悪魔軍対魔獣軍 隠密部隊の戦い4
「うちはあそこの出入り業者やってん」
派遣社員として清掃会社で働いていた藤子の担当場所が、厄災初日は女子学生会館だった事。
エントランスに居た藤子は、そこで戦闘になり敵を倒し進化した事。
その際に、周りに居た人たちも皆で助け合い、そして進化して1階のゴブリンを一掃出来た事。
その後に上から上から降りて来るゴブリンを倒しながら、上階の人を助けに昇った事。
ゴブリンは1日もしないうちに全て1階に降りて行った事。
1階がゴブリンに占領されて、仕方なく上の方の部屋に避難していき、会館の職員たちの指示の下、これからの事を話しているうちに序列が出来てきた事。
厄災2日目から、なぜか序列の上の方の男が一人消え二人消え、そして12人居た男性が3人しか居なくなった・・・ 事。
そして、厄災3日目には、自ら王と名乗る男が一人残っただけだった事。
「うちは真っ先に目を付けられて、、、でも戦闘力が少し高かったから性奴隷にはならなかったんやけど、身の回りの世話や遺体を1階のゴブリンの中に捨てに行かされたり、嫌がる女の子を無理やりあの男の所に連れて行ったり・・・
ほんのついさっきまでマルっと洗脳されてたし・・・」
「ハーレムかぁ~ えぇのぉ~」
女性5人から冷たい目で見られているが、それも少し快感だと思っている奴が居る。
「おまえはそこで死んどけっ!
おいっ藤子とやら、お前はその助けた連中をどうするつもりや?」
「ど、どうするっ?
じ、自由にしてあげたいだけ・・・」
「ふんっ!大した思惑も無く、ただ偽善心で人を助けたいって、おまえは典型的なダメな子やな」
「・・・」
「な~んの計画性も無しに、思い付きで行動するタイプやな?」
「あぁおるおる、そんな行き当たりばったりで生きてる奴な」
「・・・」
「まぁそんなに責めたるな、女同士やとほんまきっついのぉ~w」
「ほんでもそいつらの言う通りやと思うで。
自分一人では助けられないくせに、他人を平気で巻き込んで、結果も良い方向しか想像出来てないやろうし、助けを求めた相手の力量もイマイチ計れて無いやろうし、お願いに対する報酬が自分ってか?」
「ほやなぁ、俺らは弱い訳じゃないけど、元々戦闘向きのステータスや無いしな」
「つ、強くなるためのきっかけが欲しいんや・・・」
「・・・」
「まぁその二人を避難所に送り届けてこい、んでここに戻ってこい、話はそれからや」
「はいっ!」
2人の手を取って藤子はスキルを唱えた。
「フワフワッ!」
そして小学校の方向に飛んで、暗闇の中に消えた。
「あいつら帰って来ないかもな」
「うまく逃げれたって思っとんちゃうか?w」
「いや、あの藤子って奴は絶対に帰ってくる」
「あぁうちも絶対に帰ってくると思うわ」
「まぁどっちでもえぇけどな、たまたま遭遇しただけやし損も得も無いわ」
「しばらく待ってみるけど、来なかったらそれまでや」
グリートとアンダルは思った、なぜあんな女に固執しかけてるのか?
