行き詰まる捜査 (3)
事件のあった公園から、北へ車を走らせ40分。ようやく、第二の容疑者である美影伸也の自宅に着いた。
岡本綾子の同じことを聞いてみたが、今回も収穫はなかった。アリバイに関しても犯行時刻は寝ていたと言うが、証人はなし。いよいよ警察は捜査に行き詰まってきた。
「ご協力感謝します。また、何かありましたらご連絡します」
「はぁ……わかりました」
美影はいきなりの事情聴取で、何がなんだかわからないような様子だった。
玄関を出て、パトカーに乗り込む島田は険しい表情をしている。
「う〜む……二人ともアリバイはなしか……被害者からは犯人を特定するようなものは残されていないし、逆にあの二人もこれといって怪しい素振りはなかった……いや、そもそも被害者の口が耳まで裂けていた謎が解けないとだめか……」
さすがの警部という立場でも今回の事件は実に不可思議に映るようであった。
再び40分をかけて、公園に戻ってきた。
「おい、どうだ何か変わったことはあったか?」
島田は、公園に残り捜査を続けていた若手刑事に声をかけた。
「いえ、まだ何も見つかっていません……」
「ふむ、そうか……」
その時だった、一人の白髪頭の男性が、警官が止めるのを振り払い、島田に近づいていた。
「ん?あなたは?ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ」
「ワシはこの地区の組長である勅使河原だ。騒々しいと思ったら、この有様か。警察はまだ犯人を捕まえられんのか」
「あのね……我々も全力を尽くしています。そんな簡単に犯人が捕まれば苦労しないのですよ」
「ふん。聞いた話によれば、殺されたのは口裂け女だそうじゃないか。まさか、本当に現れるとはな……」
(おいおい、そんなに話が広がっているのか……)
島田は内心うんざりしていたが、その言葉に違和感を感じていた。
「本当に現れるといっていたが、どういうことだ?」
「知らんのか?この辺りではよく口裂け女の目撃情報があるんだ。下校途中の小学生が目撃しているらしい。そのため、わしらはよくパトロールをしてるんだ」
「なんだと?!まさか、本当に口裂け女がいたのか……それはいつからだ?」
「一年前のことじゃよ……この辺りは閑静な住宅街だから何も起こらないと思っていたがな……」
「……」
その後は白髪頭の男性にはまた話を聞くということで、今日のところは捜査は打ち切りとなった。しかし、猟奇的な殺人事件が起きたということで、その夜は警備が強まることとなる。
「まさか、口裂け女の目撃情報があるなんて……そんな話があるのですか?」
「馬鹿言え、屋代さんは殺された後に口が裂かれているんだ。だとしたら口裂け女じゃねぇよ」
「いえ、そのようなことではなく……」
「……」
島田は、ますます深まる謎に困惑され続けていた。一体何が起きたというのか……
「仕方ない。アイツに相談するしかないか。本当はしたくもないが……」
「アイツ?一体誰です」
「都市伝説を好んでいるただの暇人さ……だが、アイツの発想力でこれまで幾度か助けられている」
「へ〜……助けられているのですか……」
「この時間なら、ヤツは起きているだろう。気は重いが、頼ってみるか……」
「はぁ……」
島田と若手刑事は重い足取りで、都市伝説を好む暇人の元へと向かっていた。




