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はじめまして、君の名前は?  作者: 井上魚煮
第一章 まずは自己紹介から
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「レヴィーレ!」


 ばたばたと玄関に出迎えてくれたのはラハト伯父さんだった。起き抜けに私が居ないことを聞いて慌てたのだろう、ちょっと寝癖がついていて可愛い。

 小脇に抱えられた私を師匠から受け取ると、ぎゅっと抱きしめてくれた。今まで抱きしめられたことは何度もあるが、ここまで力強く抱きしめられたのは初めてかもしれない。


「よかった……心配したんだよ」

「……ごめんなさい」


 想像以上に伯父さんに心配をかけてしまったようで、心から反省する。玄関ホールには大勢の使用人が集まって、皆ほっと息をついているようだった。あとでちゃんと謝ろう。

 伯父さんは私を抱きしめたまま、顔を師匠へと向け「何があったか教えてくれるかい?」と尋ねた。


「どうやらレヴィーレ様は早朝のジョギングをしていたそうです。身体作りにと指示した私の責任です、申し訳ございません」


 すっとその白い頭が下がったのを見て、私は慌てた。

 確かに毎朝ジョギングするようにと言われたのは確かだ。しかし、私はその前から散歩を日課にしていた。毎朝ではないが、皆が朝食をとっている時間が暇で許可をとって走っていたこともある。

 師匠も今日のこの私の失態は私の責任なことはわかっている。が、それを言わずに自分の責任だと言っているのだ。


「ち、違います! 師匠のせいではありません! 私がどうしても、暫く運動をしていませんでしたから身体を動かしたくてつい! 師匠は悪くないんです! なんの言伝もせず出た私が悪いんです!」

「……」

「レヴィーレ……」


 じっとその赤茶の瞳が私を見ているのを感じながら、私は必死に伯父に言い募った。

 これのせいで師匠が家庭教師から外れたりしたら、ガヴァルに何て言えばいいかわからない。ああでも、もし師匠が家庭教師をしたくないのであれば口添えをした方がいいのだろうか。

 伯父さんはそんな私を困ったように見つめ、それから師匠の方を見た。


「今の話は本当かい?」

「……私の指示も本当です」

「ということは本当なんだね」


 ふうと息をついて、伯父さんはまた困ったように私を見つめ微笑んだ。どうやら師匠にお咎めはないらしい。

 そうして私の頭をそっと撫でて、「とても心配したよ」と言葉を続ける。


「起きて、レヴィーレが居ないと聞いた時は心臓が止まるかと思ったよ」

「……すみません」

「最近いろんなことがあったばかりだから、まさかと悪い方にも考えてしまってね。……私もまだまだだな」


 祖母との突撃、二度目の遭遇、熱で一週間寝込み、からの行方不明騒ぎ。そりゃ伯父さんも悪いほうに考えちゃうよね。

 私はますます縮こまりながら、ごめんなさいと呟いた。迷惑かけたくないと思っているのに、こうして迷惑をかけてしまっているのが情けない。


「ほら、随分冷えてしまっているからお風呂に行っておいで。レオルドくんも早朝からありがとう。すまないね」

「わかりました」

「いえ、これも務めですので」


 そっと床に降ろされた途端、使用人がふかふかのバスタオルで私を包む。紺色のふかふかなそれに埋もれたまま玄関を後にしようと足を出して、ちらりと師匠を見た。

 真っ白な彼をよく見ると、耳と鼻、頬が真っ赤だった。外にいる時は気付かなかったから、中の温かさに血行がよくなったのだろう。ということは、頬や耳が赤くなる時間以上に外に居たということだ。

 確かに今日は剣の稽古の日だ。いつもならその開始時間は昼過ぎか昼前で、師匠は早くても9時過ぎくらいに来ていた──にもかかわらず。


──なんで今日はこんなに早くに来たんだろう?


 冬前で日の出が随分遅いとは言え、秋でも日が出てきたかなというくらいの早い時間だ。今までこんなに早い時間に師匠を見ることがなかったため違和感を感じる。

 本当は師匠に質問をしたかったが、使用人たちから急かされてその場で質問をすることは叶わなかった。玄関ホールを出る前にバスタオルの隙間からちらりと見えた師匠は、伯父さんと話しているようだった。その顔は若干いつもより険しく感じる。

 ともかく、再度熱を出しては叶わないと私は風呂へと急ぐのだった。



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誤字、脱字などありましたらご報告くだされば有難いです……なるべく無いように頑張ってるんですけど、それでもあるので……(´-`)
(わざわざご報告いただき本当にありがとうございます……!お手数おかけします……!)
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