第5話 朝チュン??
「ん…あれ?」
私、白井 夏紀が目を開けると見慣れない景色だった。
まるで森林浴に来たかのような清々しいほど緑と朝日に囲まれた目覚めだ。
そしてその森林には似合わない肉が焼ける匂い。
私は不思議に思い体を起こす。
「おはよう」
寝起きの私の目の前にいるのは幼馴染の夜城 冬希。
「あれ…私昨日…」
私はゆっくり昨日の記憶を探す。
「始業式の日に異世界に転移させられて…城から抜け出してきて森で寝て…」
「そうだよ、そして俺は今朝ごはん食べてる」
そういう冬希の口の周りは肉の油でもついたのかテカテカしている。
「ユッキー口の回り汚しすぎ…」
「…えっ」
「ん…?あっ」
ユッキーは幼いころの夏紀が冬希を呼ぶときの呼び方だ。
「おはよう、ナツ」
反撃するかのように昔の呼び方をしてくる冬希にやっと回転を始めた自分の頭が羞恥心を刺激する。
「う、うるさいバカ!」
私は恥ずかしさで顔を隠した。
「ここに顔洗うための水とそこで取れた木の実と飲料水。少しだけ離れとくから準備してて。」
そういうと足音とともに離れていった。
「そっか…私、みんなを置いてきちゃったんだ…」
あの時は必至でそれどころではなかった…は唯の言い訳だ。
助けたい…。しかしユッキーが昨晩言ったように、ここで助けに行っても逆に捕獲されるかクラスメイトが協力者として殺されてしまうかだ。
だから私はみんなを信じるしかない。
「よし…しっかりしろ私!」
自分の頬をパチンとたたき顔を洗う。
顔は持参したハンカチで拭い、ユッキーが準備してくれた青く丸い木の実を食べる。
まるで梨のように口の中で甘い果汁がはじける。
「異世界の食べ物ってわりとおいしいのね…」
異国の料理が自分の舌に合わないみたいなことがあるかと思っていたがそんなことはなかった。
「いや…ユッキーが合うもの持ってきてくれたのかな」
そんなこと考えながら完食した。
「ごちそうさま」
「味は大丈夫だった?」
「うん、おいしかったよ」
偶然か食べ終わったタイミングで冬希が戻ってきた。
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俺達は支度を追わらせすぐに移動を開始する。
隣を歩くナツの長い髪が風に揺られ安らぐ匂いがこっちまで来る。
「そういえばユッキーの能力の中に【封印】ってあったよね?」
「そうだな。そういえば詳しい説明してなかったな」
俺は自分の能力を写した紙をナツに見せる。
「まず<EGO>は俺の能力の中で1番特殊で自作なんだ。魔術で作り出した人工知能の認識でいいよ。それで【封印】は俺も俺の自作で特定の条件を満たさないと解除されない魔術で、これにはそうとうのことがないと解除されない」
「ん?自分の能力で自分の能力縛ってるの?」
「そりゃ…日常生活で逆に困りそうだからだよ」
身体強化は自分がしなければいいし、危険察知は特に害はないが<常時回復>は擦り傷をすぐに治してしまうからだ。
そんなところを他の人に見られたら間違いなく化け物扱いで生きていけないだろう。
そうやって自分の能力を制限し、元の世界に適応していたのだ。
「それは確かにそうね…。そういえば【封印】解除の条件って?」