表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
厄災の始まりは 神戸 から  作者: Ryu-zu
第四章 東灘区 六甲アイランド 天使と悪魔
109/216

天使の憂鬱ー離婚の決意

簡易治癒を施した加奈子は廊下に出て連絡を取る。


{麗菜さん、聞こえるかな}

{な、なんですと?新しいスキルですか?}


(加奈子)そうなの、徳さんと連絡が取れなくて慌ててたら覚えちゃったのw}

(麗菜)あはは、これはとても便利そうなスキルですね~}


(加奈子)いきなり飛んでいっちゃってごめんなさいね}

(麗菜)大丈夫ですよ、明日桜ちゃんと緑ちゃんが理由を説明してくれました}


(加奈子)そっか~それは助かったわ、それでね麗菜さん}

(加奈子)もうそこはゴブリン居ないだろうから、8番街に行って様子を見て欲しいの}

(麗菜)はいっわかりました}


(加奈子)それでね、敵がゴブリン以外だったり誰かが怪我したら撤退して欲しいの}

(麗菜)わかりました。それはそうと、あの細男を私の眷属にしちゃダメですか?}


(加奈子)使えそうなら良いですよ、眷属化した方が問題は起きないだろうしね}

(麗菜)ありがとうございます、それでは頑張ってきます}



{フィルー、聞こえてる~?}

{{ヌオッ! ア、アルジヨ オ、オドロカス デ ナイゾ}}

(加奈子)あはは、いつも冷静なフィルでもびっくりするんだね~}

{{(フィル)・・・}}


(加奈子)麗菜さんには言ったんだけど、隣のマンションに行って、狩れたら狩ってね}

{{(フィル)ウムッリョウショウ シタ}}


(加奈子)でも、危なそうなら撤退してね}



{明日桜ちゃん、ちょっといいかな~?}

{わぁお~ 新スキルですか~?}


(加奈子)そうなの、ちょっと便利だね}

(明日桜)ちょっとどころかw}


(加奈子)麗菜さんとフィルには連絡したんだけど、言い忘れでね、7番街には行かないでね}

(明日桜)今、麗菜さんがみんなに説明してる所です}


(加奈子)朝に偵察した時に、7番街はとても強いのが一杯居たからね}

(明日桜)はいっわかりました、追加でみんなに言っておきます}



取り敢えず、置いて来たメンバーに連絡は取れた。


教室に戻ると、唐突に雲国紗衣が話を始めた。


(紗衣)お父さんもちゃんと聞こえてると思うけど、私ね、この機会に離婚しようと思うの。

今までもずっとずっと考えてきた事なんだけど、理由を言えば何から言えば良いのか悩むくらい色々ありすぎて・・・」


(彩花)おかあさん?・・・」


(紗衣)もう彩花も自立できる歳だし、こんな世界になってこんな身体になったからもう良いかなって思ってるの。

こんな人と結婚してしまった事が私の人生の大きな間違いだったって・・・」


(才楊)おまえが俺無しで生きていける訳が無いだろうが!」

口がきける程度の回復状態なのに、好き勝手に言われてアドレナリンが駄々洩れてきた。


(紗衣)お言葉ですが、あなたに何かをして頂いた事はまったくありませんよ?

あなたのせいで嫌な思いは沢山してきましたけどね」


(才楊)俺の稼いできた金で生きて来たし、おまえの行動はすべて俺の指示で()された事ばかりだろ!その恩も忘れて自分の権利ばかり主張しやがる!部下と同じ種類のクズだっ!!!」


(紗衣)生活費を家に入れるのは当たり前でしょ?その対価に私が家の事も子育ても家計のやりくりも、あなたの起こした問題の事後処理もすべてやってきたんですよ?

お金にしても、そのお歳で30年以上も働いて、(いま)だに課長にしかなれず、お給料も同期の方の半分も無いのは良く分かっているでしょ?

