表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はじめまして、君の名前は?  作者: 井上魚煮
第二章 とりあえず握手でもどうかな
37/56

035

お待たせいたしました。本日より第二章開始します。

よろしくお願いします。



一話目



「×××、あの××何処逃げ××××!」


 ばたばたと走る音が後ろから聞こえて、ぎゅっと唇を噛み締めます。あまりに酷いスラングで何を言っているのかわかりませんが、きっと私を探しているのでしょう。

 どうしてこうなったのでしょうか。自分はただ普通に市場を見ていただけですのに。

 確かに物珍しげな目でちらちらと此方を見てくる人も居ましたが、そんな事は普段からなので気にも停めていませんでした。

 もしかしたら、私の知らないところで何かやらかしたのかもしれません。あの人たちは、それを教えるために追いかけて来たのかもしれません。でも、今まで周りに居なかったタイプの人たちで、怖い。捕まったら駄目だと本能が言っています。

 このままだと見つかってしまいます。逃げ込んだそこは突き当たりで、壁は大人の背以上にあります。出っ張りもありませんし、登って逃げることは出来ません。でも今出て行けば、自分を探しているだろう人たちに見つかってしまうでしょう。

 どうしようと周りを見回していると、ふっと影が自分を覆いました。


「××、××どうし×?」


 びくりと背が泡立って、慌てて声の方を見ました。

 そこには、高い壁の上にしゃがんでいる子供が居ました。一瞬自分を探している大人かと警戒しましたが、その姿にほっと息をつきます。

 彼──彼女──どちらかわかりませんが、その子供は自分と同い年くらいのようでした。くりっとした大きな瞳に、さらりとした艶やかな髪は後ろで一つに縛られています。服装からすると男のようですが、確かここでは女もズボンを穿いて親の手伝いをすると聞いているので、本当にどちらかわかりません。


「××? どう××××? あ、もしかしてわか×××? ……えー、あー、……どうしました?」


 無反応だったためか何なのか、その子供は不意に綺麗な言葉を使いました。やっと訛りのない滑らかな“理解できる”言葉が聞こえてほっとします。ここも言語は同じだと聞いていますが、聞いたことのない言い回しや表現、言葉の速さに耳がついていけないのです。


「ええと、すみません。実は私もよくわからないのですが、追われているようで」

「は? 追われて××? ××××……、ええと、あ〜、……何を……したのですか?」


 また理解できないのに気付いたのでしょう。その子は私の表情を確認して、ちょっと困ったような顔をしたと思えば、頭を掻きながらまた言い直しました。


「いえ、私にも何がなんだかさっぱり……」

「あ〜、そうなんですね。……追いかけてきている人は知っている人ですか?」

「いえ、知りません。市場を見ていたら、声をかけられて。腕を掴まれそうだったので、避ければそのまま何かを言いながら追い掛けてきて……」

「は〜××××××……」


 こんな子供に事情を説明しても仕方の無いことだとわかっていますが、やっと言葉がわかる人に出会えたので口が緩んでしまいます。

 その子は何かを呟いたかと思うと、そのまま壁から──こちらに向かって飛び降りてきました。


「なっ!?」


 咄嗟に両手を出しましたが、まるで羽根がついているような軽やかさでその子は着地し、くるりと此方を振り向きました。

 ほぼ同じ高さにあるその瞳に見つめられ、少しドキリとしてしまいます。


「逃げましょうか」

「えっ?」

「あとで説明します。とりあえず僕に任せてください」


 その子はにっこりと笑うと、徐ろに私に向かって手を伸ばし──先程の大人に感じた不快感が今回はありませんでした──そのままひょいと私を持ち上げました。


「はっ!?」

「しっ! あまり声を出さないでください。見つかりますよ」


 はっとして口を閉じます。

 そんな私を見てこくりと頷いたその子は、私を肩に担ぎあげました。視界がその分高くなり、こんな同い年であろう子に担ぎあげられるなんてと少しだけ呆然としてますと、表の声が近くなってきました。


「ど、どうするんですか? 表に出て行けば捕まってしまいます! 何か私が悪いことをしたのでしたら謝りに行きますので、どうか通訳をお願いしたいのですが」

「はぁ? ××言う××。……っと、そんな必要はありません、逃げます」

「だからどうやって──」

「おっと、こんな所に居××金×××××××」


 見つかってしまいました。

 強ばる身体に、私を抱えている子が「チッ」と何か音を零します。くるりと身体の向きを変えられ、抱えられた私は大人に背中を向ける形になってしまいました。


「よーお××××××。残念×××××? ××××遅××××××××」

「あぁ?」


 その子が何かを大人たちに告げると、ぶわりと怒気が襲ってきました。一体何を言ったのでしょうか。

 そしてその子は私を抱えたまま、軽くしゃがみ込むと──


──飛んだ。


 いや、正確には“跳んだ”のでしょう。でも、飛んだとしか表現ができないほどの勢いで地を蹴り、眼下に壁の向こう側と呆然と見上げる大人たちが広がって──


──私は意識を手放しました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=676279195&s

誤字、脱字などありましたらご報告くだされば有難いです……なるべく無いように頑張ってるんですけど、それでもあるので……(´-`)
(わざわざご報告いただき本当にありがとうございます……!お手数おかけします……!)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