患者E
窓の向こうの景色を、ぼんやりと眺めている少年がいた。彼は、机にあごを乗せつつ、窓のある左側へ顔をじっと向けている。傍目から見ると、腰に悪い姿勢で昼寝しているようにしか見えない。
しかし、当の彼は、傍目や姿勢のことなど構わない様子で、外の景色に見とれていた。完全に夢中らしい。
確かに、そこから見える景色は、雄大で素晴らしい物だろう。敷地外には、明るい黄緑色の草原が広がり、風によるさざ波が立っている。広大な草原を越えた先には、切り立った連峰が見え、残雪が日光に反射して白く輝いている。
自然の要素だけでなく、人工の要素も映えている。その連峰の右側にチラリと、数棟のビル群が見える。ただ、高層ビル群ではなく、謙虚な雰囲気のある地方都市だ。
自然が育んだ草原と連峰に、人間が育んだ街が加わることで、雄大で素晴らしい景色が構成されている。彼がそれに見とれること自体は、何も問題ない。
「江坂君! 宿題は終わった?」
江坂という名前の彼に、いきなり声をかけた少女がいた。素晴らしい景色に見とれている最中にだ。
「……うん、もう終わってるよ」
嫌な顔を少しも浮かべず、彼は返事する。心が広いようだ。
「ホントに、この眺めが好きなんだね~」
もう何度も同じ事を言っているような口振りで、彼女はそう言った。
「早く外へ出たいよ。そしたらまず、あの草原を駆け抜けるんだ!」
「へぇ、なんかドラマチックだね!」
ありきたりな表現だ。まあ、彼の願望も、十分にありきたりなのだが……。
彼らがいるのは、典型的な内装の会議室を利用した「教室」だ。かっこ付けしたのには、少し複雑な事情がある。
この建物や敷地は、特別な病院だ。ここでは、ある「難病」に関係する子供たちが、生まれてからずっと入院生活を送っている。そこで、院内学級として、この空き部屋を教室として運用しているわけだ。これは病院からの厚意であった。
「みんな、おはよう」
ちょうど教室に「先生」がやって来た。院長の妻だ。初老の彼女は、元気で明るく優しい物腰を持ち、子供たちには慕われている。そのおかげで、宿題をサボる子供は滅多に現れない。
……ところが、今日の彼女は元気が無い。教壇代わりの長机の上に、両手を力無く置いているし、頭が前へ垂れているからだ。
「あの、何かあったんですか?」
先ほど江坂に声かけした少女が言う。いつもと違う先生の様子に、少しばかり不安になっている。ちなみに、この少女の名前は、藤原と言った。
この藤原も江坂も、ここでの生活は長い。しかし、彼らはまだ小学生相当だから、大人の事情を察するのは難しいはずだ。
「……実はね。前田君が脱走しちゃったみたいなのよ……」
先生はそう答えた。悲しそうな口調だ。やはり責任感からだろう。
脱走した前田という少年も、ここの入院患者だった。彼の年齢は、江坂や藤原よりも少し上だったはずだ。
「いつ、どこから逃げたんですか?」
江坂が尋ねる。彼は、敷地外に見える美しい景色が好きなので、前田の脱走が羨ましく感じているんだろう。興味が湧くのは、自然な反応だし、子供にはありがちだ。
「……わかってるのは、昨夜逃げちゃったという事だけよ。さあ、今日も授業を始めましょう」
先生はそう言うと、机にテキストを広げる。彼女としては、これ以上話題にしたくない気持ちが強いのだろう。
江坂はそれを察したらしく、黙ってテキストをめくり始める。自分も脱走する気だということを、少しでも気づかせないようにしたかったはずだ。
「ねえ、江坂君?」
教室から病室へ戻る帰り道。江坂は藤原から、階段の踊り場で声をかけられた。立ち止まった彼は、階段の上下を見回す。誰もおらず、足音や話し声も聞こえない。
