第2話 氷川武蔵という男
廊下を出ると氷川さんは、ペットボトルを渡してきた。
僕「ありがとうございます。」
氷川「礼には及ばないよ。一つ言い忘れていたことがあってね。君は異能者になった。なる前の記憶や名前は憶えていなくて当然なんだ。僕もそうだったからね。」
僕「え?たしかに、名前が全然出てこない。」
氷川「まだ何も分かってないんだがそういうことがある。」
僕「名前が分からないのは困りますね。どうにかして思い出さないとな。」
氷川「僕が考えた奴ならあるけど?」
僕「氷川さんが考えた奴ですか。どんな・・・?」
氷川「西野白虎ってどうだい?」
僕「かっこいいですけど、名前負けしそうです。」
氷川「そんなことないと思うよ。」
僕「じゃあ、それでお願いします。」
氷川「それでこれから、僕の仕事場行くんだけど大丈夫そう?」
僕「はい、ぜひとも」
仕事場は、階段を上ってすぐのところにあった。
ドアには「内務省異能者係」と書かれた看板があった。
氷川「ここが僕の仕事場だよ。白虎くん。」
僕「ここが・・・?」
???「おい、氷川。どこに行ってやがった?こっちはお前のせいで仕事が増えてんだ。早く手伝え。」
氷川「ごめんごめん。この子を迎えに行っててさ。」
???「うん?あー、【白虎】か。なら仕方なくはないな。まぁ、いい。おれは鹿島常陸だ。よろしくな。」
僕「西野白虎です。よろしくお願いします。鹿島さん。」
鹿島「まぁ、客はその辺でくつろいでおけ。氷川は手伝え。」
氷川「えー。なんで僕は。仕事に行ってきたようなもんじゃないかー。」
鹿島「うるさい。黙って手伝え。」
氷川「あ、係長は?」
鹿島「係長なら今日は帰ってこないとか言ってた気がするが・・・」
氷川「えー?せっかく白虎くん連れてきたのになぁ。」
二人は黙って書類の整理などを行っていた。するとドアから女性が入ってきた。
???「あら、お客さんなんて珍しいわね。」
氷川「鹿島くんの連れ子だって。」
???「あらまぁ、かわいそうね。」
鹿島「二人とも失礼だろ。こいつが【白虎】の異能者だ。」
僕「西野白虎です。」
???「この子が白虎なの?可愛いじゃない?」
氷川「あー、白虎くん気を付けてね。彼女ショタコンだから。」
???「ちょっと氷川。ふざけないでよね。わたしショタコンなんじゃないから。白虎くん、私は寒川相模よ。よろしくね。」
僕「よろしくおねがいします。」
氷川「ねぇ、寒川くん。係長どこ行ったか知らない?」
寒川「係長は、今日有給取ってたはずよ。」
氷川「有給?俺らは働いているのに?」
鹿島「おまえは働いてないだろ。」
氷川さんのイメージが少し揺らいだ会話だった。