被害者、口裂け女 (2)
「あなたが遺体を最初に発見し、我々に通報した方ですか?」
島田は一人の老人に尋ねる。
「ええ、そうです。私は朝と昼の二回に分けて、犬の散歩をしています。散歩コースにはこの公園も含まれていました。」
「朝の散歩の時に、遺体は?」
「その時にはなかったと思います。」
「それは本当ですか?!」
島田はやや興奮気味になる。
「はい。確か……七時頃だったかな?その時に公園に立ち寄りましたが、誰一人としていませんでした。」
「なるほど、では、昼の散歩の時には誰かを目撃しませんでしたか?」
「全くです。人が倒れているのを発見したぐらいです。」
「それは何時ぐらいです?」
「十二時半ぐらいだったかと。」
「わかりました。ご協力感謝いたします。」
遺体は解剖にまわされ、野次馬も少しずつ減っていた。この何ともいえない涼しさの中、本来なら喜ばしい気温なのだが、閑静な住宅街で起きた殺人事件のせいで、心の中を蒸し暑くさせるのには十分過ぎた。
「朝の時には遺体はなく、昼に発見される……。いくらここが閑静な住宅街だからといって、昼まで見つからないのはおかしいよな……。おい、ガイシャの死亡推定時刻はわかるか?」
「詳しいことは解剖待ちですが、どうやら昨日の午後十一時から今日の一時にかけて殺されたそうです。」
「何だって?!どういうことだそれは?犯人は殺害した後、昼まで遺体と一緒にいたというのか?」
「そういうことになりますね。」
「ますますわからんな。今回のヤマはただじゃすまねぇと思う。よし、ガイシャとの関わりのある人物に聞き込みを行うとするか。」
「はい!」