024
あのお茶会から二週間。私は未だ伯父さんに聞くことができなかった。
というのも、実は体調を崩してしまったのである。頭痛がするのは考えすぎのせいだと思っていたが、本当にそのまま熱を出してしまった。絶対これ知恵熱だ。ちくしょう子供の身体が憎いぜ。
あのまま部屋に帰り、使用人の手伝いを断ってドレスを脱いで髪も外し(前まで手伝ってもらわないと無理だったのだが、どうにか自分でできないか悪戦苦闘してたらするっとできるようになった。いずれ着付けも髪も自分でできるようになりたい)、緩い服に着替えてベッドにダイブしたら起き上がれなくなってしまったのだ。いや~軟弱軟弱。
私のダウンを聞きつけた伯父と伯母が慌てた様子で私の部屋に突撃してきて、もういい大人が半泣きで謝ってくるからどうしようかと思ったよ。どうやら私一人で祖母の相手を任せてしまったことに責任を感じていたらしく、昼食にも手がつけられなかったらしい。
いや食べて?
その後すぐお医者様を呼んでくれたのだが──4日の午後は休日なのに申し訳ない──まあその医者、“私”で言うところの『ヒーラー』でした。要は回復魔法に特化した魔術師? 回復師? かな。
その回復師も一応診てはくれたのだが、まあ……うん、特に何もできずに帰りました。
どうやら回復師が回復できるのは外傷だけらしく、内臓などの不調は回復できないらしい。まあ魔法が発展していても、化学や医学が発展しているとは限らないもんね。人体解剖図とかあるんだろうか。うーん、無いに一票。
薬学というか、なに、薬草? 毒消し草とか? はあるらしくって、そっちが医学っぽい。薬剤師でいいのかな。内臓にはこっちらしい。え、じゃあこっち呼んでくれよと思ってしまった私悪くない。
まあでも聞けばそんなに正確さはないらしく、まだどの草がどの体調不良に効くか実験中らしい。そんな不確かなものに実子並みに可愛がってる私を診せたくないよね。なるほどね。あとやっぱり神の子なのでそうそう他人に見せられないらしく、回復師は王都の身分保障と秘密保持の契約魔法で縛られているので大丈夫だが、薬剤師はまだ正規の保証がついていないらしい。発展中か~、私が生きている間にいい感じにまとまればいいけど。
周りが慌てているだけだった状況に、とりあえず私は熱を出した場合の当たり前の措置を指示した。
氷水で冷やしたタオルを額に置いてくれとか、汗をかいた身体が気持ち悪いから拭いてくれとか。本当は水を飲んだり消化の良いものを食べたりするのもいいんだけど、飲食できないからね。ほんと、じゃあなんで汗かいてるのか不明なんだけど。“私”の常識が通用しない『神の子』。いやはや興味深い。
そんな私の簡単な当たり前の指示に、不思議そうにその通りに動く使用人たち。──もしかして熱を出した時の対応すら知らない? まじかよ。
薬学があっても、メインは回復……魔法ね。魔法に頼り切ってるのもなんだかな~という気持ちだ。そうなるとこの世界の死因は外傷系じゃなく内臓系がメインなんだろう。風邪拗らせてそのまま死んじゃうってのもあり得そうだ。
熱で朦朧としている中、お見舞いに来た双子が左右からベッドに潜り込んできた。つんつんと頬を突かれる。やめろ。
「レヴィーレだいじょうぶ~?」
「ねつ? しんどい?」
「大変だねぇ」
「早くなおしてね」
むいむいと変形する両頬に、抵抗する気も起きずされるがままになる。
ガヴァルはその濃厚な紫色の髪を男の子のようにこざっぱりと短くし、服装もシャツとサスペンダー付きのズボンと、すっかり男の子のようだ。対してガヴィーは髪を伸ばし、肩を少し過ぎたあたりまで伸びている。今日の服は動きやすい簡単なワンピースだが、勉強中はドレスを着てすっかり女の子のようになっている。
「レヴィーレ~?」
「あれ? ねちゃったのかな」
「でも目ぇ開いてるよ」
「開けたままねてるのかな?」
昔はあんなにどっちがどっちなのかわからなかったのに、もう完全にわかるようになってしまった。まあ顔は全く一緒なので、カツラとかあれば服を交換すればわからないと思うが。性別を決めれば顔も変わるのだろうか?
「おーい」
「だいじょうぶ~?」
“私”の常識では一卵性双生児は同性でしかなくて、男女の双子は二卵性で双子でも同じ顔ではないっていう……ええとなんだっけ……遺伝子のアレがあって……。でもこの世界の双子はどうなるんだろう? 見た感じ完璧に一卵性だけど、5歳になって性別が別れたらどうなるんだ……? 一卵性でも男女で同じ顔があり得るのか……?
「やっぱねてるんだよ」
「え~? 目ぇ開けたまま?」
「こわいね」
「ぶきみ~」
一応親に似てるから遺伝はあると思うんだけど、そういう遺伝子の問題は神の子にどういう影響を与えるんだろう? いや~、世界もそうだけど、そもそも自分のことすら知らないや。
無力無力。あ~あ……。
……。
「……あ」
「目ぇつむったね」
「やっぱさっきまで起きてたのかな」
「でもぜんぜん返事しなかったじゃん」
「ねつだからじゃない?」
「面白くないね」
「はやく元気にな~ぁれ~」
「な~ぁれ~」




