本能
突然頭に浮かんだ文字の羅列がなぜ英語だったのか今もわからないままだ。
" The time has come "
(え、どう言う意味やっけ....)
純度100パーセントの日本語ユーザー西仲優衣は生活用品や大好きなお菓子が山ほど詰め込まれた黄色いビニール袋を両手に立ち尽くした。
さっきまでその桁外れの重さを鬱陶しく思いレジから出入り口を出てすぐの駐輪場にある愛車 ーボロボロのママチャリー までの距離すら辿り着けるのかと言う自問自答を繰り返していた平和さとは打って変わって、目ん玉が飛び出してるんじゃないかと触って確認したくなるほどの衝撃で口まで閉じることを忘れている。
(.......それよりこれ逃したらあかん、絶対あかん)
偶然にしては出来すぎている。しかし紛れもなく今目の前に救いの手がある。たった一度しか会ったことがないし覚えてくれていないかも、と躊躇し見て見ぬ振りをしようとしたけれどこのチャンスをそんな下らない人見知り論理なんかで台無しにしてはいけない。心臓がドクンッと体を揺らしどこから出たのかわからない音が喉を通過した5秒後、鼓膜に弱々しく響いた。
「やよいさ、ん....?」
「え?」