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Free story  作者: 狐鈴
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再戦

あけましておめでとうございます!


年明け初の投稿になります、これからも少しずつですが更新していきます。


どうか今年もよろしくお願いしますm(_ _)m

 シロが意識を取り戻すと、そこは薄暗い石造りの部屋だった。未だにハッキりとしない頭で状況を把握しようと体を起こし周囲を確認しようとするシロに後ろから声が掛かる。


「起きたか、成瀬」

「ん? 御堂さん」


 振りかえると御堂が簡易ベッドの上に腰掛けていた。外傷はないようだが、その手足には枷がつけられていた。

 シロの視線に気付いたのか御堂は自分の手足につけられている枷を見せながら説明を始める。


「さっき、カインズってヤツが来て一週間程ここに入っていてもらうと言いにきたんだ」

「一週間って……クロネは?」


 最初に思いつく疑問はクロネの安否だった為、そう口にするが御堂の表情は暗い。


「クロネが今どこにいるかは分からない……近くの牢屋にいるのかもしれないし別の場所かもしれん」

「俺達を一週間ここに入れておくって事は、きっとその間にクロネの処遇が決まるってことなんだよね」


 シロはあえてハッキリとは言わなかったのだが御堂がそこに付け加える。


「というよりは処刑を執り行う…だろうな。すまない成瀬、お前が俺に託して先に行かせたっていうのに……」

「いいよ。相手は老師だったんでしょ? なら仕方がないと思う」

「あの爺さん知り合いか?」

「うん、まぁ…この国の有名人みたいだし凄腕の魔法騎士みたいな話は聞いたよ」


 シロは実際に老師ことグローウィルの実力を知っているわけではなく噂とミリアナの力を見ての発言だが、ほかの騎士の態度から見ても弱いという事はないだろう、という程度の予測でしかなかった。


「それで御堂さん、これからどうするの?」


 シロの言うこれからとは、もちろんクロネの事である。そして御堂は先程から見せていた枷について説明を始めた。


「この枷は魔力を抑える為の物らしい、おかげで魔法が使えない。これがなければすぐにでもこんな牢屋ぶち破ってやるのに……」


 と、悔しそうに呟く。

 もし魔法が封じられていなければ御堂はシロが目を覚ます前に暴れていたのだろうが、それをしていなかった理由に納得がいった。

 しかし、そうなると二人はクロネを助けるための行動をなにも起こせないという事になってしまう。ルシアやロックスの助けも期待できないこの状況はまさに詰んでしまっていると言える。

