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第一話:自らに捧げる鎮魂歌(3)

生来の負けず嫌いが祟り、結局ロウの思うとおりに行動することになってしまった。

今現在、アルテイシアが持っている王太子の情報はどれも噂の域を出ないものだ。

他にいくつか、王宮に勤めている侍女を何人か呼び止めて聞いた話をまとめるとこのようになった。

・現国王の第一王子であり、母親は隣国の王妹。

・第一王位継承者であり、兄弟は腹違いの弟が1人で内乱によって行方不明になっている。

・行方不明の弟は、王太子が殺したと噂されている。

・内乱の折、第三王位継承権を持っていた父親を国王に押し上げたのはクレイス王太子。

・眉目秀麗、文武両道と噂されるも、侍女を口説いたり、少年を囲ったりと素行は悪い。

・容姿に優れた専属騎士隊を持っている。

・夜な夜な自室を抜け出して遊び歩いているようだ。

・怪しい男と密会している所を目撃された。

・夜、空を歩いているところを目撃された。

・突然にいなくなったり、現れたりする。

・美の女神の生まれ変わりと崇める集団がいるらしい。

仕事を受けたのはいいが、経験上嫌な予感がすることを否定できない。王太子に関する情報はどれも突拍子もなく、人物像があらぬ方向に向かってしまう。

社交界で見たときは派手な印象はあったものの、まともそうな人物に見えていたのだが。

ロウが持ってくる仕事がまともなはずがない。

そう考えると、翌日王太子の元へ行くのが不安でたまらない。

きっと何か裏がある。


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