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はじめまして、君の名前は?  作者: 井上魚煮
第一章 まずは自己紹介から
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001



 はっと目の前が開けるような感覚とともに、意識が覚醒した。

 じわじわと自分の状況を理解してくると同時に、「レヴィーレ様?」という男性の声が降ってくる。振り仰ぐと、こちらを心配そうに見つめるうちの使用人の姿。

 なんでもありません、と返す自分の口からは、子供特有の舌っ足らずな声が聞こえた。

 なんでもない──訳あるか。


(何がどうしてこうなった……!?)


 直後どっと溢れ出す記憶に目の前が真っ暗になり、レンは──“私”は意識を手放した。





 少し私の話をしよう。

 私……いや、あたし……僕? うち? 儂? 俺? うーん、自分がどの一人称を使っていたのか、サッパリ記憶にない。こう思うと『日本語』って同じ意味でいろんな言葉があったなぁと思う。だって全部自分のこと指してるんだよね。今は一人称を指すのに一つの言葉しかないから。

 今は、という言葉からわかると思うんだけど、ここは日本ではない。というか多分地球でもない。その考えの根拠は、何度か見た『この世界の地図』の大陸が一つだけだというのが理由だ。

 地球も大昔は一つの大陸だったし、遠い未来また一つの大陸に戻る〜って誰かの研究で上がってた気がするけど。うん? じゃあここは“あの時代”……自分が日本で生きていた時より凄く前か凄く後の地球なのか? ま、どうでもいいか。

 そうして今私……私でいいか。私は『平成』っていう元号の時の日本で、学生やったり社会人やったりしていた人間だったと思う。

 そう、“だった”のだ。

 私は今、よくわからない言葉(この世界の公共語?)を使い、よくわからない世界(日本ではない)で、幼児になっている。

 なんだこれ? である。いやマジで何だこれ。誰か説明してくれよ。

 なんだっけ……なんか当時流行ってたラノベの設定にこんなのあった気がする。異世界転生? っていうんだっけ? ってことはあれ私死んだの? マジかよ。

 感覚的には社会人だが、私が何歳だったのか、男だったのか女だったのか、そういう個人的な記憶が一切ない。生きていたであろう日本の情景や価値観、常識や知識なんかは思い出せるけども。……なんだっけ、……えーと、……そうだ、エピソード記憶の喪失? だった気がする。大学の心理学で出てきたと思う。なんか自分の体験や経験を忘れる……だっけ? 通称記憶喪失って呼ばれるものはこれが多い、と。ってことはアレか、やっぱ記憶喪失か。死んでるっぽいし生まれ変わってる? みたいだから正確には記憶喪失じゃないと思うけど。いやでも、大学で学んだっていう記憶はエピソード記憶に該当するんじゃなかったっけか……? まあ別にいいか。

 ともかく、私には日本で生きていたであろう記憶がある。個人的な記憶は無いが、ここまでしっかりあるということは思い込みだとか書物からの知識を自分に当てはめて『私は異世界転生したんだ〜!』ということでは無いと思う。私が誰だったのかを思い出せれば、まだ断言出来ると思うのだけれど。

 まあ、そんなこんなで。

 日本の記憶を持つ私は今、異世界で暮らすレンという名前の幼児である。



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誤字、脱字などありましたらご報告くだされば有難いです……なるべく無いように頑張ってるんですけど、それでもあるので……(´-`)
(わざわざご報告いただき本当にありがとうございます……!お手数おかけします……!)
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