探索前のひと時
事務室に戻ると、ちょうど五十惟が前組と交代でダンジョンに行く準備をしていた。
「五十惟、これからダンジョンかい?」
「あらっ、リーも武人もおかえり!
短時間交代してるから、これから2回目だよw」
「そっか~
そりゃそうと、五十惟~新しい子達をまた登録してくれるか?
まずは俺の直属の、この7人とジャックの新しい眷属の6人だな。
それと、この子らをどうするか、だな?
おい、おまえらはこれからどうすんねん?
とりま、ここで避難民として暮らすのは良いが、何か仕事しろよ」
「ん~・・・
彩有里、あんたらだけで2回目いけるか?」
五十惟は新人達の事があるから、ダンジョンよりも事務仕事の方を優先するつもりだ。
「そうですね、今日はどのみち10時半までって事だから、私も残りますよ」
事務方では、五十惟の右腕である 當間彩有里が自分も残ると言い出した。
それは五十惟にとってとても嬉しい事だ。
慕われている・・・
事務長として頑張ってる自分を褒めてやりたいとさえ思った。
勘違いでなければ良いが・・・
「武人、あんたらこれから潜るんやろ?この子ら任せてもえぇ~か?」
五十惟の眷属のセイラを始め数人の眷属と、自身の眷属の人狐のポイが居る。
「あぁ俺の大事な眷属も居る事だし、なんの問題も無いが・・・
またおまえだけに負担を掛けるのがちょっと心苦しい・・・」
「本当に五十惟にはいつもお世話かけまくって、申し訳ない・・・」
「あぁ~あぁ~べっちょないよw
今朝、散々キングに嫌味を言ってスッキリしたからw」
「あはははっ・・・」
「それと、おまえら9人の中で事務仕事の出来る奴はいるか?」
「こいつらは学生ばかりやから、そりゃ無理ちゃうか?」
「・・・」
「さよか・・・」
「まっまぁそれはこれから教えていくから、この子らはうちの預かりでえぇな?」
「あぁ頼むわ、仕事の量も増えたらしいから使えるようになってくれると良いな」
「私らの意志は無視なんですか?・・・」
「ハァ~ もう何度も何度もどうしたいのか聞いてるだろうがぁ~?」
「そうだぞ?武人は気が長いからおまえらは無事にここに居るって事を知れっ!
私ならもうほったらかしにするか、切り刻んでるぞっ!」
「私が口を挟むのはお門違いなのは分かっていますが・・・
あんたらグズグズしすぎなんじゃ!
武人さんに迷惑掛けんなやぁ~!」
「大した怪我もしとらんし、心に傷も負っとらんのに・・・」
「うちらを無視してノホホンとしてたくせに、何を言ってるんや・・・」
「ただ黙って尽いて来といて、いまさら何を・・・」
「決められたレールの上しか歩けないのに、権利ばかり主張するクソガキがっ!」
「ふざけた事言ってんなよ~ 武人さんに苦労かけんなっ!」
1人が口を挟むと、堰を切ったようにみんなが責め出した。
その根底にあるのは、自分たちの方が酷い目に合ってるのにと言う、ちょっと過去の事実。
この子らは、まだ他の男が生きている時に強姦された子も居るのかも知れないが、相手は人間だ。
ハーレムにも呼ばれず、食事の支度や雑用に追い回されていただろうが、然程大した事ではない。
一番平々凡々としているそんな奴らが、助けてくれようとしている人らに無関心の様な態度を取る続けている事に憤りを感じる。
「あんな、武人さんはあんたらの行く末を心配して言ってくれてるんやでぇ?
それは心の底から感謝せんとあかんのちゃうのぉ?
自分達が蔑ろにされてるなんて思ってるなら、もうそこで死んだ方がいいよ?」
おっとりとした口調で、芙美が9人を諭す。
その口調とは裏腹に、芙美の心の中には武人を困らせる、この女子達が目障りで仕方ない。
一度壊れてしまった心が再生された事で、今までの"人として"の理性や感性が無くなったようだ。
その武人は、9人はもう五十惟に受け渡したので、気にする様子も無かった。
「ポイ、ちょっとおいで」
そう言われて、事の行先を見ていたポイが武人に近づいていく。
「はぁぁ~ ただいまポイッ ほぉぉ~癒されるのぉ~」
武人はポイを抱きしめて頭や尻尾をスリスリと撫でる。
「ちょっちょっ武人さぁ~ん(笑)」
ポイはみんなが見てる手前、軽くだが武人を押し戻した。
「みんな、紹介しとくよ、俺の眷属の癒し系人狐のポイだ。
そしてポイよ、この7人は新しい俺の眷属だ。
まぁおまえの妹分だな、よろしく指導してあげてくれ」
「はいっわかりました。 みなさん宜しくね」
そのモフモフの愛らしい容姿に、ハスキーボイスがギャップ萌えする。
「よ、宜しくお願いしますぅ」
「あのぉ~・・・」
「どした?」
「そのぉ~・・・」
「なんやねんっ!はっきりしぃ~やっ!」
坂東瑛伖は、女子会館の時から、この無気力で行動力の無いグループが好きでは無かった。
コソコソと自分達だけで隠れたり、食料係なのに自分たちの分を別に確保してたりと、自己中心的で陰湿な行動がとにかく気に入らなかった。
藤子が言うには、「弱いから自己保身に走ってるだけ」だと言ってたが、イマイチ納得はしていない。
弱けりゃ強くなる努力をしろよ と瑛伖は思っていた。
「んで、何が言いたいんや?我が主を煩わせるなよ!」
「わ、私も・・・ その娘の眷属になりたいです・・・」
そう言って指さした先には、ポイが居た・・・
作者の独り言: ダラダラとした話が続きますが、これからの話に必要な人々を紹介がてら書き記しています。
もうすぐこの章も終わると思うのですが、新しい章の骨組みになかなかお肉が付いていきません…
ハノアと陸と美羽、そしてもう忘れられたであろう水龍鬼のキャリヤ。サイコパスな奴ら。等々。
その後も構想は出来ているのに、なかなか話が作れて無いです。
まだ200話も書ききって無いのに・・・




