・
それ以外の、仲間になった獣人のほとんどが見当たらない・・・
Ericaの軍勢は唯一オークを蹂躙している。
「レド~無理はすんな~」
「美凪の子分として恥ずかしい戦いは出来んやろ~」
「だなw恩義に報いるためにもここは全力で行くぞっ!」
「おぉ~!」
レドたちは美凪の眷属になった事で心身ともに充実していた。
南側のスロープから降りてきた全てのオーク軍が戦場に入った後、そちら側から回り込んで退路を断っている。
だが、そこでも起こる戦闘にレド軍6人は、数に勝るオーク軍に少々苦戦していた。
「マグナ、俺はどうなっても死なないけど、おまえは限りある命やからな?」
「何が言いたいん?」
「危うくなったらすぐに撤退する事なっ」
「あははっトオルは面白い事言うなぁw」
「いやっおまえには死んでほしくないからな…」
「うん、ありがと。でもね、もう今が危うい時じゃないか?(笑)」
マグナが周りをキョロキョロと見回す素振りをする。
トオルも同様に戦場全体を見渡すと、もう敗戦の色濃厚に、味方が弱って敵が勢力を伸ばしていた。
「あははははっ ほんまやな~w」
「終わったなぁ~(笑)」
2人は敵の総大将、晴彦に苦戦を強いられ他の救済に回れなかった。
それは、敗戦のきっかけにはなるだろう。
「おいっ・・・そっちはまだいけそうか?」
藤浜武人が獣人組のヤモリ人オグズに力無い言葉で問いかけた。
「俺はもうちょっとだけやろうなw」
「のぉ~ウケはまだいけそうか?俺はもうあかんわw」
「はははっ、もう限界やわ・・・」
グホッゴホッ
大きな刀傷を付けられて倒れている浦山椎勿が、口から吐血し身体が痙攣する。
「あぁ椎勿、俺らもすぐにそっちに行くわな・・・」
「大海、おまえはここから離脱して生き延びろっ!」
「武人さん、そう言われて私がここから去るとでも思ってるんですか?w」
「そうですよ、武人さんを一人で逝かしてどうするんですかw」
「もうちょっと頑張りましょうっ!」
「おぃっおまえらは何で戻って来たんや・・・」
「逝く時はみんな一緒ですよw」
しばしの休憩を取り、藤浜セブンズが戻って来た。
だからと言ってもう敗戦は目に見えていた。
戦場に居る悪魔軍、天使軍、魔獣軍の皆が戦いを諦めかけた・・・
その時
ウォオオオオオオオオオ~
ドリャァァァァァァァァ~
オラオラァ~ ウリャウリャウリャ~~~
ドドドドドドドドド
北側の七番街方面から凄い勢いでやって来る軍勢。
「すまん~~~待たせたなぁ~~~」
「武人さん、ごめんなさい、お待たせしました~」
背後からも勢いよく散開しながら軍勢が押し寄せる。
「イチさん、間に合ったみたいですよっ! みなさ~んっ!大丈夫ですか~?」
「リーさ~ん、お待たせしました~~~」
そこにはイノシシ顔のボアオークの大軍勢を引き連れて、ポイと佐助が北側から、イチと藤子が西側から、満面の笑みで駆け付けた。
その数、おおよそ500。




