「呪路あるいは紋章の考え方」
君たち!?少しは頭を使いなさいよ。
読専って、作品の粗探しする人種なんでしょ?
粗を探して私に説教してください。
『ワンがわんであること?』の作中で地面又は体に刻まれた紋章が登場する。『ワンが~』は、あくまでもSFなので作中で使用する攻撃手段等はタネが存在する。テンプレ・ファンタジーと違い、作動原理を論理的に説明し、世界観を損なわない為である。
ヒロインのナノ・ウィッチ、エアリーのライバルであるレナが使用するのが呪路であり紋章だ。作動メカニズムがダークエネルギー技術に依存する為、現実宇宙に存在する物理現象が任意に操作可能である裏付けとして、理論物理学では取り上げていない様々な法則定理なども、超紐理論から操作可能な力として定義し直すのが本稿の目的だ。
例えば、熱である。一般的に熱は物質の副次的な状態を表す現象だと考えられている。原子はイメージ的に中性子と陽子の核の周りを電子がある軌道を描いて回っているというのが一般的な理解の仕方だ。そして温度が高くなるという事は、電子が激しく動き回ると言いう事である。そして、物質の結晶構造を維持できないほど電子の軌道が乱れて分子結合が維持できなくなるという現象を溶融、若しくは昇華と呼ぶ。そして、最後には原子が電子を補足しておく事が出来なくなり電子が飛び出してプラズマになってしまう。電子の運動=熱である。
それでは逆に考えてみよう。
プラズマを冷やすとどうなるのか? たとえば水素のプラズマだけを壜の中に閉じ込めて冷やしてみよう。壜の中は水素のプラズマしかない真空である。熱は光や電磁波となって発散されプラズマは冷えて熱い水素になる。
では、いつどこでプラズマは電子を獲得したのだろうか? 壜を構成する物質と還元反応を起こし電子を奪い取るのだろうか? 実験室レベル限定で想像するとそういう事もあるかもしれない。だが、何も無い広大な宇宙空間の中で想像するとどうだろうか?
太陽表面はプラズマ化している。表面がプラズマ化しているのだから内部は当然プラズマである。宇宙開闢の最初の恒星が出来た時、恒星からは電子が電子線として周囲に放出され恒星には電子は残らない。核融合で重い物質が作られてゆくが、それもプラズマ化しており、電子は残っていない。そして重力崩壊を起こし星の寿命が尽きると物質は爆発で吹き飛ばされ宇宙空間に放出される。では、今、我々の目の前に存在する物質はどこから大量の電子を補充したのだろうか? 宇宙を漂う自由電子と冷えたプラズマが偶々大量に出会って、現在の物質が形成されたのだろうか? 有り得ないだろう。
また、天体望遠鏡で150億年彼方の銀河が観測できるが、宇宙が始まって間もなく作られた恒星がプラズマで溢れているのなら、150億年前の宇宙はもっと熱くもっと光(電磁波)に溢れた宇宙であったはずである。
それが観測できないという事は、比較的短時間にプラズマは電子を獲得して冷え、通常の物質になったと言う事の証左だ。
話が随分脱線してしまったが、温度が上がるということは、何らかのエネルギーが原子に伝わり安定した原子ではなくなるという事である。それを裏返せば、物質は常に安定したがる性質(メカニズム:法則)を持つという事だ。現在の物理学では熱の授受は粒子同士の接触によるか、発熱している粒子が発する電磁波(主に赤外線)を発熱していない粒子が浴びるかするしか方法は無い。
この馬鹿ばかしさに気付かない人は居ないだろう。上記のメカニズムで熱の授受が行われるとするなら、ナイアガラの滝からティー・スプーンで水を掬い上げるようなものだからだ。
つまり、無限小の粒子が全方位に向けて放った電磁波で、遠くに浮かんでいる無限小の粒子に熱エネルギーを伝達するとか『何パーセント伝わるんだよ』って話であろう。しかも、水素の場合常温で気体である。液体や固体状態より分子密度は数千倍も疎なのだ。我々が日常普通に目にする現象が如何に不自然な現象であるかお分かりであろう?
故に、99%の蓋然性でそこには熱粒子が存在する。それは目には見えない、そして然るべき確率で近隣の粒子を認識し、選択的にそこに熱粒子を放射すると考えられる。電磁波の放散現象はその副次作用に過ぎない。
前述の『近隣の粒子を認識し、選択的にそこに熱粒子を放射する』という考え方に拒否反応を示すアリストテレス的な諸君に、少し超紐理論の世界を解説する。
電子は量子量をもつフェルミ粒子・レプトンという分類になっているが、そもそも粒子(硬い実体を持ち、真球に近い構造体)であるか甚だ疑問だ。超紐理論で粒子と呼ばれる物を説明すると、細く長く伸びた紐同士が絡み合って毛玉のようになり空間に存在しているに過ぎない。その紐には12次元を分かつ11枚の膜がトポロジカルに折りたたまれており、全ての膜がその紐上で接している。12の宇宙は相対性原理の宇宙項の乗数が違う為混ざり合う事は出来ないが、互いにエネルギーのやり取りを行い元の『宇宙』という存在に戻ろうとしている。
従ってその紐の上では各宇宙同士が様々なエネルギーのやり取りを行っており、見えないネットが選択的に近接の紐に作用して、それが我々には意思があるかの様な物理現象として感じられるのだ。
この考え方に至るには、気の遠くなる程過去からの先人の知恵が帰依してるのだが、超紐理論を持ってしても究極の理論と言うにおこがましいものだろう。
宇宙は紐に満ち溢れている。我々が感知できる物質又は感知できない(無知な我々はそれをダークマターと呼んでいる)物質によって構成される『網:ネット』によって隙間無く埋め尽くされている。ニュートンが提唱し、1900年代前半まで信じられてきたグリッド型の宇宙モデルである。(ニュートンの場合は、グリッドの伸び縮みはなかったが)
最近の最先端の物理学では、このグリッドという概念まで至っていないが、この宇宙空間は何らかの粒子で満たされているという着想までには到達しているようだ。
私は『ワンが~』の中で、ダークエネルギー・テクノロジィの『熱』という要素を使用するために、上記のような考察を重ねている。
『適当でいいんじゃね?』と思われる人間が大部分だろうが、10年後、20年後、100年後に自らの作品が読まれる恐怖が、私をそこまで駆り立てる。