六アイ戦争 父の消失
「どれ、少し手伝おうかの~ 水龍出ろ!次いで水神龍!」
ラグレアの召喚スキルで、水龍と水神龍を呼び出した。
「と、ととさま、かっこいぃ~♪」
「父様、すごいですっ!」
「ん~私も精霊か魔物を召喚しようかなぁ~」
「ん?リーさんは魔獣と蟲を使役出来るんじゃなかったっけ?」
「使役と召喚は違うと思うんだけどw」
「うん、召喚はカッコイイと思う」
それを聞いていた砦の上のトオルがカントに問いかける。
「おいっカント!精霊と魔獣とどっちが好きだ?」
「えっ?あっキングさん。
ん~父様が水龍使いなので、僕も魔獣が好きかな?」
見上げた先に、トオルがにこやかにこちらを見下ろしていた。
「そっかー ほいっ」
トオルは自分のスキルの中から、召喚術 と言うスキルをコピーして宝珠にし、カントに放り投げた。
「えっえっ?キングさん?」
「ト、トオルー良いのか?」
「あぁ(笑) 良い子を召喚できるといいなー」
トオルの好意でラグレアの息子、カントに召喚のスキル宝珠を投げ渡した。
リーはその結果如何では、自分も召喚術か精霊術を取る事を決めている。
(会話が出来る精霊も良いけど、魔獣や魔物も捨てがたいなぁw)
「いいなぁいいなぁカントだけいいなぁ~」
「クレアだっけ?おまえにはそのネコが居るじゃないか?欲張りだな(笑)」
「ぶぅ~」
「あははははっ可愛い奴めっw んじゃこれをやるよ」
トオルは優しい微笑みを浮かべながら、クレアに宝珠を1つ投げ渡した。
「こ、これは?」
クレアは、トオルに言われる通りにその宝珠を取り込み、自身のスキルとして吸収するのだった。
「おへや~?」
「そうそう、それはね、こんな風に出来るんだよ」
リーはそう言って自分の個別空間Ⓢにクレアと奈留を誘い入れた。
「うわぁ~キングさんは色んなものを持ってるんだぁ~」
「リーママ、おトイレとおふろがあるよー」
2人は初めて入った個別空間に驚きを隠せない。
「クレアのお部屋も改造しようねー」
個別空間の中でクレアの個別空間を開き、3人で中に入る。
「こんなもんかな?」
クレアのお部屋は、シャワールームに狭めのトイレ、広めに取った室内。
用足しや入浴に重きを置かず、部屋でくつろげるように考えた。
「リーママ~ありがとぉ~」
クレアからの感謝の気持ちを受け取って、リー達3人は個別空間から出て行った。
一方外では
精霊たちが大魔法合戦を行なっているのを横に見て、ラグレア家族がカントに注目する。
「父さん、キングさん、いきます・・・
我が想いに応え、現世に顕現せよっ!
サモニングッ!」
カントの目の前に空間の揺らぎが現れる。
だが、揺らぎからは何も出てこない。
「ん?どうしたんじゃ?」
ラグレアが、何も起こらない揺らぎに不思議に思い近づこうとするが、空間が動いた事を敏感に察知していた佐助の眷属ウェイズが、その行動を見ていて危険を感じ取り、離れた場所から大声を出しながら空中を飛び、風のように疾走して来る。
「だめだ~~~ 今のその揺らぎに触れると引きずり込まれるぞぉ~」
その声は、戦場の喧騒にかき消されてラグレア達には届かなかった・・・
「おっ?おっ?おいおい~? くっそ~ ぐあぁぁ~」
ラグレアが空間の歪に触れた瞬間にその身体が引きずり込まれる。
それを見ていた二人の嫁は、ラグレアを助けようと手を差し出し服を掴もうとするが
届かない・・・
「いやぁぁぁぁぁぁ~~~」
「ラ、ラグレア殿ぉ~~~」
必死に空間の歪から遁れようと足掻くラグレアが"藁をも掴む"気持ちで、とっさにその手が掴んだのは、空中に浮遊し傍に居たクレアの眷属のガリレオキャットと、砦に避難しようと偶々通りがかった五十惟の眷属たちで、女子会館の優柔不断組の中の1人の女だった。
「なっ?えっ?い、いやぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~」
「ミギャァァァァ~~~」
その悲鳴を最後に、ガリレオキャットとラグレア達は次元の歪に飲み込まれていった。
