第1話 大好き。ずっと好き。(小さく笑って、小さく舌を出しながら)
美しいらいおんのお姫さまのしーと外に出ることができない檻みたいな閉ざされた幽霊のお城。
大好き。ずっと好き。(小さく笑って、小さく舌を出しながら)
美しい真っ白な『幽霊のお城』の大きな城門はとても硬く閉ざされていた。どんなことをしても(叩いても、蹴っても、思いっきり押しても)開けることはできなかった。
「誰かいませんかー!」
大きな声でそう叫んでも、誰からも返事はなかった。(返事がないだけじゃなくて、どこにも、誰もいなかった。それはここが幽霊のお城で、今がまだ夜じゃないからだろうか)
しーはしょうがないなと言ったような顔をしてから、両手を腰につけて、大きな門の前に立ったままで、じっと閉ざされた城門を睨みつけるようにして見つめた。
世界にはとても冷たい風が吹いている。(寒くて、ぶるっと一度、しーはその体を震わせた)
見上げると、空は灰色をしていて、明るい太陽はどこにも見えなかった。(ここにきてからずっとそうだった。やっぱり幽霊は太陽がにがてなのかもしれない)
まいったな。幽霊のお城の中に閉じ込められちゃった。
……、幽霊。幽霊のお城か。
ただのうわさだけの嘘じゃなくて、本当にあったんだ。
しーは思う。(それからすこしだけ自分のために笑った)
しーは亜麻色をした長くて美しい髪をそのままっすぐにしていて、金の髪飾りをつけていた。
白い絹の綺麗な衣を着ていて、手には金の輪の飾りをつけている。
足元は上質な皮の靴だった。
小さな形のいい耳には真珠の耳飾りをつけて、細い首のところには金の首飾りをつけていた。
その身につけている服や装飾品はどれもとても高価で、とても由緒のあるものばかりだった。
しーはある国のお姫さまだった。
とても美しいお姫さまで、年齢は十四歳だった。猫っぽい顔をしていて、大きな丸い瞳は琥珀色をしている。
白い肌をしていて、体は小柄で、お部屋の中でじっとしていることが苦手で、外で体を動かすことが好きだった。
しーは美しくてとっても強気で、体を動かすことが好きで、なんだか肉食獣みたいだったから、国のみんなから『らいおんの姫』と呼ばれたりしていた。
しーはそれこら少しの間、閉ざされている幽霊のお城の大きな城門を眺めてから、小さくため息をついて、くるりと体を回転させて、幽霊のお城に向かって綺麗な色のいろんな花の咲いている緑の中庭にある石造りの道の上を歩き始めた。(中庭は幽霊のお城と閉ざされている大きな城門の間にあった)
この幽霊のお城から私は外に出ることができない。(まるで檻みたいだった)それは、『この幽霊のお城の中で、私がやらなければならないことがあるからだ』と思った。(だから私は幽霊のお城の中庭で目を覚まして、そしてそのまま、幽霊のお城の中に閉じ込められているのだ)
私は『この幽霊のお城でなにかをしなければいけない』のだ。
あるいは、『誰かに会わなくてはいけないのだろう。幽霊になってしまった、もう死んでしまった誰かに』。
それはいったいなんだろう?
それはいったい、誰なんだろう?
そんなことを歩きながらしーは思っていた。
閉ざされている大きな城門とは違って、幽霊のお城の中に入るための青色の正門は開いていた。
まるでしーのことを『こっちだよ』っていて、幽霊のお城の中に誘うようにして。
しーは、幽霊のお城の青色の正門の中に入る前に、すこしだけ歩く足を止めて、『腰の後ろに隠すようにしてつけている王家の宝物でもある美しい短剣』(それはしーのらいおんの牙、あるいは爪だった)の持ち手を、自分の心を落ち着かせるために握った。(その綺麗な指と手は小さく震えていた)
それからしーはゆっくりと歩いて、幽霊のお城の中に入っていった。




