天使軍 海棲魔獣を追い詰める
上空から見ていると、加奈子と海法師の距離はどんどん離れていく。
もう洋路と須布来人の遥か後ろをまだ海中から追いかけている。
{加奈子さん、加奈子さん}
{えっ?洋路?どうしたの?}
{あのぉ~ 空中から追いかけた方が速いですよ}
{!}
加奈子は少し恥ずかし気に海中から上空に浮上してきた。
すでに洋路たちはかなり前を飛んでいた。
『おまたせ~』
明るく何事も無かったかのように加奈子が洋路と須布に追いつき声を掛けた・・・
「どうします?HPがまだ半分くらい残ってますよ」
「大気弾を撃ち込んでみます」
須布来人は、空中から海中の中まで届くように、一発の大きさが小さい大気弾を撃ち込んだ。
「当たってるけど、あんまり大きなダメージにはなってないですね~」
「加奈子さん、火の羽を全力で打ち込んでみて下さいな」
『火の羽!!』
海中にズブズブと火の羽が刺さっていく。
少しダメージを受けた海法師は、深い底辺りまで潜って逃げていく。
「もう六アイの南端ですよ?」
「どこまで逃げるつもりなんやろう?」
『六アイの沖に埋め立て処分場があるのよ、そこかもね』
洋路は空中高く飛び上がった。
「あぁ~あれか」
再び加奈子たちの所に戻り、今見た事を須布に告げる。
「六アイの沖にそんなのがあるって知らんかったなぁ」
「あの位置じゃ、マリンパークに行くか、大学の人等くらいしか見えないしね」
「昔、あのなが~い防波堤に釣りに言った事はあったけど、埋め立てはしてなかったなぁ」
海底深く潜ってしまったため、目視では確認できないが、気配探知や索敵で逃げる海法師を追いかける。
「よしっ、処分場に上陸しましたね」
3人は埋め立て処分場に上陸した海法師に向かって降下していく。
海法師の周りには、半魚人や薄紫のシーゴブリンがかなりの数ウロウロとしている。
『ここがこいつらの拠点なのかもね~』
「加奈子さん、一気に海法師を殲滅しましょうか」
『どうやれば良いのかな?』
「海法師の目の前で戦闘封鎖領域を展開して下さい、それに自分の戦闘領域を被せます」
『んっ?洋路も戦闘領域を展開できるの?いつの間に?』
「僕らは刻々と進化しているんですよw」
洋路は笑いながら、自分もさっきよりも今の方が強くなってるって事を示唆した。
今の洋路は、加奈子が使う火魔法や土魔法を模倣したスキルを手に入れている。
火や水の戦闘領域に必要なスキルはすでに習得済みだ。
土魔法も、城以外は手に入れている。
そして今は、破壊解体吸収のスキルを覚えかけている。
洋路の構想の中には、ソーラーシステムを解体吸収し、それを拠点に展開したいと思っている。
加奈子にそれを求めても良いのだが、加奈子には戦闘に集中して欲しいとの思いもあるからだ。
『火の戦闘封鎖領域っ!』
「続きますっ!火の戦闘領域っ!!」
(ヒュン)
洋路の火魔法も【火魔法+】に上化し威力を上げた。
封鎖された戦闘領域から逃げ出す事は出来ない。
火の耐性の無い海法師も、そばに居て巻き込まれた数体のシーゴブリンやマーマンも火に包まれ息絶える。
(ヒュン)
加奈子と洋路のステータス画面に【水生魔獣を討ちし者】と言う称号が発現した。
「なんか、称号が付きましたよ?」
『私も何か付いたようね』
「自分は何も付いてないなぁ」
「まぁそんなこともあるさなw」
「・・・」
「多分、キル報酬やと思うで、戦闘領域で倒したから、融合しとる2人共に入ったんやろ」
「・・・ あっ、でもレベルが上がったわ」
『ここに居る奴らは殲滅しましょうか』
「それならみんな呼んで始末しませんか?結構広いし」
現在、埋め立て処分地の地面がある部分は、幅350m長さ1600mほどの外殻を持つ。
将来的には、手前(北側)の一文字の防波堤の形に添って台形の形に埋め立てられ、六アイとは橋で繋がり、六アイとポーアイも大橋で連結される予定だった。
現在、六甲アイランドの商業施設は少し閑散としてきているので、ポートアイランドと繋がればまた全盛期のように賑わうかも知れなかったのだが。
厄災さえなければ・・・
『じゃぁ一旦戻りましょうか?』
「・・・ 加奈子さん、うちらの拠点をこっちに作りませんか?」
