朝はみんな忙しい
『五十惟、眷属化は済んだのかな?』
「はいっ、後はダンジョンへ行って職業選択までいくだけです」
ザワザワとする給食係達を見回し、トオルが皆に告げた。
『今から秘密のダンジョンに行ってレベルを上げたいと思う、怪我もすれば死ぬ事もあるんで心して掛かるようにな』
より一層ザワザワとしているが、トオルはさっさと組み分けを始める。
『まず五十惟と中学の9人、セイラとで第一組とする。五十惟はそのままダンジョンに行ってくれ』
「わかりました」
そう言い、校舎に向かって歩き出す五十惟とその眷属達。
『美凪は、ポイと天衣佳樹とその眷属を連れて行ってくれ』
「了解しました、 皆さん、行きましょう」
『キョメは俺と一緒にな。 またえらい大人数を眷属にしたんやなw』
「あははっ、なんや天衣君のとこの子ら抜いた残り全員やわw」
『ちょっと多いけど、まぁレベル3くらいまでの間だけやし、遅くとも10時半くらいには昼の用意始めんとなぁ』
大人数でゾロゾロとトオルの拠点の理科室、今は政務室と呼ばれる部屋に向かう一行。
部屋に入ると、五十惟の眷属の女性が2名、机に座ってノートパソコンをカタカタと操作していた。
「おかえりなさい~」
「何か変わったことは無かったかな?」
五十惟の問いかけに當間彩有里は何も無かったと簡潔に答えた。
「この人たちは新しい私の眷属達で、炊き出しを今まで担当して下さっていた方々です。
今後は五十惟組で活動する事と、食品や炊き出しの管理もうちでやる事になりました」
「初めまして、大政徳子と言います。中学校の炊き出しを仕切っています」
「宜しくお願いしますぅ~」
「はぁwまた仕事が増えますねw」
「それに尽いては、また武人の所から人員を割いてもらうつもりだから」
女性会館で藤浜とジャックがどういった構成で仕切るのかはまだ分かっていないが、そこから人員をこっちに回してもらうのはトオルと五十惟で確約している事であった。
「まずはダンジョンで職業付までやってくるね。
んじゃセイラ、行こか~」
「はいっがんばりましょう~」
五十惟の進軍を鈹きりに、美凪のグループ、そして最後にトオルのグループがダンジョンに潜って行った。
「んじゃ~まずはそのロビーのゴブリンをEricaの眷属にしてしまう事からやな」
藤浜武人とレイン・リーが女性会館の今後の展開を話し合っている。
7番街をもうすぐ通り過ぎようとしていた位で頭上から大きく声が掛かる。
「お~いレイン嬢?、どこ行くんや~?」
「あぁラグレア殿、夕べの話の建物に事後処理に行く所だよ」
「そっか~ リャンも元気そうやなw」
「どうもぉ~」
「ラグレア殿も暇なら一緒に行くかい?特に何も無いけどw」
「おぉ~?良いのなら行くぞ~ 暇やったんやw」
ラグレアはそう言ってベランダから姿を消した。
ほんの数分待つと、ラグレアがその部下のヤモリ人、ハクビシンの2人の獣人を連れて降りて来た。
「ラグレアさん、自分、名前を頂いたのでリャンを改めジャックと言います」
「おぉ~名付きになったのかぁ~そりゃ良かったなぁ」
ラグレアは鑑定でジャックのステータスを覗いて見た。
「ほぉ~主人は藤浜氏かぁ、まだ会ってないが、名付けが出来る高位の人物だな。
会うのがとても楽しみだな」
「いやwラグレアさん、俺がその藤浜武人だよ、初めましてだな」
「あっこれは失礼した、俺は、ってもう知ってるのかwラグレアだw」
「いいなぁ~名付きかぁ・・・」
「羨ましいなぁ・・・」
獣人にとって名前程重要な物は無い。
産まれながらに名前を持つネームドはやはり他の個体より強い。
名前を付けるのには、高位の魔力を携えた者にしか扱えない、特別な力が必要なのだ。
「着いたよ、ここが女性会館だ」
「いよいよハーレムの王かぁ~」
「ポイが居なくてよかったなwまた蹴られるところだったぞw」
ウダウダと世間話をしているうちに女性会館の前に着いた。
中を見ると夕べのゴブリンがまだエントランスホールを徘徊している。
その向こうのエレベーターホールの辺りに数人の女性の顔が見え隠れしている。
「リーさん、取り敢えずゴブリンを眷属化してきます」
「んじゃぁ打ち合わせ通り私が拘束しますね」
リーはガラス戸を手で開けてエントランスに入って行く。
そして向かって来るゴブリンに忍術の拘束スキルを掛ける。
「金縛りっ!」
手前に突っ込んで来たゴブリン3体が硬直する。
「ありがとうございます~ んじゃぁいきますっ!」
汝
我が眷属となりて
我に従い
我を助け
我を見守り
我と共に生きると
誓かえ
「コヴェナントッ!」
淡い光に包まれて、ゴブリン3体がEricaの眷属になった。
眷属になった瞬間にゴブリン達は、ハッと我に返ったように振る舞い、自分が拘束されている事に違和感を覚える。
「クリア~」
拘束を解除されたゴブリンがEricaの元に膝間付く。
「アルジよ 我が身を受け入れて頂き、ありがたき幸せ」
ゴブリンの潜在能力に秘めていた"知恵"が開花したようだ。




