悪魔軍VS魔獣軍 捕虜の行方
『最初におまえらに聞いておくが、おまえらってもしかしてマグナの所の部下たちか?』
その名前を聞いて獣人たちが狼狽え、お互いの顔を見合わせる。
そしてガヤガヤザワザワヒソヒソと小声で話しだす。
{マグナ?さんって誰なん?知ってる人なん?}
{あぁ俺らのボスや・・・}
イチの耳元で藤子が囁くように問うと、イチは藤子の耳元に返事を返した。
「おまえらぁ~キングがお伺いを立ててるやろがぁ~さっさと答えんかいっ」
「・・・(猿のくせに・・・)」
「聞かれたら即座に返事をするようになっ、そんなんで命を落としたぁ無いやろ?」
「ここは気が短い連中ばかりやから気ぃつけや、愚図い子は嫌いやで」
『まぁそう責め立てるな、で?どっちかはっきりせぇよ』
「それを聞いてどうするんや」
『あぁやっぱりマグナの部下か』
「ま、まだ何も、こ、こ、答えてないやろ~」
『あははははっ マグナを知らないならそんな受け答えをする訳無いだろうがw」
「・・・」
「もう一つ聞くぞ、お前はあの黒いクズ犬レドの部下なんじゃないやろうな?」
「お、俺は黒豹じゃ~ な、なんで犬の部下になんかなるんや~」
「この中であのレドの部下は居るのか?居るなら手を挙げよ」
「・・・」
「居ないか、なら良い、もしもアレの部下ならこの場で首を飛ばすつもりだった」
『美凪、おまえはホンマ(笑)』
「・・・」
「・・・」
「自分はマグナさんの部隊の5番隊隊長を任されているアンダルと申します」
『ほぉ~』
『今朝な、マグナの部下のクロコダイルとやったんやけど、あいつも部隊長やったんか?』
「・・・」
「俺は7番隊隊長のグリートと言う、クロコは1番隊隊長やった」
『そっかぁ、あいつは強かったなあ~』
「そうですかぁ?楽勝にみえましたけどぉ~?」
「おいっポイ、自己紹介してから喋れっ!それとキングに嫌味を言うとか、おまえは死にたいのかっ!」
リーは片手で佐助を、もう一方の手で美凪を押さえ、静止させていた。
「さっきもゆうたけど、ここは気の短い奴も多いからな、気を付けぇや」
「あのぉ~ その狐っ子、殺すなら俺の眷属に貰えませんか?」
「んじゃ私はそっちの背の高い方のイケメン狐が欲しい~」
「じゃ、じゃぁ私はそのピンクの豹のセイラが欲しい~」
『おいおいっw ちょっと待てってw』
『まぁ自己紹介なんぞしなくても、うちのメンバーはだいたい鑑定持っとるからな』
「・・・」
『それと、おまえら、こいつらはリーの案件やからな、佐助はまだしも、他の奴は手を出すなよ』
「わかりました・・・ でもリー、殺すなら頂戴ね」
「うちらは物とちゃうんやでっ!」
「ポイ、勘違いすんな、おまえらは今ここでは"物"扱いなんや、それが捕虜って意味や」
「おまえらを生かすも殺すも、他人に奴隷として譲渡するのも俺らの采配次第って事や」
「・・・ (猿がぁ・・・)」
「・・・」
『まぁ眷属云々の前に、まずはこいつらの親玉には言っておかないとな』
トオルは一通り周りを見回して次の行動に出る。
『んじゃ~アンダルとグリート、俺と一緒にマグナん所に行こうか?』
「か、解放してくれるって事か?」
『いや、今後の処遇を決める為だ、おまえらは一応リーの戦果って事になるからな』
「他の部下たちはどうなるんですか?」
トオルはアンダルの後ろに居る部下たちの顔をざっと眺めて答える。
『今は処分は保留だ』
「ボスさん、うちらはアンダルさんやグリートさんの部下や無いんやけど?」
「おいErica、お前らのせいでこいつらは捕虜になったんやぞ?関係ないとか言うなっ!」
『おまえは面白いスキルを持っとるし、殺人称号も付いとるし、まぁ他を開放してもお前だけはここに残すけどな、それは覚悟しとけ』
トオルはEricaのスキルや称号を見て仲間にしようかと考えている。
戦闘は美凪、隠密はリー、事務とダンジョン関係は五十惟、運営や建築関係は藤浜、そしてもう一つ部隊を考えている。
