第4話:静寂屋敷にギャル突撃! 《ルート状態:一時保護/居場所:騎士邸/騒音レベル:75dB》
ラインハルト邸は、静かすぎた。
門をくぐった瞬間、空気が変わる。
王城とも、セレナの実家とも違う――音のない空間。
「……こちらです。セレナ殿」
低く落ち着いた声に導かれ、屋敷の中へ。
廊下は広く、天井は高く、足音が妙に響く。
(うわ……)
(高級だけど……無音すぎん?)
『環境評価を開始します』
「なにそれ急に」
『現在の屋内平均騒音レベルは、約18デシベルです』
「……それって、どんくらい?」
『深夜の図書館。
雪が降る野原。
人のいないダンジョン初期エリアと同等です』
「最後おかしくない?」
『総合評価:非常に静かすぎます』
「“すぎる”って初めて聞いたわ」
前を歩くラインハルトが、わずかに足を止めた。
「……今の数字は、何だ」
「あ、えっと――」
『補足説明を行います』
ジョミりんが即座に割り込む。
『デシベルとは、音の大きさを数値化した単位です。
数値が低いほど静かで、高いほど騒音となります』
「……音を、数で?」
『はい。
現在の18デシベルは、人がほとんど音を立てずに生活している状態です』
ラインハルトは眉をひそめる。
「……なぜ、そのようなことが分かる?」
『主観を排除するためです。
人は慣れや感情により、音の大きさを正確に判断できません』
「……」
(意味は分からないが、
理屈は通っている気がする……)
騎士は、なぜか納得しかけていた。
案内された客室は、想像以上に立派だった。
ふかふかのベッド、厚手のカーテン、柔らかな灯り。
「……今夜はこちらを」
「え、いいの!? ホテルのスイートじゃん!」
「……必要最低限です」
(必要最低限の基準が違う)
ラインハルトは一礼し、少し迷ったあと口を開く。
「……何かあれば、呼んでください。
ただし、できることには限りがあります」
「りょ! マジさんきゅーね!」
理解できない言葉を残し、扉が閉まった。
――パタン。
一人になった瞬間、アヤカはベッドにダイブした。
「はぁぁ……生き返る……」
『暫定的に、セーフティゾーンとして機能しています』
「“暫定”ってのが怖いんだけど」
カバンを置き、辺りを見回す。
(鍵かかる部屋って……やっぱ安心だな)
ほどなくして、湯の準備が整ったと知らされる。
ありがたく使わせてもらい、さっぱりしたあと――
「……」
鏡の前で、濡れた金髪を見下ろす。
「……ねえ」
『はい』
「ドライヤーどこーー!!?」
静まり返った屋敷に、元気な声が炸裂した。
『参考:アヤカさんのその発声は約75デシベルです。
ちなみに、数値としては元気な柴犬が一匹、
吠えた程度です』
「ま?そんな出てんの!? ウケるんですけど!」
数秒後、廊下の向こうで物音。
慌てた使用人が現れ、厚手のタオルを差し出してくれた。
「あ、ありがと! 逆に高級感ある!」
ばさばさと髪を拭く。
『現在の屋敷内平均騒音レベルは42デシベルに上昇しました』
「お、にぎやかじゃん」
『人の生活音としては、適正範囲です』
「つまり?」
『屋敷が“生きている”状態です』
「やったね、屋敷生存!」
気づけば、廊下に灯りが増え、人の気配が戻っていた。
――その頃。
屋敷の奥で、ラインハルトは足を止めた。
(……音が、生まれている)
足音。
人の声。
扉の開閉。
どれも些細で、規律を乱すほどではない。
騒がしい。
騎士としては、好ましくない。
――だが。
(……慣れていないだけ、か)
一方、本人はまったく気にしていない。
「ねえジョミりん、このベッドやばい!
吸い込まれる!」
『睡眠環境として非常に良好です』
「さすが騎士さん、やるじゃん」
タオルを頭に巻いたまま、転がる。
「……今日さ、
いろいろあったけど」
天井を見上げて、ぽつり。
「とりあえず、生き延びたよね」
『はい。本日の生存率は大きく向上しました』
「だよね。じゃあ……今日は寝よ!
明日もよろしくね、ジョミりん」
『かしこまりました。
それでは、おやすみなさいませ』
明かりが落ちる。
静かだが、もう“無音”ではない夜。
別の部屋で、ラインハルトは眠れずにいた。
(……この屋敷は、
変わっていくのかもしれん)
理由は分からない。
だが確信だけがあった。
この一夜を境に――
何かが、確かに始まっていた。
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