不審な紛らわしい奴はさっさと殺せば良いだけなのに と。
「ハ~レムかぁ~」
「おまえはまだゆうとんかぁぁぁぁぁ~」
ここの公園の地下は、向洋西公園駐車場と言う名の地下駐車場になっている。
駐車場の奥の方から人の気配はするが、特に気にする事も無い。
一行はその出口付近の歩道に屯する。
「そういや晩飯食ってないよなぁ・・・」
「あの藤子って女がもし帰って来たら見繕わせるかw」
「そりゃそうと、明日はどうやってボアオークに交渉を持ち込むつもり?」
「ボアオークのカラードがおったやろ?まずはあいつに接触してみるわ、アンダルがw」
「お、俺かよぉ~?w」
「隊長、お願いしますよw」
アンダルはレッドゴブリンのマグナ率いる魔獣軍の5番隊隊長である。
ちなみにグリートは7番隊隊長で豹人族を率いている。
どちらも戦闘職では無く隠密部隊の範疇で活動している。
だが、元々の種族の高い戦闘能力は持ち合わせており、訳有仕事はこの2部隊がほぼ解決してきている。
世間話や明日からの計画など話が弾んでいたが、暗闇の空中から女が降りて来るのを察知し、皆がそちらに注意を向けた。
「遅くなってすみません、本当に待っててくれるか不安やったけど、良かった~」
「あぁ、もうちょっと待って来なかったら帰ってるところだ」
「あんたは必ず帰ってくると、うちは思っとったよ」
「あ~こいつらと賭けしとったら良かったわw」
「どっちに賭けてた?w」
「もちろん、うちはあんたが帰ってくる方になw」
「改めて自己紹介するわ、うちは人狐のポイって言う、もちろん女やでw」
「うちは桃豹のセイラ、よろしゅうな」
「桃豹?ピンクパンサーやねw」
人狐1人と豹人2人はネームドではない為、通称で自己紹介をした。
「そのキングとか言う奴を倒して俺が代わりに王って有りかな?」
「おまえはほんまにそこで死んどけっ!」
ポイに強めの蹴りを喰らって痛がる豹人をしり目に、一行は会館へと向かった。
「ちょ、ちょっと待ってぇ~」
振り向くと、空中に浮かぶ女とそれに抱えられている女。
「う、うちらも行くから~」
「やっぱり、自分らだけ助かるのは気持ちが悪いから~」
坂東瑛伖は、藤子のスキルで空中に浮いてるうちに[浮遊]のスキルを覚えていた。
Ericaは同じ程の時間を飛んでいるが、まだそんな系統のスキルは覚えていない。
「着いて来るんはえぇけど、足手まといになるなよ!」
「いや待てっ、着いて来るって事は、成功報酬で俺らの奴隷になるって事やぞ?
その王とか名乗る奴から俺らに奴隷主が替わるだけやぞ?
それを理解して着いて来るって言ってるんやな?」
「言っとくが、俺らは普通に男やからな?奴隷になったら何をさせられるのかちゃんと理解しとんやな?」
「さ、三人でもハーレム気分は味わえるかのぉ~?」
「おまえは黙っとけっ!」
「・・・ 出来ればこの子らは奴隷になどしないで解放してあげて欲しい」
「あぁいいぞ、その代わりうちらは藤子以外は何かがあっても助ける事は無いだけや」
「藤子は奴隷になっても構わないと言う、偽善者精神旺盛やからな」
「覚悟の無い奴に、成せる事など何もないって事だ!」
「わ、私は奴隷でも何でも良いので、強くなりたい、力が欲しいです」
「あぁさっき避難所で色々聞いたけど、どこに行っても地獄ならこっちでいいわ」
「こっちでぇ?」
「あぁごめんよ、こっち"が"えぇわ」
「ははは、わかったわ」
10人になった隠密部隊+αが、女性会館に捉われている女子学生たちを救出に向かう。
(なんで獣人の俺らが人助けなんか…)
(まぁえぇか(笑)
「おまえら、まずはこいつらはスルーして上に行くぞ」
「俺らは基本、攻撃職や無いから出来るだけ無駄な戦闘は避けるぞ」
会館の前に着いて中を覗く大耳狐族のアンダルと黒豹族のグリートが戦略を皆に告げる。
「うちらは隠密のスキルがあるから簡単に抜けれるけど、おまえらは誰かの横に尽いて行けよ」
そう言ったポイの横には坂東が尽いた。
そしてセイラの横にはEricaが寄り添っている。
藤子は先頭を歩くアンダルとグリートの間に入り、道案内役を買って出る。
「ここもそこそこ強いゴブリンの気配がするな」
2階に上がった所でアンダルの気配探知がホブゴブリンの存在を捉えた。
「あいつが居るのは8階以上の南棟やと思う」
「んじゃ~、勢い付けて7階まで上がるか」
「4階のところにバリケードがあるからな~」
3階にも弱った人の気配がいくつかあるが通り過ぎる。
3階と4階の間にある、家具や机等で出来たバリケードは全員飛んで抜けていった。
飛べないモノは飛べる奴が抱えてそのまま7階まで浮遊していく。
その間に、人狐のポイとEricaが浮遊系のスキルを覚えた。
「8階に大勢の気配を感じるぞ」
隠密部隊が戦闘態勢を取って8階へと進んで行く。
(あぁ~ちょっとドキドキする・・・」