その癖に見栄っ張りで金使いの荒いあなたを、ずっと我慢して支えてきたのよ?」


(才楊)お、俺がいつ見栄を張った?役職は無能な部下が俺の足を引っ張ってるからだろ!」


(紗衣)部下の悪口をよく言うけど、あなたの部下がどんどん出世(しゅっせ)して、あなたの上司になっていくのをどんな思いで見てきたのですか?

今の部下さん達も、何度もいきなり夜中に家に連れて来てたけど、あなたが寝た後にお話を聞けば、相変わらずな事やってるのを何度も何度も聞かされましたよ。

相変わらず他人に向かって『オレ以外はみんなクズっ』って言うけど、自分だけがクズだって事を、いい加減に気づいて下さいな」



普段は夫に絶対に逆らわない妻紗衣(さより)が、ここまで一気に捲くし立てた事に夫の才楊は驚きを隠せない。

しかし、言われっぱなしで黙っているほど出来た人間でも無い。


(才楊)お、おまえは誰に向かって言っとる!俺が今まで間違った事があるかっ!同期の奴らも部下だった奴らも、どうせ裏で汚い事をしてるのは分かっているんじゃ!

おまえも、家事育児を全部やったとか言いやがるが、三食昼寝付きの分際で家事や育児をするのは当たり前やろがっ!」


それを聞いていた半田檸檬は大きく深いため息をついて独り言のように呟く。


(レモン)もうこんな不毛な言い争いは終わろうよ、奥さんが別れたいって言ってるんやから素直に解放してあげたらどうなん?

もうひとつ言えば、子供がおる専業主婦は昼寝なんてしとる暇なんかあるかぁっ!」


(彩花)うちは離婚に大賛成やで、お母さんとは血の繋がりも無いのに良くしてもらったしね」

(紗衣)えっ?知ってたの?ってか、いつから?」


(彩花)高校の卒業旅行の時、パスポート取るのに戸籍謄本見たからなぁ」

(紗衣)そんな前から… でもそれからもずっとおかあさんと呼んでくれてたんだね…」


(彩花)ショックだったよ、だからおとんとおかあさんとのDNA鑑定もしちゃったの」


(才楊)お、おまえは俺が信用出来んかったんか!」


(彩花)はぁ?戸籍謄本に養女ってあったら誰でもショック受けるやろが?

それで真実を知りたいって思うんは普通やぞ?それでなくてもウザイ親父やねんから。

おまけに、おとんとは血縁あるけど、おかあさんは100%他人やってDNA鑑定の結果や。

しばらく落ち込んだけど、おかあさんはいつでも優しいしうちの事大事にしてくれとったからな」


(才楊)そ、それでも俺の娘には違いないやろが」

(彩花)あほやで、それがいっちゃん嫌やねん、それくらい分らんのか」


(才楊)お、親に向かってなんちゅう事言うんじゃ!

(彩花)ウッザイなぉ~ なぁ、もうこうなったらさぁうちの出生をおしえてくれへん?」


(紗衣)じゃあハッキリ言うわね。あなたのお母さんはこの人の会社の部下の女性なの」


紗衣はもう包み隠さず皆の前でもいいから彩花に本当の事を告げて、これからの人生をやり直す事にシフトしていって欲しかった。


(紗衣)ちょっと話が長くなるけど、良いかな?加奈子さんも聞いておいてください」


(その場の人々)はいっ・・・」


高校を卒業して、紗衣(さより)がまだ19歳になる前に半お見合いの様に、才楊の知人と紗衣の父が決めた事で結婚した二人だが、元々動物好きだった紗衣は、共働きで動物を扱う仕事がしたいと言っていた。    が、才楊は『妻は家に居るもんだ』と言い張りそれはかなわなかった。

そして嫌がらせの様に、ペット禁止のマンションに移り住み、神戸に引っ越してきた際もやっぱりペット禁止のマンションを探して借りている。


それなら20代前半のうちに早く子供が欲しいと言ったのだが、今は無理だと何度も言われ、夫婦生活も新婚から2年ですっかりセックスレスになってしまい、またそれも叶わなかった。