「・・・ 性奴隷か・・・」
「お、おまえみたいなチンチクリンがキングの玩具になんざなる訳ないやろがっ!」
「ち、乳がデカいだけでおもちゃにしてもらえると思うなよっ!」
「ヒ、ヒロミ、み、美凪ぃ~ちょっと落ち着けw」
「キ、キングは巨乳好きですか?」
『アホどもよ・・・』
『リーよ、疲れてる所を申し訳ないが、マグナに顔見せしときたいから尽いてきてくれ』
「はいっ」
『んじゃっちょっと行って来るわ、摩耶、こいつらになにか食いもん出しといてくれ』
トオルは、美凪の眷属だがデフォルトで隠密を行使する新人、椿田摩耶に食事係を頼んでいる。
トオル達4人が前室から出ようと歩いていると、美凪と佐助も当然のように尽いて来る。
『あっ、美凪と佐助は今回はお留守番だ』
「えっ?えっ?」
『おまえ、レドの顔見たら間違いなく暴れるだろうが(笑)』
「レドってどんな奴なんですか?」
『普通の黒コボルトのネームドだよ、なぜか美凪とは相性最悪なんだよw』
「部下にも慕われてるし、他の部隊長からも信用厚い人ですけどね」
「組織内でどうあろうが、ただのクソ犬だっ!」
『なっ?こんな感じやから話合いにはちょっとご遠慮願うよw』
「す、すみません、自分でもあいつを見たら自重できないのは分かっているので・・・」
美凪はすんなりと受け入れた。
「美凪がこんなに事を荒立てるって珍しいなぁw レドに会うのが楽しみやw」
「お、俺はなんで?」
『おまえと気が合う訳無いやろうがw犬猿の仲になるんが目に見えとんじゃw」
「・・・」
(けけけけっ)
『じゃぁアンダルとグリートは、リーの部屋に入っといてくれ』
『美凪~簡単に食えるものをこの二人に渡しといてくれないか』
美凪は空間倉庫からコンビニ弁当を2つ出してアンダルとグリートに手渡した。
「さぁみんなお食べ」
進化で若返って気分が良い元おばあちゃんの椿田摩耶が、獣人と藤子たちに晩御飯をよそおう。
「ま、摩耶さん、俺にも何か簡単なもんでいいから頂けますか?」
佐助の中では、椿田摩耶は恩義のある人なのでついつい畏まってしまう。
「カップ麺もあるでぇ~ 欲しかったら言いやっ」
「んで、藤子とその豹人は恋人なんかぁ?w」
鑑定でネームドや人間の名前は分かるが、イチやイースのように通称で呼ばれてる相手は名前が分からない。
「自分はイチと言います、藤子には命を助けてもらった恩がありますから」
「な、なにを言うんよ、自分のせいでイチさんに大怪我を負わせたから・・・」
「はいはいっw ま~仲が良い事でw」
「ちゃ、ちゃうってぇ~!」
「ちゃうんかぁ?w」
ヒロミは藤子とイチが座るテーブルに同席している、そして冷やかして楽しんでいる。
「こ、これ美味しいなぁ~」
ポイは椿田摩耶が出してくれた晩御飯に舌鼓を打つ。
「それは、鯖缶と卵とキャベツを炒めただけのもんやで」
「ご飯が進むぅ~」
「久々に美味しい食べ物に有りつけたぁ」
「銀シャリさいこぉ~」
「イチさん、お箸使える?」
「あぁ俺は大丈夫や、グリートさん以外はみんな使えるよw」
「えぇなぁ~青春しとんなぁ~w」
「・・・」
桃豹であるセイラの周りには興味本位の人が集まって居る。
「ピンクパンサーってホンマにおるんやなぁ~」
「な、なんかエロいなぁ」
「すごい可愛いですよねぇ~」
「もぉ~ジロジロ見ないでよぉ~」
まんざらでも無いようだ。
「セイラちゃん、これも食べなよ、美味しいよ」
「ア、アルコールもあるよ、飲むかぁ?」
ファンクラブが出来たようだ。
獣人たちは胃袋を掴まれ悪魔軍の面々に懐柔されかけている。
特に人間である、坂東とEricaは新天地を見つけた様な気分になっている。
「でも・・・ なんでうちだけ残らせるって言ってるんやろ・・・」
「えぇんちゃう?美味しいもん食べられるだけで何があっても我慢できるw」
「・・・ そうやなぁ・・・ まぁいいかっw」
相変わらず能天気なやつらだった。