「いつ脱走するつもりなの?」
念のためか、彼女は小声で言った。それも、手早くストレートにだ。
「……実は今夜」
「ええっ。昨日で今日は危なくない?」
江坂と藤原は、付き合わっているわけじゃないものの、同い年でよく話す仲だった。そのため、彼は隠し事はせず、彼女も告げ口しようとは考えていないはずだ。そもそも、彼が脱走の計画を立てていることぐらい、以前から知っていた。
「余計な対策をされちゃう前に、早く逃げたほうがいいからさ」
「なるほどねえ。……私も一緒じゃダメ?」
便乗する気らしい。
江坂が計画を練り、思案に暮れていた際も、彼女はそっと見守るだけの立場をキープしていた。しかし、昨夜の脱走が、便乗する引き金になったことは間違いない。
とはいえ彼女も、外への憧れが強烈になっていた。草原を越えた先に見えるあの街で、自由な新生活を歩み出したがっているわけだ。暗い夜景の中でほのかに輝く、あの街の明かりを見る度に、その気持ちが強まっていたことだろう。
彼の脱走に便乗する形だが、自分の申し出を受け入れてくれるはずだと、彼女は確信している。自信満々な気持ちに違いない……。
「いいよ。……でも、一気に走ったりできる?」
江坂は了承してくれた。とはいえ、不安がまったく湧かないわけではないようだ。
「大丈夫!」
彼女は言い切ってみせた。しかし、できないと答えたら断わられるかもしれないとは思ったはずだ。
「ルートはもう決まってるの?」
余計な追求を防ぐためか、彼女は話をさっさと進めていく。
「夜にときどき、病院の車が出入りしてるじゃん?」
「あの白くて大きい車だよね?」
「うん、そうそう」
運搬に使うトラックのことを言っているんだろう。週に一度の夜、あのトラックはここを出入りしている。
「今夜がその日なんだ」
たまたまとはいえ、幸先が良い流れだ。そのまま流れてほしい。
江坂は、トラックにこっそり乗り込み、脱走する計画を立てていた。本当にありきたりな作戦だが、真っ暗な草原の道(舗装や照明なんて無い)をひたすら歩くのは危ない。想定してみると、遠くに見えるあの街に到着する前に、道中で追いつかれてしまう危険性もある。
彼は、脱出計画の詳細について、江坂に話しこんだ。詳細といっても、子供でも思いつけ、子供がそれを理解できるような、シンプルな内容だ。でもまあ、シンプルなほうが助かる場合もある……。
――その日の夜。江坂は、こっそり病室から抜け出した。個室だから、最低限の手荷物を抱えて抜け出すのは容易だ。
だが、いくら個室とはいえ、目覚まし時計を夜遅くに、ジリジリとうるさく鳴らすわけにはいかない。彼は消灯後、自力で眠気に打ち勝ったわけだ。
廊下に巡回する看護師の姿は無い。彼はそれに安心しつつも、慎重に廊下を歩き、階段をソロソロと降りていく。まだ子供の癖に、隠密スキルが高そうな足取りだ。
病院の建物から出る前に、彼が寄ったのは藤原の個室だ。そっと小さなノックをして、中にいる彼女を呼び出す。
「…………」
しかし、応答は無い。もう一度小さくノックしたものの、それでも応答は無かった。
「まったく」
彼はドアを開け、ささっと中へ入る。置いていくつもりが無いなら、さっさと彼女を連れ出さなくてはならない。
「……藤原? あの、いる?」
彼の小声は、いつもよりトーンが低い。それも、恐る恐る発せられた口調だ。
なにしろ、消灯と締め切られたカーテンにより、病室は暗闇の奥深くに沈んでいる。しかも、脱走する半ばという非日常感が、普段は小さな恐怖心を、大きく強化させるのだろう。
「洗面所か?」
