都市伝説探偵高遠健一 (2)
「おや、誰だろうこんな時間に?」
高遠は立ち上がり玄関まで向かい、覗き穴を覗いた。
「あ、島田さんだ」
「島田さん?」
私は初めて聞く人物の名前に疑問を感じた。高遠は元来、人付き合いに疎く私を含めて、親友と呼べるのは数えるほどである。その数えるほどの人物の名前はすべて知っている。だが、島田という名前は今まで一度も聞かされていないのだ。だから、疑問に感じる。さん付けをするぐらいの人物なのだろうか。高遠はドアを開けて、島田という人物を中に入れた。
「お久しぶりですね、島田さん。最後にお会いしたのは3ヶ月ぐらい前でしたっけ?また少し太りましたか?心なしか疲れてるようにも見える」
高遠にとっては親しい仲かもしれない。しかし、敬語を使ってまで失礼なことを言うとは……。てか、何者なんだこのあごひげ生やしたおじさんは。
「なあ、高遠……この人は?」
「ヒロ、覚えておくといい。この方は警視庁捜査一課の島田警部だ。これまで、僕とともに数々の怪事件を解いてきたんだ……あれ、ヒロ君、お客様にはコーヒーを淹れるのが常識じゃないかい?」
私ははじかれたように立った。ヤカンに水を入れ、コンロの上に置いて、火をつけた。警察?少なくとも私が高遠と関わった期間は会っていない。それに、これまで怪事件を解いてきたというのは?そんな過去があるというのか……。私は困惑しながらコーヒーを淹れた。
「まあ、無駄話もなんですから用件を聞きましょうか?」
高遠はさほど興味がなさそうに見えた。彼が興味を示すのは心霊系、あるいは怪奇系の事件なのだ。
「相変わらず、お前という奴は……事件をなんだと思ってやがる」
島田と名乗る人物は、口では呆れているのだろうが、本心は違うのだろう。
「まぁ、いい。さて、本題だが、お前は今日S町で起きた殺人事件について知ってるか?被害者は……」
そう言いかけた途端、高遠は左手を挙げた。
「ちょっと、待ってください。今からいちいちこれまでの経緯を説明するのですか?これを読んでくださる読者の方々もいい加減事件を進めろと睨んでいますよ。実際のところ、作者も書くのがめんどくさいとでも思っていますよ。ので、島田さんから話を聞いたことにして、僕がそれをまとめますから」
高遠は早口に言った。
「おーい。誰に向かって話してるんだ?」
島田は呆れ顔をしていた。一緒に来た刑事もポカンとした顔をしていた。