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はじめまして、君の名前は?  作者: 井上魚煮
第一章 まずは自己紹介から
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 やはり、聞かなければいけない。


 そう思ったのは、ちょっと難しそうな顔をして書類を睨んでいる伯父さんを見かけたからだ。

 あの祖母との二度目の顔合わせから約一ヶ月が過ぎた。

 『レン・ヴィオク』の存続の件や、私が男になることによって生じるらしい問題を聞かなければと思いつつ、聞いたところで何か私にできるのか、ただただまた迷惑をかけてしまうだけになるのではないかと考えていたらこんなにも時間が経ってしまった。


 チキンだ? なんとでも言え。


 祖母は何故かとても静かで、あれから一度もこちらに来ていなかった。来ないなら来ないで、何を企んでいるのかと戦々恐々とする。私を諦めた……ってわけではないと思うけど、もし諦めてくれたのなら問題があるかもしれない男になるよりは女になるのだけれど。


 あの時。

 一回目の祖母の突撃の際に、伯父は私を抱きしめて言った。


──例え女になっても……男になっても、私を守るから、と。


 あの時は何の疑問も感じなかったが、改めて考えると『男になっても』という言葉はおかしい。

 祖母の目的は、私が女になって王子と婚姻し、ヴィオクの──自分の政治的立ち位置を上げようとするものだった。ならば、『女になっても守る』という言葉だけでよかったのではないだろうか?

 いや、男になったところで『王子のご学友』的立ち位置や『相方』『親友』『相棒』など、まあ言葉は何であれ傍に立つことはできる。だから男になっても守るという言葉も間違いではないが、まあ結びつきの強さでは婚姻が一番だろう。

 結びつきの強さはどうであれ、男女に違いはない。むしろ一人しか選ばれない(正妃とは別に妾とかの制度があるなら問題はないかもだけど)女よりかは、王子の手となり足となれる男の方が有利というか、選ばれる可能性が高いのではないだろうか?

 しかし祖母は女になること以外は認めていなかったし、その場にいた伯父もそれはわかった筈だ。ならどうして『男になっても』という言葉を続けたのか──……。


──男になったら、問題があるからだ。


 祖母の話を全て信じたわけではない。しかし、私が男になることで何か問題が生じるのも恐らく事実だろう。

 果たして祖母は、その問題を退けるために私を女にと強要したのだろうか。それとも本当に女になって王子と婚姻してほしかったのか。それまで後者の理由だけだろうと思っていたのに自信がもてなくなる。

 そうなると女になった方がいいのかもしれないが、祖母の駒にはなりたくない。王子に好かれないようにわざと堕落するのも手だが、伯父さんと伯母さんがつけてくれた家庭教師に迷惑がかかるかもしれない。それでなくとも、座学はガヴァルとガヴィーと一緒じゃなく、わざわざ私のために新しく雇ってくれたのだ。お世話になっている手前、手を抜くことはできない。

 王子に嫌われるようにするのも迷惑がかかるかもしれないし、かと言って当たり障りなく接すれば選ばれる可能性がある。


 『ガル・ヴィオク』の女は、ガヴィーが女になるのであれば二人いる。年上はもしかしたら対象外かもしれないので一人……ガヴィーだけ。

 『ガル』と『レン』だと『ガル』の方が上だから、政治的関係から、普通に考えれば選ばれるのなら『ガル』であるガヴィーの方が可能性が高いのだが──祖母には何かまた別の思惑があるのだろうか。いや、祖母はガヴァルとガヴィーの存在をちゃんとは知らない筈だから、もしかしたら私が女になってもガヴィーが女になるのなら、駒になるのはガヴィーかもしれない。


 なら、女になってもいいのかもしれない──いや、やっぱりガヴィーが駒になるのは駄目だ。


 中身が本当の子供じゃない私だから、こうしていろいろ考えて行動できているのだ。純粋な子供であるガヴィーが祖母の思惑通りに動くことになって掴んだ幸せは、果たして幸せと言えるのだろうか。

 駒にならないように動くことは難しいだろう。きっと祖母はガヴィーと顔をあわせる時にあの“いい祖母”のフリをする。きっとガヴィーは騙されて、祖母のことを好きになってしまうだろう。そうすればあとはもう簡単だ。子供は好きな人に褒められたいし認められたいから、言う通りに行動するだろう。


 私が女になって、ガヴィーを祖母から守りつつ行動するのが一番いいかもしれない。ああでも、やっぱり男にもなってみたいんだよなぁ。


 ざっくりと自分の今後が決まりほっとすると同時に、またこれによる不利益に考えを巡らせていると、頭が痛くなってきたので一度思考を中断した。

 あの熱のあと一週間は何もなかったのだが、暫くすると毎夜熱が出るようになった。昼間は何ともないのでいいのだが、夜熱が出ると朝起きた時にシーツがでろでろで気持ち悪いので嫌になる。

 最初は知恵熱かと思ったが、朝になるとすっかり落ち着いているので原因不明である。この世界特有の病気か? と思ったが、まあ夜に熱が出るだけで普通に動けているし大丈夫だろう。

 熱というか、こう、心臓が痛いというか、熱いのだ。え、わからない? 語彙力の欠如? うるせえ。これ以上どう説明すればいいのかわからないんだよ。

 血が逆流するような痛みは本物でないというか、多分気のせいなのだろうがとても熱く感じる。ちゃんと眠れているので、魔されたり眠りが浅いわけではないようだが──やはりこの世界の特有の病気なのだろうか。



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誤字、脱字などありましたらご報告くだされば有難いです……なるべく無いように頑張ってるんですけど、それでもあるので……(´-`)
(わざわざご報告いただき本当にありがとうございます……!お手数おかけします……!)
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