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ピエロ  作者: くろさき
8/11

きたるみらい

私は死んだ。

正確には死ぬ事ができたというべきか。


気づいたら、知らない世界に放り出されていた。


大多数の中で孤独を感じていた私は、気づけば無の中の孤独へ連れていかれていたみたいだ。

どうしよう。


孤独と感じる心までも孤独になった。

とにかく、歩いた。


そしたら、1人の女性を見つけた。

何やら、人と話しているようだった。

その片割れの人が車に乗り込み、走り出すのを見てから、私は走っていった。


大声で呼びかけ、驚く顔を見せるその女性に尋ねた。

「ここはどこですか!?」

少し困った顔をするその人は亜希さんというらしい。


何かを諦めたように、微笑む。

その人は私には希望に見えた。


人は孤独を抱えると、希望を見つけたがるらしい。


私は元来、それなりに笑ってそれなりに楽しく、それなりに充実した日々を送っていた。


それなのにいつからだろうか、それなりを超えるそれなりの人に囲まれ、出処の分からぬ劣等感に苛まれ、必要のない人間だと自分を決めつけてしまったのは。


手首を切った時、悲しみが外に出ていった気がした。

かと言って、喜びが残る訳でも無かったのだけれど。

死ぬってこういう事かって思えると思ってた。

だからこそ、今この意識がある状態が不思議だ。


死ねたのだろうか。

それからの日々はって言っても短い間だけど、それなりに楽しかった。

散歩したり会話したり、食事したり。

生きてるってこういう事かと、思えた。


でも、気づいた。

亜希さんは私とは全く違う人であると。


何故ならば、あの人は生きてるのか死んでいるのか、それを考えながら、生きている。


私は違う。


私は生きているのか死んでいるのか、それを考えながら、死んでいる。


きっと、その違いは決定的にこの世界を変えている。

亜希さんはまだきっと死んでない。


私は確かに死んだ。

それだけでも凄い差はあるはずだ。


だから亜希さんはこの世界に居ても、生き生きとしているのだろう。


余裕があって、物怖じしない素敵な女性だと思う。

それは自分が死んでいないと心のどこかで知っているから。


私は亜希さんと離れる事にした。

もちろん、1人になるのは怖い。


それ故に、亜希さんには別れを告げないままにした。

きっと別れを告げれば、亜希さんは説得してくれるだろうけど、孤独の怖さがそれに甘えてしまうから。


1人になって感じた孤独は確かに誰かと生きた記憶でもあると思う。

そう、私は信じて消えたいと願ったのだから。


私が生きる未来はもう来ない。

来なくていい、そう願ってもまた訪れる

来る未来。私はもうそこに居ないのに。


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