 おそらく御堂は目が覚めてから、ずっとこの状況を打破する方法を模索していたのだろうが何も思い浮かばなかったのだろう、今は悔しそうに俯いているだけだった。

 シロもどうする事もできそうにないという事だけは分かりきっていた。なので…


「とりあえず少し休もう。いつでも動けるように、まずは体力を温存しとかないとね」

「…………そうだな」


 御堂はシロの提案に若干戸惑いを見せたが、なにも手を思いつかなかった手前文句を言う事もできずに従うことにしたようだった。

 焦りばかりで休む事もままならなそうだったが、二人は無言のまま休む事にした。











「ようやく静かになったな」

「面目次第もございません…」


 シロ達を取り押さえ事後処理を済ませてきたカインズが国王の言葉に頭を下げる。


「いや、いいんだ。ああ言えばアイツ等が暴れるだろう事は予想できたしな」

「予想できたのなら、もう少し穏便に物事を進めて頂きたかったですがね……」

「そういうなって」


 そう言いながらジト目で睨むカインズの視線を気にする様子もなくザイアスは周りにいた近衛騎士に席を外すようにと指示を出す。


「それよりカインズ、ちと頼まれてくれないか?」

「グローウィル殿の扱きを回避できる言い訳になるのなら喜んで」

「お前な……」


 カインズの言葉に少し呆れた様子で笑うザイアスは、自分の近くへと来るようにとカインズに促すと話始める。


「ロックスはともかくルシアがもしかしたらシロ達を逃がそうとするかもしれんが、それに対しては俺の方で手を打っておくから、お前には行って来てもらいたい所がある……」


 それからザイアスの話を聞きカインズが少し悩む素振りを見せた後に口をひらく。


「方法としては有りですが本当にいいんですか? そんな事を黙って行えばルシア様に嫌われますよ?」


 その言葉に若干ザイアスも悩むが首を横に振る。


「といっても、これしか思いつかなかったしなぁ。悪いが急いで行って来てくれるか?」

「わかりました。それでは」


 カインズが部屋を出た後、残されたザイアスがため息を深くついてから一人呟く。


「こんな事やってたら恨まれるな……て、今更か」


 国王となってからは綺麗事だけではどうにもならない事も多かったな、とザイアスは自嘲気味に笑った。













 牢屋に入れられてから三日ほどしてからルシアが面会をしに訪れた。


「や、ルシア。なんか酷い顔してるよ?」

「シロは元気そうだね……」

「まぁ今ヘコんでても仕方ないしねぇ」


 ルシアは何日も塞ぎ込んでいたのか元気な様子ではないが、それにしても覇気がなかった。


「どしたの、なにかあった?」


 シロの言葉にルシアが俯きながら小さく頷く。


「クロネの処刑が三日後に決まったの……」


 その言葉に一番反応したのは御堂だった。御堂はルシアの近くまで行くと格子を掴んで訊ねる。


「それは本当か姫さん?!」


 この状況でこんな嘘を言うはずもないだろうが、それ以外の言葉が見つからずそう叫んだ。


「ゴメンなさい。私、なにもできなくて……ごめんなさいごめんなさい……」


 両手で顔を覆いながら泣き出すルシア。その頭を撫でて慰めてあげたくなるが枷と格子のせいでそれすらも出来ないシロ。


「ルシアのせいじゃないって、それに俺達だってまだ諦めた訳じゃないしね。クロネは絶対助けるからさ、ルシアは少し休みなって倒れたらクロネがさらに申し訳なさそうな顔するだろうし」

「うん…うん……」


 根拠もない虚勢だがルシアもその言葉に頷いてからその場を後にする。ルシアの姿が見えなくなってからシロが御堂に声をかける。


「どうしよっか?」

「なにか案があるのかと思ったのに、それかよ…」

「動けない事には仕方ないよ~」

「まぁな」


 そして無言になる二人だったが少ししてから御堂がシロに訊ねる。


「成瀬。もし予想もしない事態が起きてここから抜けられたとしたら、どう動く?」

「例えの話? そうだなぁ、もしそんな事が起きるのなら居場所も分からずクロネを探すよりも、処刑場に乗り込むかなぁ」

「警備は多いだろうが、それが一番手っ取り早いな。それにああいう場は内側より外の警備の方が厚いだろうしいけるかもな」


 御堂もシロも落ち着かないこの状況を紛らわす為に益体の無い話を続けた。




 そしてルシアが知らせてくれたクロネの処刑日が訪れる。


「なんか外が騒がしいねぇ」

「おそらく公開処刑なんだろうな。獣人に恨みを持つやつは少なくなさそうだったし嬉々として見物にきてるのかもな」

「嫌な話だね」


 御堂の言葉でザイアスやヒューイと話をした時の怒りが込み上げてくる。そして違和感に気付いた。


「あれ?」

「どうした成瀬?」

「うん、なんか魔法使える」

「はっ?」


 御堂の素っ頓狂な声が返ってくるが気にせずにそのまま魔力を込めてみると、普段より弱いが問題なく魔法が展開できそうだった。


「魔力が使えないって聞いてたから自分では試してなかったけど、いけそうだ」

「確かにそう説明したのは俺だがもっと早く試しておけよ……って今はそんな事どうでもいい。枷外せそうか?」

「ん、ちょっと待って」


 さすがに普段通りに魔力が出せない状態でなくても身体強化で枷を引きちぎるのは難しいとは思うが、それでも試してみる。しかし枷が外れる様子はない。

 そこでシロは円錐状の消壁を展開すると、そこに枷を当てて破壊を試みると思いのほか簡単にバキンという音を立てて枷が壊れた。


「壊れた…」

「マジか……とにかく急いで枷を壊すぞ成瀬!」

「合点承知!」


 シロが自分と御堂の枷を壊すと二人で牢屋の格子を蹴破ろうと蹴りをいれる。


「「ぐおぉぉぉ……」」


 しかし鋼鉄製の格子は当然ビクともせず二人の足に衝撃が走る。


「って、ようやく出れてテンション上がるのは分かるけど、蹴りで壊せるわけ無いじゃん! 御堂さんの魔法を使おうよ馬鹿なの!?」

「そうか俺も魔法使えるようになったんだよな」


 一週間近く魔法が使えなくなっていた為か感覚が馬鹿になってしまっていたのだろう、ようやく思い出した御堂は右手に魔力を込めると格子を斬り壊した。


「素手で格子を断つってなんか達人みたいだよね……」

「達人でもできねえよ…魔法ってすげえな」


 久しぶりに使う魔法の感覚に、魔法のありがたみを噛みしめると二人はすぐに処刑場に向かうべく走り出す。


「とりあえず、処刑場に乗り込んでクロネを助けるでいいな?」

「時間的猶予が分からない以上そうするしかないね」

「それにしても思ってた以上に見張りが少ないな」

「そだねぇ」


 御堂の言葉にシロも頷く。

 二人は知らないがヒューイが獣人(クロネ)の処刑を公開するべきだと主張した為、外から来る見物客の数も相当になり多くの人員が駆り出されたため一時的にではあるが城内の警備がかなり手薄となっていたが、今回はそれが二人を動き易くさせていた。


