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はじめまして、君の名前は?  作者: 井上魚煮
第二章 とりあえず握手でもどうかな
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 初めて来た先週にも軽く探索しましたが、アレクの家で目が覚めて、落ち着いてきた頃に時間を尋ねると、もうこの街を出なければいけない時間になっており慌てて帰ったのです。アレクと会う前に一人で彷徨いていた短い時間だけが唯一の探索時間といえるでしょう。

 勿論、一人で探索しておりましたし、土地勘もなく、何か賑わう通りがありますねと向かえば、そこは聞いた事のある市場で。物珍しく歩いておりましたら、大人に追いかけられたわけですから──今日がほぼ初めてと言ってもいいでしょう。


「こんなことなら初めから誰かに案内を頼むのでしたね」

「え? この街に知り合いいるの?」

「うーん、いると言いますかいないと言いますか……」

「何その微妙な……ってああ、親同士が知り合いとか? その繋がりで助けてもらおうと?」

「まあ……うん、そうだね」


 知り合いと言ってもいいのかわかりませんが、家名を持つ者は認識しております。顔を直接見たことはありませんが、特徴と家名さえ踏まえておれば大丈夫です。

 サリクタの何処の分家が管理しているのかはわかりませんが、分家は分家です。ガル・ワガンダの頼み──向こうからすると命令かもしれませんが──を断れるなど、有り得ません。


「でもそうすると貴族ってバレるんじゃ? これってお忍びじゃないんだっけ」

「……あ」

「忘れてたな」


 そうでした。家名を出して“お願い”をすれば確実に叶えてくれるでしょうが、それと同時に大事になるでしょう。

 そこまで考えが及ばなかったことに、心の中で反省しました。まだまだ私は一人前には程遠いようです。


「ま、今後もあなたが望むなら案内くらいはするからさ。むしろ、よく先週は僕があなたを見つけるまで無事だったなと思ったくらいだよ」

「あの時は私も一生懸命でしたから……」

「いや、例え大人に見つからずに逃げ仰せたとしても、帰り道わかった?」

「……あ」

「僕と会ってなかったら大変なことになってたね」


 こちらを振り返って、アレクは呆れたように笑いました。

 それに“私の常識”だとこれでも普通のことですのにと少々悔しく感じます。私の常識がここでは通じないことはわかっていますが、やはり同じ歳であるアレクに言い負けると、アスとは違った悔しさがあります。

 アスは年上だからという言い訳ができますが、アレクにはそれができません。……これでも、同年の中では一番優れているとの評価をいただいているのですが。


 と、目的の場所に着いたのでしょうか。手を引いていたアレクが急に立ち止まったので、その背にぶつかってしまいました。また考え事に集中していたせいか、俯いていたようです。

 慌てて謝る私を不思議そうに眺めたアレクはきっと、私の劣等感など露ほど気付いていないのでしょう。


「よっし、着いた! とりあえずここで服買おうか。一着でも持ってれば充分でしょ」

「うん」


 目の前の建物を見上げます。ここが衣装保管庫なのでしょうか? それにしては小さ……いえ、これが普通なのですか。

 ……あれ? しかしアレクは今買うと言いましたよね? ということはここはアレクの衣装部屋ではなく……、


「こんにちは〜」

「あら、アレク×××じゃない! いらっしゃい!」


 中に入ると、外で見たよりも狭く感じました。それも左右の壁にズラリと並べられた衣服のせいでしょう。なるほど、こうして肩の部分に木枠を通して吊り下げれば、少ない面積でも沢山の衣服を保管できますね。なんて効率的なのでしょうか。


「そっちの子は? お友達?」

「うん! こいつの服買いにきたんだ」

「あらそう。ゆっくり選んでね」


 なんと、ここはお店のようです。

 衣服の業主でしょうか、長細い机の向こうから親しみのある笑みをこちらに向けながら手をひらひらと振ります。私は慌てて胸に右手拳を当てました。


「さ、選ぼうか。どれが良いかな〜」


 私が業主に気をとられている間に、アレクは壁に並んでいる服を選んでいるようでした。近付くと、一着取り出し私の前にかざします。


「うーん、どうやってもルドの高貴さは隠せそうにないから、どう頑張っても『お忍びで遊びに来ました』感が出ちゃうなぁ」

「本当ですか」

「うん。まあ仕方ないね」

「『慣れ』しかないですか」

「『慣れ』しかないね」


 そう言ってにやりと笑うアレクに、楽しくなって私も笑い返しました。同じ笑みになっていればいいな、と思いながら。



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誤字、脱字などありましたらご報告くだされば有難いです……なるべく無いように頑張ってるんですけど、それでもあるので……(´-`)
(わざわざご報告いただき本当にありがとうございます……!お手数おかけします……!)
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