悪魔軍 ドラフト会議の夜
「さて、話を続けようか」
レドが黙った事と、マグナが今回の話し合いの趣旨を説明した事でその後はスムーズに交渉が終わった。
狐人のイースは誰かの眷属になっても所属は今のままアンダルの元にある事。
ポイとセイラはドラフトに掛かる事。
豹人イチはリーの眷属になる事が決まっている。
もう1人の豹人のリャンの処遇は現在は保留だが、本人の意思を確認する事にした。
グリートの配下が居なくなった事が少し問題だが、それはまた人員を補充する事で一応の終結を迎えた。
「さて、それではレインさんに依頼を頼みたい」
「なんでしょうか?」
「実は・・・
本日夕方過ぎに、ここの南側に急に森が発生したんだよ」
「森?」
『森って、森や林のあの森か?』
「あぁ気が付いた時にはもう森林と言うくらいに10番街を包み込み隔てていたんだ」
「補足するとな
9番街の南に幼稚園があるんだが、そこが森に飲み込まれたのが薄暗くなってきた時間くらいだったかな。
それから見るたびに西へ西へと森が広がり、8番街、7番街の南側に広がっていったんだ」
「さっき、様子を見に行ってきたんだが、木と木が絡み合った不思議な木ばかりで構成された本当に不思議な森でな、森を通って南に抜けられない状態だった」
『って事は、まっすぐに10番街を責められなくなったって事か』
「そうだ、まぁ10番街の平定はトオルに任せてwレインさんには森の調査を依頼したい」
「自分らも明日明るくなったら、部隊を統率して調べに行くつもりなんだけどな」
『んじゃ~俺らも明日は森の探索とするか』
「一度全員が揃って何かをしたいと思ってたので、明日は軍団総出で探索を致しましょうかw」
『んじゃーリーよ、おまえがリーダーを務めろ』
「御意っ!」
『アンダル、マグナの指令が無い時は暫くの間はうちに常駐しとくようにな』
「まぁ朝こっちに出勤してきて夜にはトオルの所へ帰る、普通に会社員みたいなもんやw」
「あはははははっ」
「・・・」
『んじゃ~一旦俺らは帰るわ、明日は昼前に森の調査に出て来るよ』
「昼前?朝は何か用事があるのか?」
『そんなに早くから俺に逢いたいのかぁ?(笑』
「ア、アホよっ!ちゃ、ちゃうやろっ!な、何か用事があるんかと単に好奇心や…」
『あははっそんなに否定すんなよw
朝は俺らが仕切っている避難所の業務を少しやらないとあかんからな。
昼前に調査に出て、南にある高校のグラウンドででも昼飯をみんなで食えば良いかなと思っとる』
「んっ?俺らも一緒に昼飯を食うって事か?」
『あぁ一緒でも良いぞ?お互いの軍団の顔見せって事にでもしようか?』
「ト、トオル…さん、あ、あの女にも同じようにしないとあかんのですか?」
「・・・」
「・・・」
リーとヘスティアは険しい顔でレドを見つめ、何かを言いたそうにしているが、トオルの一言を待っている。
『いやっ美凪だけは特別に今まで通りの対応を許可しようw』
「キ、キングゥ~???」
「お、お前様、どうしたのじゃ?」
『ただし、美凪以外のメンバーには真摯に対応する事が条件だぞ』
「わ、わかった、いやわかりましたっ!」
レドの顔から、失われていた生気が戻ってきた。
どこから見ても、真っ黒だが。
トオルとリーは7番街を後にして、自分たちの拠点に向かい歩き出す。
「お前様よ、何故に美凪に対する不遜な態度を許可したのじゃ?」
「そうですよ、それでなくても仲が悪いのに・・・」
『いや、面白いやろ?(笑)』
「・・・」
そんな話をしながら帰路に就く。
その後ろからアンダルとグリートが尽いて来る。
『グリートぉ?』
「い、いったいどうしたの?」
真っ暗な夜の闇に紛れて、真っ黒な黒豹獣人のグリートが何事も無かったように歩いている。
「いえ、自分も眷属になりたい方が居るので(笑)」
「美凪だな?w」
「はいっそうですw さすがはレインさんだなぁ」
「出かける前にお前らや佐助や美凪とイースの数人で何か話してたからなw」
『さすがはリーだなw色々と周りを見てたんだな』
「マグナさんの了承は得てますので、お心配なく」
帰り道に、チラッと10番街の方向を見たが、やはり森の様な壁で塞がれていた。
トオル達がインスタンスダンジョンに戻って来ると、大きな前室には全員が揃っていた。
『ただいま~』
「おかえりなさ~い」
「キング、お疲れさまでした」
