六アイ戦争 聖霊大戦争
「おいおい(笑)」
「あはは、なかなかやるね~」
「あぁ・・・数の優位性を過信しすぎたなっ」
ダークオークのグルコ・サンサスの分析が始まる。
「右翼の端に居るオークが善戦してるが、その中程では数で押してる事に気が抜けてるな。
中央は強者が集まってる所だから、苦戦も致し方ない。
左翼はもっと回り込んで、中核の砦を横や後ろから襲えば戦局も変化するだろうに…」
「そろそろハイオークを降ろすか?」
オークだけでも殲滅できるかと思っていたが、思いの他、赤ゴブリンの部隊が善戦してくる。
自軍のオークもそこそこの数が被害を受けているようだ。
その割に敵の被害が少ない様に思うのは勘違いでは無いはずだ。
「下っ端とは言え、やはりうちのオークが殺られるのは気分の良い物では無いなっ!」
オーク族のトップに居るオーククイーンのウルリカ・テラジアーナが憤慨している。
「レーシィ、そっちのハイオークも下に降ろしてくれんか?」
森の精霊のレーシィがコクリと頷き最大化していく。
ハイオークを地面に降ろしていく大精霊のその姿を、ジッと見ている奴が居た。
「爆炎っ!」
「おぉ~いきなりビックリするだろw」
「あの精霊が居なければ、あやつらは降りて来れまいてw」
炎の大世界の精霊神、ヘスティアが放った獄炎の魔法が森の精霊レーシィの腰から下を吹き飛ばした。
レーシィは振り向き、恨めしそうな顔でヘスティアを睨み、そのまま霧のように霧散して消えていった。
「くっそ~レーシィが殺られたっ!あのクソガキめ~
精霊召喚っ!我が意に従い顕現せよっ!」
「シルフィー!」
「オベロン!」
「ノーム!」
陽菜の召喚魔法で現れた、風の精霊シルフィー、大地の精霊ノーム、そして精霊王のオベロンをも召喚した。
「精霊たちよ、あの小さき精霊を叩き殺してくれっ!」
「了解したっ!」
3体の大精霊がヘスティアに向かって飛んで行く。
「おいっティア!なにやら凄い奴らがこっちに向かってるぞ?」
「ほっほ~なにやら懐かしい顔の奴もおるわいw」
「ヘスティア様、うちの子も出てもらいますか?」
「そうじゃの~妾一人じゃ持て余しそうじゃな」
「了解しました。 イフリートッ!」
美凪の身体に憑依していた炎の精霊魔神イフリートが、美凪の身体から湧き出る様に現れた。
少し離れた所でその気配を察知した掛井橋五十惟も自分の眷属の精霊王のアヴィアダルを呼び出す。
「アヴィー、なにやら強そうな精霊が襲って来るから応戦してくれないかな?」
「ほぉ~あちらにも精霊王がいるじゃない、久々に戦うんじゃない」
アヴィアダルは五十惟から離れ、頭上に大きなクジラを顕現し、相手の精霊に向けて闇の空間を押し広げていく。
「おいおいジャド、どうした?」
佐助の眷属精霊王、ジャド・ザハールが佐助の影からその身体を抜き出し現れた。
「アヴィアダルの闇の力に感化されちゃったんだろうね、僕も身体が震える」
暁光暁闇の世界から召喚された、知恵者、黒猫型のウェイズが答える。
「我が主よ、我も戦いに参戦してくるぞ、少し暇を持て余していた」
ジャドも夜闇の世界では一国の王であった。
そして、国は違えど同じ夜闇の世界の王同士であるアヴィアダルの参戦に刺激を受けたのは言うまでもない。
「すまないが少し精霊力を使うぞよ、消費が激しいが今の主なら問題なかろうて」
そう言って、主人の許可も得ずにジャドは戦闘隊形に身体を変えていく。
黒い一反木綿の様な薄っぺらい身体がムクムクと膨れ上がり、黒い騎士の姿に変身する。
その手には、赤黒く神秘の光を灯す魔剣が握られている。
「いざゆかんっ!」
「ウォール オブ ライトッ!」
精霊王のオベロンが、押し寄せる暗黒の空間を光の壁で受け止める。
「アヴィアダル、横から悪いが参戦するぞよ、闇刃~!」
佐助の眷属、ジャド・ザハールが、得意の暗黒物質を固めた刃を飛ばす。
「フフッそんなんじゃダメヨw 暴風~!」
風の精霊シルフィーが、飛んでくる暗黒の刃をメイストームで吹き飛ばす。
「ヘルヘイムの王たちよ、少し熱いぞw 怒炎塊!!」
炎の魔神イフリートが轟炎の塊りを敵にブチかます。
「熱いのは嫌いじゃ! 土砂降り~!」
土の精霊ノームの魔法が、炎の塊りの上空から降り注ぎ、その轟炎を消していく。
精霊達の戦いが始まると、そばに居たオークも魔獣軍も悪魔軍も全速力で逃げ離れていく。
その魔法合戦は、今まで見た事も無い壮絶な戦いで、巻き込まれるのは死を意味する。
一つ一つの攻撃や防御が、特上級や極上級の魔法ばかりだ。
「おもろくなってきおったぞw」
「さすがに上位の精霊達だなwまともに喰らったら俺でも死ぬかもな(笑)」
「キング―、突っ込んでみればどうですかぁ~w」
「おぉ~一回行ってみるか~w」
「キ、キングー 冗談でも行かないで下さいよ~」
美凪は、トオルが首を切り離しても死なない事を自分の眼で見ている。
一方、トオルが不死身になったとは聞いているが、万が一の事も有るのでリーは一応止める。
「ほぉ~!陽ちゃん、あっちの精霊は4体だぞw」
「ん~オベロンの奥さんでも呼ぶかw」
「はぁ~ こんな状況でもあんたらはホンマに楽しんでるよなぁw」
オーククイーンのウルリカ・テラジアーナは、晴陽コンビにあきれ返っている。