紗衣が21歳になったある日、お腹が大きい女性が親を伴って家に尋ねて来た。

その親娘が言うには、お腹の子は才楊の子であると。


会社の勘違いで、入社3年で係長に出世した才楊は、自分が偉いと思い違いをしていた。

新卒入社し才楊の部下となったその女性は、才楊のターゲットにされたようだ。

嫌がる女性に『俺の部下なんだから当然だ』と上から目線で脅されて、社会の実情を全く知らない女性はセックスを強要されてその行為に至っていた。

中学高校と良い大学に入るために勉強しかしてこなかった小娘が、狡猾な大人の策略に抗えるはずも無い。


紗衣よりは年上だが、その若い肉体におぼれ、2年も抱き続けてきた嫁に興味が持てなくなり、事有るごとにその女性をおもちゃにしていたようである。

そして、妊娠が発覚した時にはもう200日を過ぎていたので堕胎も出来ず、誰にも話せずに会社をひっそりと辞めていったそうだ。

会社を辞めてからも、携帯で呼び出してセックスの強要は続き、そして臨月でお腹が目立つようになって初めて母親に涙ながらに相談し話し合い、その日に至った。


(才楊)ち、違う!あれは合意の上やったんや!相手も俺の事が好きやったんや」


紗衣たちはチラリと才楊を見たが、無視して話を続ける。



そこからの紗衣の行動は早かった。

まずはその母娘を出産までの間、自分の家に住まわせて世話をし、病院も家の近くに転院させた。


出張から帰った才楊は玄関先で、迎えに来なかった紗衣に怒声を浴びせかける。

だが、リビングに入った瞬間に身も心も凍り付く。


母親は、刑事と民事で争うと言い張るが、娘は子供さえ無事に引き取ってくれれば良いと提案する。

それでもハラワタが煮えくり返る思いの母親から、才楊は罵声を浴びせられても反論しかしない。

一言謝れば状況も変化するだろうに、相思相愛だったと言って引かず反省の欠片も無い。

女性はもちろん愛情等無いと拒絶する。


結局、証拠不十分で刑事事件にはならず、民事裁判でも、ホテルに付いて行ったのは女性にも非が有ると言うような風潮がある時代の為、慰謝料もたった80万しか取れなかった。

それは、妻が居るのに妊娠出産させた事に対するだけの慰謝料である。

本当に女性が生きづらい時代だった。


紗衣は、予定日が近づくと、毎日朝から病院にお見舞いに行っていた。

女性ともすっかり仲良くなったが、最低限の一線は超えない様に務めていた。


そうして生まれた子が彩花である。



(レモン)ほんっとうに酷い男ね、良く今まで我慢してきたよね」

(徳太郎)あぁ。聞いてて気分が悪くなってきた」

(徳太郎)雲国さんは最初からおかしな人だとは思っていたけど、怪我が治ったら悪いがここから出て行ってくれるかな?紗衣さんも彩花ちゃんもそれで良いかな?」


(彩花)うちらの為なんやったら、うちとお母さんが出て行くで?」


(徳太郎)ちゃうよ、さっきの戦闘もまったく言う事聞かんし、おまけに実力も無いのに勘違いしてゴブリンに向かって行って返り討ちに逢う始末。 今後こんな人が居るととばっちりで怪我する人が出て来る。 それだけは有ってはならん事なんだよ」


(須布)そうやで、最初に簡単に倒せたんは徳さんが火の絨毯で弱らせてくれとったからって、なんであんたはわからんのかなぁ?」

それまで、須布来人は、自信が浮気が原因で離婚した事が2度もあるので、話には入らないつもりだった。

でもその話は終わり、戦闘場面の話になったので急にしゃしゃり出て来た。



『エンジェルヒール』

加奈子は才楊を完全治療し、いつでも出て行けるようにした。


『その木刀は、戸弩力ファミリーからの選別です』



才楊は紗衣だけを睨みつけ、黙ってそのまま部屋から出て行った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