自身に聞かせるように言った、彼の視線の先には、ドアの下からわずかに漏れる光がある。洗面室に誰かいるらしい。だが静かで、物音は特に聞こえてこない。とはいえ、そこを何喰わぬ様子で、スルーしてしまうわけにはいかなかった。藤原がいるとすれば、そこだろうから。
彼は、慎重にドアノブを回して、洗面室のドアをパッと開け放つ。緊張感満ちる瞬間だ。
……しかし待っていたのは、酷く日常的な光景に過ぎなかった。お化けや幽霊が、手持ちぶさたな風貌でただ現れるだけでも、この世の奇跡だろう。そんな奇跡に期待はしていないと思うが、江坂は明らかに気落ちしていた。
なにしろ彼が目にした光景は、こんなときに、丁寧さを重ねるがごとく、髪型をのんびり整えている藤原だ……。彼は間違いなく、先ほどの恐怖心を忘れ去り、呆れと怒りの心を湧かしたことだろう。
そういえば、普段の彼女は、休憩コーナーへ本を返しに行くだけでも、身だしなみに注意をしっかり払うような少女だった。今回は、初めて外の世界へ出るわけなので、普段よりも長時間かけて、身だしなみを整えているようだ……。
「何やってんだよ?」
皆がそう思うはずだ。
不幸中の幸いなのは、着ていく服がもう決まっている点だった。服選びにまで巻き込まれていたら、夜が明けそうだ……。
そんなバカな結末を迎えるのは、彼だって嫌に決まっている。いや、本気で嫌だろう。
それを深々と裏付けるかの如く、彼は大急ぎで彼女の身だしなみを終了させる。無理矢理にだが、彼女の自業自得でしかない。むしろ、置いていかれないことに感謝すべきだ。
ようやく出発できた江坂と藤原は、少し足早に、いつもトラックが停まっているガレージへ急ぐ。彼女の遅れが原因だが、こういう状況だと、自然と足取りが早まるものだ。
そして、幸運なことに彼らは、巡回中の看護師に気づかれることなく、ガレージに到着することができた。おまけに、トラックはまだ出発していない。まるで、彼らを待っていたみたいじゃないか。
ただし、トラックの荷箱のドアが大きく開いたままだ。子供でも怪しく思うはずだが、台車が鳴らす車輪の音が聞こえてきた途端、彼らは荷箱内へ飛び込む。ここまで来たら引き下がれないものだ。彼らは、荷箱の奥へ奥へと進んでいった。それから、積まれていた物の陰に隠れたらしい。
その数秒後、台車を押すドライバーがガレージに現れた。江坂と藤原が荷箱に隠れる際、物音が鳴ったはずだが、ドライバーの男には聞こえなかったようだ。
男は、台車から荷箱へダンボール箱を積み込む。その直後、補助担当の男がクリップボードを手に現れた。挟まれた数枚の書類が、ペラペラと小さく鳴る。
「いいぞ。出発しよう」
「……ああ、了解」
荷箱のドアは閉められ、2人の男は規定の服装に着替える。そして、トラックを出発させた。荷箱内の江坂と藤原は、走り出した途端、さぞほっとしたことだろう。
ガレージから出たトラックは、病院の敷地内を走り、重厚な門を通過していく。いつも通りの流れだ。
これで江坂と藤原は、病院からの脱走自体は、見事果たせたことになる。一時の不運(藤原の身だしなみ)では、どうなるかと思ったが……。
トラックは、病院の門から50メートルぐらい離れた位置で停車する。粉々に割れたアスファルトの砂埃が、タイヤのそばで立っていた。同じような光景を、私はもう何度も何度も見ている。
運転ルームの男2人は、車内で待機している。よく見ると、それぞれバックミラーで、後方をじっとみつめているのがわかった。きっと、「今か今か」と「まだかまだか」とが入り混じった気分だろう。
停車から5分ぐらいが経ったとき、荷箱のドアがようやく開いた。慎重に開かれたドアから、江坂と藤原が地面に降り立つ。