「なんにしてもこのまま一気に処刑場まで行かないとな!」

「場所わからないけどねぇ」

「茶化すな! とりあえず騒がしい方に行けば辿り着く!」

「時々思うけど御堂さんって結構いい加減だよね」


 誰もいない通路を喋りながら二人で走っていると、シロは不意に妙な感覚を覚え立ち止まる。


「成瀬どうした? 止まってる暇なんてないぞ!?」

「うん…なんか」


 御堂が様子の可笑しいシロに声をかけるが、それに曖昧な返事を返す。


(以前にも似たような……確か……)


 シロが周囲を見渡して、ようやくそれに気付いた。

 二人が進んでいる道から逸れた別の通路に見覚えのある人影が歩いている。それは薄笑いを浮かべた黒髪の男だった。


「レクトっ…!」

「なにっ?! あいつがここにいるのか!?」


 居るはずの無い人物を見つけて動揺する二人だが、それでも目的を見失うわけにはいかない。

 それは隣にいる御堂も同じだった。


「成瀬、クロネは俺に任せろ」

「御堂さん?」

「お前はレクトを追うんだろ? あいつがここに居る理由は分からないが碌な事じゃないはずだ」


 御堂の言う事はもっともだが、現状でさえ助けられるか分からないのにさらに二手に別れるという事は可能性がさらに低くなるという事と同義なため躊躇するシロだったが御堂がその背中をそっと押す。


「行け。あいつが城内をウロウロしてたら姫さんだって危ないかもしれないしな」

「ありがとう、御堂さん」


 シロはそう言うと御堂とは違う方向に走り出し、それを見送った御堂もすぐに駆け出した。


 そのまま走って行くと通路の行く手を阻むべく立っている人物がいた。御堂(じぶん)を気絶させ、クロネと引き離した人物、グローウィルその人である。

 グローウィルは御堂の姿を確認すると嬉しそうな表情をしながら話しかける。


「ほっほっほ。残念じゃがここは………ぬっ!」


 なにかを言いかけていたが御堂は構わず斬撃を手刀に纏わせ横薙ぎに振るうと、話の途中だったグローウィルは危なげにその攻撃を回避する。


「話は最後まで聞かんか…。これじゃから最近の若いもんは」

「邪魔だ…! どけえっ!!」


 御堂は手刀を大きく振るった勢いをそのままに回し蹴りを放つが、それをグローウィルが受け止めると同時に掴まれた足から全身に衝撃が走る。


「…ったく、揺さぶるばかりで芸がないな爺さん」

「その一芸にやられておいて何を言うか」

「はっ、違いねえ。……なら、これならどうだっ!」


 御堂が言葉と一緒に魔法を展開し右手を振るう。


「また、同じ斬撃飛ばしかの? どちらが芸がないのやら……む?」


 御堂が展開した斬撃は次第に広がり五つに分かれていく。

 元は一つだが手に纏わせた斬撃は指のように五本に分かれ広く相手を引き裂こうと迫ってくる。

 それをグローウィルは慌てることなく障壁を展開し受けていく。前回、刀を使った斬撃でも障壁を貫くことが出来なかったのだ当然こうなる事は想定していた。

 故に御堂はグローウィルが攻撃を防いでいる間に横をすり抜けると、振り返り再度、手刀による斬撃を放つ。

 しかし、狙いはグローウィルではなく通路の上側。


「ぬうぅ!?」


 御堂の魔法は容赦なく天井を切り崩しグローウィルの上へと落ち、埋もれさせていった。


「よしっ、死なないにしても足止めにはなるだろ」


 そしてグローウィルが這い出てくる前にと御堂が走りだして先に進もうと走っていると、いきなり横の壁が吹き飛んだ。


「なんっ…!?」


 壁の破片が飛び交う中どうにか状況を把握しようとする御堂だったが、壁を突き破ると同時に現れた女に強烈な一撃を腹部に叩き込まれ倒れてしまった。


「畜生……クロネ……」


 御堂は倒れながらもクロネの事が脳裏を過ぎったが、それ以上は意識を保つ事が出来なかった。


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