「あの城みたいなのをここに作るって事?」
「そうです、ここなら飛ぶか泳ぐかしないと入ってこれないので基地には良いかと」
『みんなにも聞いてみないとね』
「じゃぁ一旦帰りますか」
3人は埋め立て処分地を後にした。
加奈子にとって拠点はどこでもよかった。
飛べるという優位性を持つ天使軍にとって、場所などどこでも同じだからだ。
空間倉庫の中には、天使軍だけなら百年は余裕で生きられるだけの食料も入っている。
拠点の東の広場に就いた3人が見ると、そこには数多の死体が転がっていた。
あの後も、次から次に海中からモンスターが現れたようだ。
洋路は皆に今後の事を説明する。
「 と言う訳で、出来れば拠点を移したいと思っています」
「たしかにここじゃ~あいつらの目の前やからなぁ」
「この砦はどうするの?」
「ここは全部解体してあっちに持っていこうかなって思ってる」
「校舎も全部潰して持っていくの?」
「麗菜さん、なぜそんなに校舎に深い思い入れをしてるんですか?」
「えっ?」
「校舎は全部解体吸収して素材にしますよ」
「・・・」
「・・・」
「え~っと、私のネコちゃんとチューちゃん達は?」
「あっちは広いから、キャットランやラットランも作れますよ」
「!、行きましょう!」
紗衣の一言でみんなが空に飛び上がる。
1人2匹くらいのネコかネズミを抱えて、須布と加奈子の先導で沖の埋め立て地に向かった。
「残りの子はまた後で来るね~」
洋路は一人残り、解体吸収のスキルを習得するべく砦を破壊していく。
(おっ?この感じでやると解体スキルが出てきそうだな)
加奈子は元々空間倉庫を持っていたから吸収スキルもすぐに出たのかも知れない。
洋路は空間系のスキルは無いから、まずは解体スキルを覚える事に執着している。
(ヒュン)
「おしっ、やっと覚えたぞ~」
1時間近く掛かって、解体スキルを覚えられた。
「解体!!!」
(加奈子さんのとはちょっと違うけど、こっちの方が解体分解力が優れてるな)
その後は解体分解したモノを吸収するべく、砦や石畳を出したり消したりを繰り返す。
(ヒュン)
(やっときたか~)
だが、洋路のスキル欄に名が乗ったのは、石系創造系の最上位[キャッスル(城)]だった。
「ちぇっ!」
(まぁでも欲しかったスキルだからいいかっ)
その後もスキルの習得に余念を無くし、ひたすらに石系スキルの出し入れを続ける。
熟練度が上がり、加奈子よりも精度の高い石畳や砦、そして城を作れるようになっていった。
(う~ん、吸収を覚えるにはこのやり方だと駄目な気がして来た・・・)
洋路は拠点を解体し、反対の東側グラウンドに城や砦を作る。
最初こそ、素材が足りなくなり不完全な物しか造れなかったが、距離があっても素材を取り込むようになった途端に[吸収]を覚えた。
「やったね~ やっぱやり方が悪かったか」
拠点の砦や石門等を解体して吸収していく。
麗菜がこだわっていた校舎も躊躇なく解体分解して吸収する。
(なんで麗菜さんは校舎にあんなに執着してるんだろうか・・・)
洋路は異様に校舎に拘る麗菜の事を考えながら校舎を解体吸収していった。
周りはもう真っ暗で夜目スキルが無いと何も見えない。
独り言&お詫び:この話の予約投稿をし忘れてました・・・
しばらく不定期になるかも知れません。
申し訳ありません。
2021年の8月1日から初めて1年間、3日おきに投稿してたのですが、少しモチベが下がってるのと、仕事が忙しいのと、暑さが重なって「天使と悪魔編」のストックがほぼ無くなりました(笑)
まぁそんなに大勢の読者様が居る訳でも無いけど、投稿日には必ず見に来てくれている方も極少数いらっしゃいますので、申し訳ないと思っております。
この章が終われば、少しだけ出て来た「ハノアと陸と美羽」の話が始まります。
もう少しお付き合い願います。
それが終わると、いままで出て来たキャラが全員出て来る『大神戸(東部)編(仮)』(5章程度)『戦場!六甲アイランド編(仮)』(5章程度)で1部は終わりたいと思っています。
100話くらいに纏められたら良いなぁと思ってるけど、どうなるかはまったくわかりません(笑)




