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短編、その他

素敵な殺し合い

作者: 大野 錦

大野錦(筆名)と申します。


なんか変ものを書いてしまいました。

こういったものは受けるのでしょうか?

よろしくお願いいたします。


 ある日の夢の中だった。私は『神』からのお告げと『神の力』としか言いようのない不可思議な能力を受けた。

 おっと!『神』と言ったが、これは私にはこの現象を他に適切に合わせる言葉を持ち合わせていないからであって、私個人は何か特定の宗教・宗派の熱心な信者ではない。

 無神論者というより、神無関心論者という立場だ。


 さてこの夢の中で私に語りかけた『神託を告げる超越的存在』とも『無意識化における自らが生み出した形而上の意志』…。

 ああ、自分でも何を言っているかわからない!だから『神』と言っているのだ。

 ひょっとしたら『神』というのは、こういったわけのわからない現象を体験した時に表す言葉であり、概念なのだろう。そういう意味では実に便利な言葉である、『神』は。



 『神』のお告げは要約すると以下になる。


 -汝に、超越的な力を与えん。汝がそれを使うは自由なり。ただし己の私利私欲に使えば、破滅すると心得よ-


 目が覚めたとき、『神』のお告げははっきりしているが、その姿はまるで分らなかった。

 灰色のもやがかかった中から聞こえたような気もするし、透明なアメーバのような形をしていたかもしれない。

 お告げははっきり覚えていたが、お姿は目が覚めた瞬間すぐにおぼろげになってほんの数秒で忘れた。


 さて超越的な力とはなんだ?

 これが不思議と目が覚めると、すべてを先験的(アプリオリ)に理解していた。

 まず、自身がタイムトラベルができると分かった。

 そして私は次の日タイムトラベルの実験をした。


 翌日の朝、私は朝食に牛乳を飲んで、そしていつもの生活をして、夜を迎えた。そこでタイムトラベルの力を使ってその日の朝に戻った。

 朝に戻った私は朝食に牛乳ではなくコーヒーを飲んで、そしていつもの生活へ送った。


 結果を言うと、その日の2回繰り返した日常は、全く何の変化のない。ただのループだった。

 何を選んでも未来の形は変わらないのか。ある程度、いやかなり極端・過激なことしないと未来の形は変わらないのか。さて私は明確に未来が変わるであろうタイムトラベルにおける策を講じた。



 1913年2月のウィーン。タイムトラベルはともかく、外国へ自由に行くのは、さて私利私欲かな、と思いながら、私はある人物に会いに行った。その人物いる場所は千里眼で確認済みだ。

「ジュガシヴィリ同志ですね。どうも、あなたのご活躍をよく知っています。民族問題の論文を着手していると、お聞きしています。私に何か手伝うことはないでしょうか?」

 この言葉はロシア語である。世界中のあらゆる言葉も私は自然に話せるのだ。

「なんだ、お前は!官警のものか?同志ジュガシヴィリはお忙しいのだ。去った去った!」

 取り巻きの荒くれどもに私はあっさり追い出されたが、最後にジュガシヴィリ同志に声をかけ彼にメモを渡した。

「ここは画商を装っていますが、実はあなた方のような革命家たちを監視する拠点の一つです。ここをどうにかしないとあなたたちは大変な目にあいますよ」


 次に私があったのはジュガシヴィリ氏より10歳は若い若者だった。絵を描いていて、描き上げた絵を並べている。絵の右下には「A・H」筆名が描かれていた。私は声をかけた。今度はドイツ語だ。

「これは素晴らしい絵ですね。これが欲しいのですが、いくらですか?」

 若者は不機嫌そうな顔でこっちを見て、こう言った。

「すまないが、これらはすべて明日画商に売るんだ。欲しいのなら、明日にでも画商に行ってくれ」

「その画商の住所を教えてください」

「ここだよ」

 若者はメモを渡してくれた。その住所は先ほどジュガシヴィリ氏に渡したメモと同一である。

「この画商は評判が悪いと聞きました。ひどく高く売りつけると。それにその辺りは強盗がよく出て治安が悪いとも」

「絵を売るのは私の仕事じゃないからね」

「でも不安です。申し訳ないですが、この絵だけでも私に売ってくれませんか?一枚くらい画商に売る絵が少なくても大丈夫でしょう?」

 渋る若者にかなりの紙幣を渡し、無理やり承諾させた。


 

 さてその日の夜、私は今日会った二人に強い暗示をテレパシーで送った。

 片方には「外国から来てウィーンの滞在でストレスがたまってるのなら、例の画商を装ったスパイの拠点を襲え」と。

 もう片方には「ウィーンはさまざまな民族が入り混じるろくでもないところだ。あの画商に外国人の過激主義者が襲いに来るから退治しろ」と。

 ついでに画商には明日不在のままがいいと念を送った。


 次に日の朝。私は遠巻きに例の画商店を遠望した。

 まず若者が描き上げた絵を持って入っていった。いつまでたってもこの若者が出てこないのは画商がいないのと、不審者が現れないかどうかを待っているのだろう。

 そして、しばらくしてジュガシヴィリ氏が入り、ほどなくして中で大騒動となり、双方の叫び声が上がり。ほどなく静まり返った。



 翌日の新聞を私は読んだ。小さな記事だが、とある画商店で二人の男が言い争いになり、ついには乱闘となり、運悪く共に打ちどころが悪く死亡したという記事だ。

 一方の名を水彩画家アドルフ・ヒットラー。

 一方の名を革命家ヨシフ・ジュガシヴィリ。

 補足として革命家ジュガシヴィリのほうは論文に着手していて、その筆名は「スターリン」である。


 さて、私はここまで見届けたので、自分の時代へと戻ろうと思う。

 未来。つまりこの些細な乱闘による死亡事件で歴史は変わったのか?

 私が以前実験した牛乳とコーヒーと同様に結局変わらないのか?

 

 いずれにしても間接的とはいえ、二人の人間を殺した私は何らかの破滅があるのか?

 まぁ、神無関心論者である私にはどうでもいい話だ。


読んでくださった方ありがとうございます。

本当はベタベタなファンタジー冒険活劇が描きたい大野です。

1日に数行というペースなので、発表されるのはいつの日やら。(汗)


補足、下記のリンクも読んでくれたらありがたいです!


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