六アイ戦争 戦況
闇落ちしかけているウェイズは、怒涛の勢いでオーク軍をなぎ倒していく。
理性も何もなく、只々暴れまくるだけだ。
まるで麗菜の様に・・・
相手にするなと言われているオーク軍は、ウェイズの暴挙を避けて通る。
新規参入してきたハイオークも、ウェイズを避けて奥の左翼戦場へと流れて行った。
戦う相手が居なくなってウロウロと索敵をしている黒猫、いや異形のキャスパリーグ。
上空からは、重力操作を使い晴彦がウルリカとグルコを抱えゆっくりと降下して来る。
その横には重量操作を駆使し陽菜が同じくゆっくりと降りて来る。
ウェイズは瞬時に、そして迷わずに晴彦に襲い掛かった。
この戦闘の首謀者はこいつだとばかりに。
もう少しで着地という所で、ウルリカとグルコは晴彦の腕から軽く飛び降りウェイズに襲いかかる。
ターゲットになった晴彦は、襲い掛かってくるウェイズの鼻っ面に裏拳を一発見舞う。
陽菜は着地と同時にダッシュで自分の精霊を倒したヘスティアとイフリートに向かった。
3人から攻撃を受けたウェイズはよろめき後ずさり、晴彦から受けた攻撃で口元から血が流れ滴り落ちる。
ウェイズはその赤き血を前足でぬぐいジッと見つめ、ペロリと舌舐め擦りをし、踵を返し晴彦に爪を大きく振り下ろした。
ザシュッ!
軽く避けた晴彦だったが、ウェイズの獣爪は後ろに避難していたオークを捉える。
今までの爪攻撃では致命傷を与える事は難しかったが、今は簡単に相手の命を刈り取った。
攻撃を受けたオークは大量に血を流しその場に倒れ込む。
「おいおいwおまえの敵はこっちやろうがぁ~w」
「武装っ!魔神戦装っ! ドゥンケルッ!」
ウェイズを正気に戻そうと駆け寄ってきた美凪だったが、敵の本陣が降りてきた事でターゲットをそちらに変更して勝負を挑む。
「こいつとは戦ってみたかったんや~ こいやっ!」
「ライラ―行くよ~」
陽菜は自分の眷属である銀狼のライラの背に飛び乗り、炎の精霊神と炎の魔神に敵意を向け戦いを挑む。
「ほ~ほっほっほ! なかなか強者が挑んできおったわいっw」
「ふっ!余裕をかましてる暇があるんかぁ~?
聖霊装っ!」
陽菜のユニークスキルである精霊術で、精霊の力を借りて全身に霊気を纏う。
その効果は背乗している眷属にまで及び、ライラも霊気に覆いつくされる。
「ほれよっ焱弾っとっ!」
ヘスティアは軽く焱の弾を投げつけた。
ドヒュンッ!
ドゴーンッ!
焱の弾は陽菜にまともに着弾した。
そして陽菜は後方に吹き飛ばされ、かなりのダメージを負う。
(しまった・・・ まさかこれほどの威力だとは・・・)
陽菜は火炎の耐性も高く、炎弾くらいならほぼノーダメージで受け止められるはずだった。
「ふっさすがはヘスティア!炎渦っ!」
負けじとイフリートも炎の竜巻をいくつも巻き起こす。
「ぐっ!こいつ・・・」
「ライラ―!ネヴァー!離脱しろっ!」
金狼ネヴァと銀狼ライラも火炎耐性は高い方だが、精霊神や精霊魔人の放つ炎の攻撃は格段の威力を伴っているので、直撃は避ける様に離散した。
「これはこれはw 主よ、ワシらも離脱するぞっ!」
「了解、クレア~阿左虎~下がれっ!」
黒虎の吽右虎とラグレアの息子、王龍鬼のカントが、味方のヘスティアとイフリートの絶大な炎の攻撃を躱すために後ろに下がる。
「もう~あついあついっ!やけどするやん・・・」
「まぁ一旦砦まで下がりましょう」
白虎の阿左虎が、姫龍鬼と進化したラグレアの娘クレアを背に乗せ、一度後退する。
「ちょ~っと舐めてたね~」
「ふふふっ本気でいかないと駄目な相手だよね」
「おいおいw本気でいっても勝てるかどうかって位の強者ぞw」
そう言いつつも、3人はとても楽しそうな表情を崩さない。
根っからの戦闘狂なんだろう。
ガキンッ!
