ハーレムの王 再誕
ジャックのいきなりのリポートに少し驚いたが、逆になかなか行動の早い奴だと感心する。
「これで最後だ、お前たちはどうするんだ?もう返事がなけりゃ見捨てる事にした」
ザワザワ ザワザワ
いつまで経っても自分の未来に向かわない連中に、業を煮やして決断を待つ。
それでも結論が出ない奴にまで手を差し伸べるつもりも無い。
そこに残って座っている女子達を、ぐるっと見回してもう一度問う。
「俺の部下になっても良いと言う奴は今すぐに立ち上がれ!
どうしても結論を出せない奴は、ここに残るのも良し、どこかに行くのも良し。
自分の人生だ、自分で決めろっ!」
こんな場合は、中にリーダーっぽい奴でも居れば、集団心理でそいつの行動に引っ張られて動けるのだろうが、残っている16人の女子はどの子も決断力に欠けている。
ジャックは、藤浜に冗談で言われた6人のハーレムを遂行しているため、これ以上眷属の人数を増やす気は毛頭ないようだ。
6人を引き連れて、エントランスのソファーに腰を落とし、どこから持ってきたのかわからないペットボトルのお茶を飲みながら、これからの事を話しあっている。
6人の女達はジャックに寄り添うように纏わりつき、とても喜色満面に溢れた顔を見せている。
バタバタしていたので、時間はもうAM9時に差し掛かっていた。
リーは孫眷属になった龍鬼の子供達を早くレベルアップさせたくてウズウズしている。
だが、いつまで経ってもグズグズとしているそこの女子共に嫌気が差している。
「武人、悪いが私たちは先にダンジョンに戻ろうと思う。
そんな愚図な連中、救いの手を差し出す価値も無いぞ?
放っておけばその辺で野垂れ死ぬだろう。
もう見放す頃合いだなっ」
その言葉を聞いて、Ericaもジャックも納得し、もう入り口に向かって歩いていた。
Ericaは、自分の強力な眷属がどのように戦うのかその戦闘能力を見たかった。
ジャックは、Ericaに負けない位、強い戦闘ハーレムを画策している。
建物の外の公園の上では、黒蝶鬼とその眷属がひらひらと楽しそうに飛び回っている。
まるで、本当に蝶が飛んでいるようだ。
ラグレアとその家族達もリーの後にゾロゾロと尽いて行く。
クレアがリーの腕に纏わりついている。
リーもまた嬉しそうだ。
佐助に対する気持ちとは全く違う感情が芽生えて来る。
残された少女の幾人かは、見放される事に徐々に恐怖を覚える。
それでも尚行動に移せない程、世界の変化に尽いていけていない。
そして、優柔不断だ。
武人がざっとステータスを眺めていたが、残った16人は全員が人間、つまりまだ進化を終えていない娘たちだった。
振り返り誰かの眷属になった娘たちを視てみると、やはりと言うか全員がレベルが付いていた。
進化した事で物の捉え方が前向き思考になる事はわかっていたが、こうも差が出ると、この子らもレベルを付けた方が良いと思いだした。
この中にはゴブリンの借り腹にされた子も数人居るのだろう。
進化をしている借り腹の子は、方向は色々だが前を向いて歩いて行っている。
「ちょっと聞くが、この中に借り腹にされた子は何人居るのだ?」
ザワザワとするが、答えが返って来ない。
「それじゃぁ質問を変える。この中で借り腹にされなかった娘は立ち上がってくれ」
その言い方だったら動けるのだろう、9人の娘が立ち上がった。
そして、その9人を後ろに移動させ、残った借り腹にされたであろう7人に優しく話しかける。
「とりま、おまえらは俺の眷属になれっ!
ひどい目に遭って心が壊れかけてるのも分かる、だが前に進んで生きようぜっ!
進化してレベルを上げて、誰よりも強くなって、悪い奴らを叩こうぜっ!
まずは、そこから立ち上がろうかっ?」
武人は7人に向かって両手を差しだした。
その手を掴んだ二人を引っ張り上げ、腰に手を回し立ち上がらせる。
残った5人も順に脇の下に手を差し入れ、無理やりながら立ち上がらせる。
皆が立ち上がった所で、武人は両腕で7人を抱え込み、壁に押し付け眷属契約の文言を唱えた。
--汝 我が眷属と成りて--
--我の言葉に従順に従い--
--我に危険を寄せ付けず--
--我の生き様を見つめ--
--未来永劫 我と共に--
--生きる事を 誓えっ!--
『コヴェナントッ!!!』
7人は眷属契約の淡い光に包まれて、藤浜武人の眷属と成った。
「あっ?・・・あぁぁ~・・・ ウグッ・・・ヒックッ・・・グスッ・・・」
「うぅわぁぁぁぁぁぁ~~~んっ」
心が閉ざされて、深い鬱状態から抜け出した二人が、ワンワンと泣き出した。
他の少女たちも暗い闇が掛かっていた心が、青天のように晴れわたるのを実感している。
これが藤浜武人の持つ全ての根源の【道化の心】だ。
他の眷属主だと、ここまで心の快方に向かわなかっただろう。
後はレベルを付けて心身共に健全になる事で黒歴史は一笑されることだろう。
「良しっ!お前たちはこれから、どんな奴にも負けないくらいに強くなれっ!」
「・・・ はいっ」
(よしよしっ もうちょっとだな、進化すれば大丈夫そうだ)
今まで死んだ魚の様な光の失せた眼をしていた少女たちが、契約を交わしてすぐに眼に光を取り戻した事に、それを見ていた少女たちは少々驚きの色を隠せない。
だからと言って、自分も とは気持ちがいかなかった。
ただ、何かを虚ろに見ているだけだった。
そんな少女たちを見かねて武人は、少々強引でも中学校に連れて行こうと考えた。
「おいっ、おまえらも俺らの避難所に来いっ 飯くらいは配給あるだろうからな。
ここに居ても、すぐに食料が尽きるだろう。」
食べ物が少なくなっているのがわかっている少女たちは、渋々と尽いて来る。
それでも中には笑顔を仄めかす子も出て来た。
少しだけだが、未来に希望を見出したのだろうか?。
ジャックが渇望していた事なのだが、藤浜武人の方がハーレムの王のようだ。