事務とダンジョンの管理を任されている掛井橋五十惟の眷属の女性が、椅子と机を持って来て、その机の上にお茶の入った湯呑を置いた。
『さて、今から少し会議をする、眠たい人も居るだろうが付き合って欲しい』
時間にして、午後11時半を少し回ったくらいだった。
元おばあの椿田摩耶はまだ頑張って起きている。
『摩耶、大丈夫か?』
「ほほほ、普段から寝るのはYouTube見てからやから、12時過ぎじゃよw」
『それならいいw』
「今から獣人たちのドラフト会議を開く」
「おぉぉぉ~~~?」
ザワザワ ガヤガヤ ヒソヒソ
「セイラちゃん、うちに来ないかなぁ~」
「静かにっ!」
『まずは最初に、美凪の所の摩耶をリーの所に移籍してもらう、美凪は良いかな?』
「はいっ、でも摩耶さんはお世話好きなようで、五十惟の所でも良いのでは?」
『一応隠密部隊に所属してもらった方が動きやすいかもと思っている、摩耶はどうだ?』
「私はぁ・・・ 同じ隠密形態のリーさんのとこが良いかな?」
『OK,じゃぁ摩耶はリーの所に。
そして、アンダルと藤子とイチ、この3人もリーの所属とする。
グリートは美凪の所が希望だ、美凪はそれでよいか?』
「はいっ」
『それと、摩耶の代わりに一人選んで良いぞ』
「それでは、イースを」
『よし、イースとグリートは美凪の配下になる』
イースとグリートは自分の希望通りになった事で、お互いに顔を見合わせニヤリと笑う。
「俺はポイとリャンが欲しいが、五十惟の意見も聞きたい」
「私はその坂東瑛伖が欲しいなぁ」
『よし、じゃぁカブリが無いのでそのメンバーはそれぞれの配下に』
「藤浜さん、セイラちゃんをぜひうちにっ!」
「そうですそうです、ぜひうちに~!」
「いやいや、元々隠密部隊なんやからリー組にぜひっ!」
「セイラさんは戦闘力の高い豹人、ぜひ戦闘組のうちに来てくださいっ!」
美凪の所の新人、怪力男もセイラが気に入ったようだ。盛んに勧誘をしている。
『あははははっ セイラは人気があるようだな~ でも人数的に五十惟の所かな?』
「まぁ五十惟さんの所なら男が居ないし良いかも・・・」
五十惟の配下は5人居るが、全員が女性だ。
特に性別を気にした訳では無いが、事務職を探していたらそうなってしまっていた。
『セイラとポイにはここの部屋のマスコットにでもなってもらうかw』
汝 我が眷属となりて
我に従い
我を助け
我を見守り
我と共に生きると
誓かうか?
あちらこちらで眷属契約の文言が唱えられている。
そんな中、一人だけ所属の決まってないEricaが不遜な顔をしながら、アルコールを片手に酒のアテを摘まんでいた。
「セイラちゃん、よろしくね~」
五十惟の配下が各自自己紹介を始め出した。
「セイラ、本当はうちに欲しかったのだがなw」
「人数の振り分けで駄目だったんですよね・・・」
セイラ自身は、早く強くなりたくてリーの恩恵を受けたかった。
だが、リー軍にはあいつが居る。
だから残念な気持ちとホッとした気持ちが入り混じって複雑な気分だった。
「いや、それは私の戦果だから無理を言えば通ったんだがな」
「???では何故ですか?」
「おまえは佐助に多大なる敵意を抱いてるだろうw」
「・・・」
「ん?どう言う事だ? 俺がお前に何をした?」
「・・・」
「だからな、他の部隊で切磋琢磨した方が良いかなと思ってな」
「どうして気づいたんですか?」
「ハーレムの王の部屋で、セイラに向かってこいつが「ピンクッ!」って呼んだだろ?
あの時に軽く殺気を感じたんだが、その後も佐助が喋るたびに睨みつけてただろうにw」
「そんなに周りから見て分かるほどだったんですね・・・」
「それと、佐助がキングに同行を止められた時に、セイラはニヤケてただろう?あれですべてを察したし確定したよ(笑)」
「ふんっ!ピンクにピンクと言って何が気に入らんのじゃ、ピンクのお前が悪いんじゃろうて」
「けっ!猿のくせに何を偉そうにしてんねん、リーさんの威光を使ってるだけやしw」
「はぁ~誰にモノ言っとんじゃ~!」
「そこのお猿さんにだよぉ~w」
「ムッキィ~」
『あははははははっ こりゃ楽しいなw』
「キングはまた、もうぅw」
「佐助~セイラちゃんをイジメるなよ~!」
「くっそぉ~ 俺が何をしたっちゅうねん!」
佐助はイラつくがここでは暴れられない為、場を離れていった。
「ふふふ、勝ったぁw」
ここに新たな天敵同士が出来上がったようだ。