ドスンッ!
ザシュツ!
美凪の攻撃を今は躱すだけが精一杯の、ダークオークのグルコ・サンサスとレッドオークのアガメ。
だが、黒いオークのその顔には笑みが浮かんでいる。
「こらっ!なにがおかしい?」
頭上に大剣ドゥンケルを押し当て、それを鉄槍で受け止めるグルコに問いかける。
「強者と戦うのは楽しいやろうがぁw」
「ふざけんなっ!ちょっとでも気を抜いたら死ぬのは俺らだぞっ!」
「晴彦や陽菜には手も足も出なかったが、こいつなら良い勝負が出来るやろうがw」
「まぁ確かに・・・ あいつらほどの脅威は感じんなっ!」
(くっ、舐めやがってぇ~ガタガタ言わしたるっ!)
だが美凪の全ての攻撃は、2人のオークに大きなダメージを与える事が出来ずにいた。
その反面、激しい美凪の攻撃に、2人は反撃に転じる事も出来ないでいる。
「ふっ俺ら二人で、こいつ一人と良い勝負ってか?(笑)」
「何を言ってる?おまえも余裕が出て来て凄く楽しそうだぞ?(笑)」
(くそっ!こいつらだけに関わっているのは得策では無いが、無性に腹が立つっ!)
「大丈夫か?大海~おまえら~っ!」
急に増えて来たハイオークの幹部クラスに、疲弊している様子の仲間が次々に大きなダメージを負う。
藤浜セブンズの7人もかなりダメージを負い、応援に来ていた瑛伖と7人の眷属もかなり疲弊している。
ここ左翼では、ラグレアの眷属であるヤモリ人のオグズとハクビシンのハナシロが先頭で戦っていた。
「くそ~また新たに強い奴らが来やがった・・・」
「ラグレアさんの行方を確かめたいのに・・・」
周りでは、動けなくなった獣人や人間があちらこちらで倒れていたり、しゃがみ込んでいる。
こちらの戦力はドンドン減っていっているのに、相手のオーク軍は益々戦力が増えていく。
「あかんのぉ~もうここまでかも知れんな・・・」
左翼での主力を担っていた3番隊レドの部下、ガビアルナイトのウケがポツリとつぶやいた。
「せめてレドさんだけでも生き延びて欲しいな・・・」
同じく3番隊主力組のリザードナイトのリプルが部隊長のレドの安否を気遣う。
3番隊はまだ欠落は無いものの、その武器は刃こぼれして只の鉄の塊りと化している。
体力も気力も限界に近づき、戦う事への執着心までも薄れてきていた。
「そっかーウケさんもここで終わりだろうと考えてるんやな~」
マグナ軍で唯一人間の部隊長である浦山椎勿がボソッと言葉を吐き出した。
「あぁもう力が入らんし、刀は斬れんしなぁw」
「ほんと、もう笑いしか出ないよね~w」
浦山の受け持つ4番隊の残りの6人はもうすでに戦線離脱していた。
「もう俺の部隊も動ける奴は居ないし、俺もこのまま逝くんやろうか」
「まぁ~最後の足掻きで出来るだけ多くの敵を倒してから逝くかw」
「マグナさんはどうなってるやろうなぁ~」
「最後に、ありがとうって言いたかったなぁ~」
浦山たち4番隊は、人間に裏切られたり囮にされたり虐げられて放り出された様な連中を、マグナが拾って育てた部隊だった。
ザシュッ!
ハイオークの斬り出した刀剣が浦山の上半身を切り裂いた。
「あっしまった・・・」
「し、椎勿ぁ~」
「う、浦山~!」
「ウ、ウケさん、リプルさん、ふっ… お先にねぇ~」
浦山はそう言ってその場に沈み込んだ。
注1:『アーサー王伝説』の外伝に登場する幻獣。 巨大な猫の姿をしており、獰猛かつ凶悪な性質を持つ。 アーサー王にさえ重傷を与えて苦戦させたという、アーサー王伝説でも屈指の強豪。
出典:ピクシブ百科事典