彼らは、これ以上無いほどハッキリと、呆然とした顔を見せる。何かの儀式みたいに、周囲をグルグルと見回している。不格好な仕草で笑いを誘うレベルだが、笑うのは可哀想だ。真実が真実なのだから……。
なにしろ、彼らが目にしたのは、病院の窓から眺めていた景色とは、正反対のものだ。雄大な自然や謙虚な地方都市なんて、絶対に見つけられていない。
代わりに見つけられたのは、黒焦げなコンクリート製のビル、ひしゃげて塗装がすっかり剥げた車の残骸、木炭のオブジェと化した街路樹、風化されつつある何かの骨とかだ。それから、汚く濁ったダークグレー色に染まり切った空。
どこを見ても、清潔感のある病院とは程遠い場所だ……。不潔も不潔な場所だった。
彼らは締めに、自分たちが今まで過ごしていた病院を見つめていた。自分の目だけじゃなく、脳全てが信じられなくなっていそうな、哀れな姿を晒している。
説明すると、この病院および敷地は、大きく頑丈なドーム壁でしっかり覆われている。窓は1つも無く、出入口はさっき通り抜けた門だけだ。なので、本当の外の世界を、彼らは目にすることができない。
代わりに目にしていたのは、ドーム壁の内側に満遍なく貼り付けられたディスプレイからの映像だ……。それも架空の場所の。
「ゴホゴホッ!」
「おい、どうした!? ゴホッ」
江坂と藤原が苦しみ始めた。症状が出始めたらしい。
2人とも胸を押さえながら、地面に膝をつく。吐血を繰り返し、黒く汚れた地面を濃い赤色に染め始めた。ああ、もうじき死ぬ。
どうやら、2人ともダメだったようだ。私の妻は、死そのものを悲しむだろうが、私は結果が残念としか思えてこない。患者、いや、実験体の死には、心身ともに慣れ切っている。
それからスマートに感じるほど円滑な流れで、江坂と藤原は共に死んでいった。地面の血溜まりを寝床代わりに、彼らは仲良く倒れている。今はもう一寸たりとも動かない。
さっそく結論から言うと、彼らの死因は、強烈な放射線を全身に浴びたことだ。我々が患者に告げている難病が原因じゃない。そもそも、難病の話は嘘で、彼らは健康そのものだった。
むしろ、健康じゃないと困るぐらいだ。
なにしろ、彼らの正体は、患者じゃなくて実験体だ。崩壊した世界を未だに蝕み続ける放射線に、適応できる人間を造りあげるため、彼らは生まれてきた……。
トラックから男たちが降りてくる。彼らが着ている服装は、放射線対策が施された防護服だ。最新式だが、これでも対策は不十分で、野外活動には時間制限がある。これが外の世界における現実だ……。病院を覆うドーム壁のおかげで、なんとか生きられているに過ぎない。
もしかすると、江坂と藤原は死ぬ間際に、事情を察することができたかもしれない。なにしろ、彼らが倒れた場所のすぐそばに、昨夜脱走した少年の死体が、ゴロンと放置してあるのだから……。
たとえそれでも、意外と素直に死を迎えたものだ。たまには、ドラマチックな展開が起きてもいいのに……。
――私は、トイレ休憩を済ませると、画面の前に戻った。
画面の向こうで、防護服の男たちが、いつも通りの流れでテキパキと動いてくれている。江坂と藤原の採血は実施済みだ。
この分だと、時間制限のブザーが鳴るよりも前に撤収できるはずだ。その後に改めて、ゴミ捨てへ向かってもらう。
私がずっと見ているのは、この病院内や周囲のあちらこちらに設置された監視カメラのモニターだ。実験体をしっかり観察することが、院長である私の仕事の1つだからね。とはいえ、もはやメインの仕事と化している。この観察は暇でたまらなく、独り言が頭にポンポンと浮かぶ。