「あっあっあっ・・・・・」
「と、ととさまぁ~~~」
「ラ、ラグレア・・・・・」
「・ ・ ・ ・ ・ 」
「えっ?・・・ ・・・」
奈留とリーはその場でへたり込み、クレアとカントはその場で立ち尽くす。
女子会館の優柔不断組は、何が起こったのか理解が追いつかず、只々その場に立ち尽くす。
「くっそ~間に合わなかったか・・・」
黒猫ウェイズが到着した時には、もうすでにラグレアは歪に飲み込まれた後だった。
その時、空間の歪がユラユラと揺れ出して、ゆっくりと二つに分かれていく。
「おい、おまえら、呆けてないでそこから離れろっ!」
ウェイズの大声に、ハッとした4人は急いで歪から少し離れてその様子を見守った。
優柔不断組は駆け足でその場から離れ、一連の出来事を理解しようとクレアたちを見つめる。
二つに分かれた空間の一つの歪からは、白い大虎が現れた。
もう一つの歪からは黒い大虎が現れた。
「おぉ~!」
その2匹の大虎を見て感激するカントだが、父であるラグレアが消滅した事が、素直に喜べない気韻になってしまっている。
2体が現れると、その空間の歪は一瞬で消滅していった。
「わらわは毘沙門天が神使、左翼の阿左虎と申すっ」
「我は毘沙門天が神使、右翼の吽右虎なりっ」
「我が主よ、何故その様な暗い顔をしておる?」
二匹の神獣が、召喚された事に喜びを感じているのに、その召喚主が浮かない顔をしているのが解せなかった。
自分達では気に入らなかったのだろうか?とか思い悩む。
「おぉ~カントよ、大きな虎を二匹も召喚したのか~ 凄いなお前はw」
ラグレアが歪に取り込まれたのは、ほんの数秒程度の短い間だったために、トオルはその瞬間を見逃していた。
「キ、キングさーん、父さんが消えてしまったー」
「キングさ~ん、ととさまがぁ~~」
トオルは、大声で泣き出すクレアたちの言う事の意味が分からずに、リーの顔を見た。
その顔は、過去に見た事も無いほど落ち込み、今にも泣きそうな顔で縋る様にトオルに視線を送る。
隣では奈留がへたり込み、顔を両手で覆い、肩を大きく震わせている。
2匹の大虎は事情が掴めず、オロオロするばかりだ。
「キング、申し上げます」
「ん?ウェイズよ、なんでおまえがそこにいる?」
トオルは佐助のいる方を見たが、当の佐助は目の前の敵と対峙し、こちらには興味の色をまったく見せていない。
「キング、ラグレアさんは召喚の時に現れた空間の歪に触れてしまい、次元の狭間に飲み込まれたものだと思います」
トオルは洋路の顔を見たが、洋路は首を2度3度横に振り、自分にはわからない事をアピールした。
「ん~空間がこちらの世界と繋がる途中で歪に触れたんじゃろうな」
トオルはヘスティアの軽い説明を聞いて、砦の上から飛び降りた。
「キングさぁ~ん、ととさまをたすけてぇ~」
クレアが泣きながらトオルの胸に飛び込む。
「我が主のさらに上の最高位置に坐す大主よ、わらわは毘沙門天が神使、左翼、阿左虎と申す若輩者である」
「同じく我は、吽右虎であると申し上げる。
さて、件の我が主の父親であろう御方の所在に関してだが
我らが認知しておるすべてを語ろうぞ」
大虎は、ツラツラと語り始める。
不思議の森の手前では、精霊たちが大暴れをしている。
左右に分かれて、オーク軍と魔獣軍、悪魔軍、天使軍たちが生死を掛けた戦いを繰り広げていた。
新年明けましておめでとうございます。
今年もまた宜しくお願い致します。
六アイ戦争の前に、レッドゴブリンの末っ子ハノアの話を挟むつもりだったのが、何故か・・・
あれからの蒼ゴブリンキャリヤの話やサイコ軍団のその後とか、健斗と美咲と雷帝咲空とかの話も挟みつつ六アイ戦争から大神戸戦争に持っていきたかったのに(^^;
ちょっと誰かを異世界に飛ばしたかったので、話の矛盾を潰していったらこんな風になりましたw
サブキャラ的存在なハズが、思い入れが立ってしまったキャラが増えてきたので、な~んか主人公がちょっと霞んできています(笑)




