悪役令嬢現代の旅(あらすじ)
王子から断罪され婚約解消され、失意のどん底に陥る悪役令嬢はそこで意識を失う。
意識を戻してみると何かがおかしい。意識を失う前にいた場所と明らかに違う場所。質素な室内、ここは噂に聞く王城の地下牢という場所だろうか、その割には物であふれている。彼女は室内を物色する。
天井に取り付けられたランプとは違う光、床に敷かれた変わったベット、巨大で黒い板切れ、絵画が描かれ底に突起のある板。見慣れないものだらけだった。
ふと鏡を見るとそこには自分ではない自分がいる。黒い髪、黒い目、何より平べったい顔つき。
そこで悪役令嬢はもうひとつの記憶、いや人格を思い出す。この鏡に映る人物はゆんという日本人女性で、高校生で、陰キャぼっちであるということを。
この状況を元悪役令嬢は考えてみる、ゆんの記憶も探りながら。
そして、現ゆんは低いテーブルちゃぶ台というらしい、に設置されたのーとぱそこんのきーぼーどなるものを指で叩きまうすなるものをくりっくして操作する。
がめんは変わり、げーむ画面が起動、そこにはシンフォニアセルンという文字が表示された。そしてつづきなる文字をくりっくすると、さらにがめんは変わる。
そこには見覚えのある画面が写る。王宮の謁見室、王子と平民の女、その取り巻き、ほかの貴族達。
そして、その中央に自分だった悪役令嬢が意識を取り戻して立ち上がり、最低限の礼をして承知いたしました、と立ち去るシーンだった。
信じたくないが、自分のいた世界はおとめげーといげーむの世界で、平民の女がひろいんとして后として選ばれ、自分はあくやくれいじょうとして断罪され、婚約を解消され、行き遅れの女として惨めに生きていく、という結末だった。
この画面とゆんの記憶を照らし合わせると画面の向こうが自分の世界だったといことになる。
信じられない。自分の人生は何だったのか、と。18年公爵令嬢として生きてきて、王子の婚約者として教育を受け、自分を殺して生きてきたというのに、全ては無駄、いや絵空事であったということに。
絶望するユン。
だが、画面は続く。画面の向こうの悪役令嬢は謁見室から出てしばらくしてほくそ笑むのだった。そして、つぶやくのだ。
「ここシンフォニアセルンの世界よね、で、わたしは悪役令嬢。このままでは人生が詰む、かくなる上は隣国に落ち延び、そこで現代知識とこの世界の魔法を活かして一旗あげるしかない。頑張れワタシ。」
ユンは思った。誰だこの画面の悪役令嬢は、私ではない誰かである。
悪役令嬢は言った現代知識と。
ここでユンはひとつの考えに至る。悪役令嬢である私がこちらの世界でユンとなったならば、ゆんはどうなった?
画面の向こうの悪役令嬢は私ではなく、ゆんではないのか?
ならば辻褄が合う。私はこちらに飛ばされた際に、ゆんはあちらに飛ばされたわけである。理由は分からないが、そう仮定するとすっきりする。
あちらの世界はゆんに任せるしかない。ならばこちらはどうするのか。考えるまでもない。
私はゆんとして生きていくしかない。そしてこちらでは庶民である私は自分を殺すことなく、自分の実力で得るものを得てみせよう。
とりあえずは明日から私立聖陵学園に通い、いんきゃぼっちなるものから脱出して、思うように生きてやる。
こうして、元悪役令嬢、現ユンの物語は始まる。
この後、彼女はその教養と気の強さ、何故か使える魔術をこっそり駆使して、いんきゃぼっちから抜け出し、シンフォニアセルンの王子たちを彷彿とさせるイケメン達を叩きのめし、夏休みはロードバイクで全国を巡り、旅先で意中も人を見つけるという充実した学園生活を送ることになるのだった。
またあらすじかよ、と怒らないで。ほかにもいろいろアイデアがあるので、そのあらすじ全部書いておきたいんです。