目の前で死んだ江坂たちは、いわゆる可哀想な子供だ。世界がこうなる以前はその通り。お涙頂戴な存在だ。
だが今の彼らは、我々からすると実験体でしかない。しかも、クローン技術で生まれただけの、替えの効く安い存在だ。
前にも言ったが、ここの子供たちは皆、生まれた時から患者の身だ。それも、ランダムに編み込まれた遺伝子により造られた、クローン人間である。放射線対策の研究をするために、生まれてきてもらった存在なのだ。
さらに言うと、両親に当たるサンプル役の大人は皆、とっくの昔に死んでいる。不幸で悲しい人生だが、彼ら自身はあまりそう思っていないようだ。おそらく、同じ「難病」を抱く患者という設定だからだろう。お互いに同情を投げかけ合えたからだ。
けれども、彼らは子供ながら、自分たちの難病に疑問を抱くことがある。毎日検診を受け、服薬も欠かせない。ところが、それだけの難病にも関わらず、体調不良に陥る者はたまに出る程度だ。感染せず、少しの注意で難なく過ごせるのだから、外の世界でも暮らせるはずじゃないかというわけだ。
そんな疑問が元で、脱走は時々起きている。見事脱走を果たせた患者は、さっき死んだ江坂たちや、昨夜死んだ少年(名前は度忘れした)だけじゃない。それなりにいる。
そいつらは皆、脱走せずにこの病院にいれば、表向きは患者として、比較的良い日々を過ごせるはずだ。まあ、実験体として、自由や将来に制限はあるが……。
しかし、外に広がる素晴らしい景色。……いや、素晴らしい映像を見れば、脱走したくなる気持ちが湧くのは必然だろう。
あのディスプレイは元々、我々の心を癒すために、わざわざ設置された贅沢品だ。現実に広がる過酷な景色を、少しでも忘れ去るためだったとか。確かに、素晴らしくリアルな発色具合だ。
生まれたときから患者の江坂たちが、本物の景色だと信じ切ったのは当然だろう。あの素晴らしく偽られた外の世界に憧れ、ここから脱走してしまうのも無理はない……。死体を放置してやるのは、せめてもの情けだ。
……だが実は、別に脱走しても構わないという裏事情もある。観察中の私が、江坂たちの脱走を見届けたのも、それが理由だ。
彼らが外で死んでも、実験体は放射線に敵わないという研究結果を得られる。もし死ななかったら、それこそ大収穫だ。人体における放射線対策が成功したわけなのだから。無論、そのときは拘束させてもらうが。
そんな裏事情があるため、わざと脱走者を出したほうが、むしろ得策なのが本音だ。責任者である私も、もはや黙認している。トラックの男たちはきっと、荷箱内の2人には気づかないフリをしていたことだろう。
それから、あの映像に関しても、我々は患者に真実を告げていない。騙されたままでいいのだ。
つまり、我々は割り切ることに決めた。わざと脱走を誘発しているように見えるだろう。しかし、この状況や倫理観を咎める者は、もう存在しない。政府や他の病院などとは、かなり昔から音信不通になっている。
これは開き直りじゃないが、我々には大切な決意があるのだ。
人類がまた、心身ともに健康に過ごせる世界を、絶対に実現する。その決意を我々は、祖父の祖父の祖父の祖父の祖父の代から、忘れずに受け継いできた。
それを実現するまで、我々は諦めずに挑み続ける。実験体である患者を造り、あんな外の世界でも生きられる人間を誕生させるのだ。我々およびこの病院の存在意義がそれだと言える。
……ここで、ふと思い出した一件がある。昔、我々の倫理観を咎めてきた実験体がいた。ちょうどあの場所で、その実験体が死に際に叫んだのは、
「みんな患者だ!」
という台詞だ。……いや、捨て台詞だ、捨て台詞。
我々は患者じゃない。患者じゃないはずなのだ……。