第4話 仲直り
「別の世界…?」
「そう。夏休みに入る2週間前くらいかな。俺はそこから約3年の月日を過ごして帰ってきたんだ。そこで手に入れた能力がまだ残ってて、それを使ったってところだな。」
「1人でこんなわけわからない場所に3年も…?」
「そうだね。ま、人がいただけこっちがマシかな。前の世界では転移先ただの草原だったし」
1人で誰も知り合いがいない世界であてもなく生き続け、無事生還したその苦労は私には想像することすらできない。果てしない苦労と辛さがあったことだろう。
「私は冬希から距離を取りたかったわけじゃないの…。ただ急に大人びたというか、すべてがつまらなさそうな冬希が怖くて…自分が怖くて離れたくせにこんな状況になったとたんこんなこと言うのも悪いのはわかってる・・でもお願い。私を…助けて!」
「何言ってんだか、協力して生きていくんだろ?」
私はその冬希の言葉に涙があふれてきた。
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「まさかそこまで重く考えていたとは…。」
雰囲気から見た目まで、転移前と変わらないようにしていたが…幼馴染の目はごまかせなかったらしい。
夏紀は今、疲れたのかぐっすり眠っている。
すでにあたりは暗く、森の中なので油断はできない。
本当なら寝ても敵に反応して<戦闘補助システム:EGO>に起こしてもらうことも可能だが、俺は考え事のために起きている。
それは自分の封印についてだ。
俺のステータスはこうだ。
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夜城 冬希 《やしろ ふゆき》
・身体強化 <Lv.1~10>限界突破Ex 【封印】上限Lv5
・危険察知 <Lv.MAX>
・直感
・戦闘補助システム <EGO> 【封印】戦闘スキル
・魔力強化 <Lv.1~10>限界突破Ex
・魔導術 <Lv.1~10>限界突破Ex 【封印】上限Lv0
・即死耐性 <Lv.10>
・状態異常無効 <Lv.10>
・常時回復 <Lv.Ex> 【封印】上限Lv0
・自動生命維持 <EGO>
《祝福・覚醒》
2分間全戦闘技能を10倍にする。
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《祝福》の能力は破格だがこの能力は確実に危険だ。
身体能力10倍なんて純粋に体がもつわけがない。
証拠に俺の能力を見たとき女王の顔…消耗品を見る目だったしな。
あいつ絶対許さない。
それはともかく、これからどうするかだ。
王城であれほどやらかした俺たちはもうこの国にいることはできないだろう。
王城を囲うように広がる街はとても賑やかで、余計に戦争中とは思えなかった。
しかし俺たちはその街にすらいることができないのだ。
こうなったら俺達は別の国を目指すしかない。
俺は横でスヤスヤと寝息をたてる夏紀を見る。
「とりあえず、この夜を乗り切らないとな」
俺は背後から忍び寄ってきていたトラのような生き物に裏拳を叩き込む。